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消えた村と約束の灯

闇の継承者アシュテールの脅威を目の当たりにした真奈たちは、新たな目的地である「ナリヤの里」へと向かっていた。その村には、混沌の力を封じるための重要な手がかりがあるとされている。しかし道中、彼らが目にしたのは、村の面影すら残らない荒涼とした廃墟だった。

「ここが……ナリヤの里?」

真奈が呆然と呟く。かつて豊かな自然と笑顔に溢れていたという村は、今や黒い灰が舞うだけの無惨な荒地に変わり果てていた。

「何があったんだ……?」

ラザールは険しい顔で辺りを見回す。その時、イグナスが廃墟の中に埋もれている遺物を掘り起こした。古びたランタンだったが、まだかすかな魔力が宿っている。

「これ、村の守り火じゃないか? ナリヤの里の象徴だったはずだが……消えかけてる。」

イグナスが眉をひそめる。そのランタンは、村の長老が代々受け継いできた「約束の灯」と呼ばれるもので、村人たちの生活を守る魔法の力を持つとされていた。

「これが消えたってことは、村そのものが闇に飲まれたってことだな。」

彼の言葉に、真奈は胸が締め付けられる思いだった。

「どうして……こんなことに。」

真奈の目には涙が浮かんでいたが、ラザールはそっと彼女の肩に手を置いた。

「嘆いている時間はない。まずは手がかりを探そう。」

三人は手分けして村の残骸を調べ始めた。すると、真奈が朽ちた井戸のそばで奇妙な石板を発見した。それには古代文字が刻まれており、魔界の歴史を知る者でなければ解読は難しそうだった。

「ラザール、この石板……何か意味があるんじゃない?」

真奈が差し出すと、ラザールは目を細めて文字を読み取った。

「『約束の灯が消えし時、絆の力が未来を繋ぐ』……そんな感じだな。」

ラザールが呟く。イグナスもそれを聞きながら考え込むような表情を見せた。

「絆の力って……。まさか、ただの抽象的な言葉じゃないだろうな。」

イグナスの言葉に、真奈は胸の紋章を無意識に握りしめた。

「もしかして、この紋章が関係してるのかな……?」

ラザールは頷きつつも慎重な口調で答える。

「可能性はあるな。ただ、この石板だけじゃ不十分だ。ナリヤの里で何が起きたのか、もっと具体的な情報が必要だ。」

その時、不意に冷たい風が吹き抜け、黒い影が彼らの前に現れた。

影から姿を現したのは、一人の少女だった。彼女はボロボロの衣服を纏い、長い銀髪を風になびかせている。その瞳は虚ろで、どこか憎悪に満ちていた。

「……ここに来たのは、あんたたちか。」

少女の声は震えており、疲労と悲しみに満ちていた。真奈が一歩近づこうとすると、ラザールが腕を伸ばして制した。

「誰だ、お前は?」

ラザールが警戒しながら問うと、少女は肩を震わせ、苦しそうに答えた。

「私は……ナリヤの村の最後の生き残り。あの日、みんな……みんな消えた……!」

彼女の言葉に、真奈は目を見開いた。

「生き残り……? 何が起きたの? 村の人たちはどこに?」

少女はその問いに答える代わりに、両手で頭を抱えて呻き声を上げた。

「闇が……闇が私たちを飲み込んだ。逃げたかったのに、私は……助けられなかった……!」

彼女の瞳には涙が溢れ、足元の黒い影がまるで彼女の心を表すかのように揺らめいている。

「待て、そいつ危険だ!」

ラザールが叫ぶと同時に、少女の足元から黒い霧が噴き出した。それはアシュテールの放った闇の残滓であり、彼女の絶望と憎悪に反応して暴走を始めたのだ。

「止めなきゃ!」

真奈はとっさに紋章の力を使おうとするが、制御がうまくいかず、光は微かに点滅するだけだった。

「くそっ、真奈、下がれ!」

ラザールが剣を構え、イグナスも即座に抜刀して闇に立ち向かう。しかし、闇の力は予想以上に強大で、二人ですら押し返されそうになる。

「お願い……止まって!」

真奈が必死に叫ぶと、その声に反応するかのように紋章が再び光を放ち始めた。そしてその光は、暴走する少女の闇を徐々に包み込み、静かに消し去った。

「……え?」

闇が晴れると、少女は力尽きたようにその場に倒れた。真奈は急いで彼女のもとに駆け寄る。

「大丈夫?」

優しく声をかける真奈に、少女は弱々しく微笑んだ。

「……ありがとう。あんたたちが来てくれて……良かった……。」

倒れた少女の手元には、再び輝きを取り戻した「約束の灯」のランタンがあった。それを見たラザールは、静かに呟いた。

「なるほど。絆の力……それが村を救う鍵だったのか。」

真奈は少女を抱き起こしながら、決意を込めて言った。

「私、絶対にこの世界を救う。みんなのために、もっと強くなる……!」

その言葉に、ラザールとイグナスは静かに頷いた。

少女の告白とともに、新たな手がかりを得た真奈たち。しかし、ナリヤの里に隠された真実はまだ明かされていない。そして、アシュテールの次なる罠が徐々に迫る——。

絆の光がさらなる闇を切り裂く!


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