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試練の祠

荒野を抜けた真奈たちの前に現れたのは小さな祠だった。そこには、謎めいた魔族が鎮座し、「次の鍵を渡す資格」を試すと言い放つ。この試練は、一筋縄ではいかないものとなる――。

祠の中央に立つ魔族は、複雑な紋様が刻まれた杖を手にしていた。彼の紫の瞳は、どこか異質な光を放っており、その視線は真奈たちを試すように鋭く動く。

「私は『試練の案内人』、アルカイド。鍵の次なる継承者である汝らが、その資格を持つかどうか、我が身をもって見極める。」

アルカイドの声は低く響き、祠の空間全体を満たした。その威圧感に思わず真奈は息を呑む。

「試練と言うが、それは具体的に何をすればいいんだ?」

ラザールが一歩前に出て尋ねる。アルカイドは冷たい微笑みを浮かべた。

「試練は3つ。心の真実を試す『幻影の間』、力の限界を試す『血闘の場』、そして信頼を試す『絆の道』。これらを全て突破した者のみが鍵を継承できる。」

「簡単に言ってくれるな……」

イグナスが苦笑しつつも、剣を手に祠の内部を見渡した。

最初に待ち受けていたのは『幻影の間』。広がるのは濃い霧の中に歪んだ影が揺らめく不気味な空間だった。

「ここでは己の内なる心が試される。過去の傷、恐れ、欲望――全てに向き合わねばならない。」

アルカイドの言葉とともに、一瞬の暗転。次の瞬間、真奈たちは各々が別々の空間に閉じ込められた。

真奈の前に現れたのは、中学時代の教室だった。そこにはクスクスと笑いながら彼女を嘲るクラスメートたち。

「真奈ちゃん、地味すぎるんだよ。」

「一人で絵を描いてばっかり。友達いないの?」

心ない言葉が次々と浴びせられる。真奈はぎゅっと拳を握りしめ、唇を噛む。

「これは……過去の記憶?」

だが、ふと彼女の耳に聞こえてきたのは別の声だった。

「あなたが地味だとか、一人だとか……それがどうした? 君は君だろう?」

その声は、今までの旅路で何度も彼女を支えてくれたラザールの声だった。頭の中に響くその言葉に勇気を得て、真奈は幻影のクラスメートたちに向かって叫んだ。

「私は私! あなたたちに何を言われても、もう怖くない!」

その瞬間、幻影が霧散し、光が差し込んだ。

ラザールの前には、幼き日の彼と父王の姿が映し出されていた。

「お前に王の器はない。」

冷酷に告げる父王の言葉が耳を刺す。

「俺はもう、過去に怯えるつもりはない。」

ラザールは剣を握りしめ、幻影の父王に立ち向かった。

「俺の力は、俺だけのものじゃない。真奈や仲間たちと共にある。」

その一言で、幻影はゆっくりと消えていった。

試練を乗り越えた真奈たちは次の空間、『血闘の場』へと進む。そこには巨大な魔獣が鎖に繋がれており、鋭い牙をむき出しにして吠えていた。

「力を示せ。これは逃げることを許されない試練だ。」

アルカイドが杖を振ると、鎖が解け、魔獣が解き放たれた。

「くそっ、やるしかねえか!」

イグナスが剣を抜き、魔獣の懐に飛び込む。一瞬の隙を突いて剣を振り下ろすが、硬い甲殻に阻まれ、浅い傷を与えるに留まった。

「防御が固すぎる……真奈、君は後ろに!」

ラザールが魔力を宿した剣で魔獣に斬りかかる。しかし魔獣は素早く動き、巨大な尾で反撃してきた。

「待って! 私も手伝う!」

真奈が叫び、咄嗟に胸の紋章から光を放つ。光はラザールとイグナスを包み込み、彼らの力を増幅させた。

「この力は……! 行くぞ、イグナス!」

ラザールとイグナスの連携攻撃が決まり、ついに魔獣は倒れた。

最後の試練は『絆の道』。3人が協力しなければ通れない狭い橋を進む途中、橋の下から幻影が現れる。

「お前たちは、本当に信頼し合っているのか?」

幻影は真奈の姿を模し、ラザールやイグナスを惑わそうとする。しかし、真奈は笑みを浮かべて答えた。

「私たちの絆は偽物なんかじゃない。何があっても、信じられる!」

その言葉とともに、幻影は消え、橋が光に包まれていく。

試練を全て突破した真奈たちの前に、アルカイドが再び現れた。

「見事だ。汝らは次なる鍵を受け取る資格を得た。」

彼が差し出したのは、真紅に輝く魔石だった。

「この鍵は次の封印を解くためのものだ。だが、その先に待つのはさらなる困難……覚悟して進め。」


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