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再生の夜明け

魔界に静けさが戻った。真奈が放った最後の光は、混沌の意思を一時的に鎮め、魔界全土を覆っていた霧と闇を消し去った。しかし、それと引き換えに、真奈自身は姿を消してしまった。

ラザールはその場に膝をつき、茫然と空を見上げる。紅い月がまるで真奈の行方を嘆くように、鈍く輝いていた。

「真奈……お前は……」

彼の声は震えていた。隣に立つイグナスも何も言えず、ただ彼の肩に手を置く。

ラザールとイグナスが真奈を失った直後、魔界全土に驚くべき変化が現れた。枯れていた大地に新たな草花が芽吹き、長らく荒廃していた村々には、かすかながらも活気が戻りつつあった。

「真奈の力は確かに魔界を救ったんだな。」

イグナスが感慨深げに呟く。

「だが、彼女はどこに行ったんだ……?」

ラザールの瞳には、安堵と不安が入り混じっていた。

「混沌の意思が言っていたように、彼女の存在そのものが魔界の均衡を保つ鍵だった。おそらく、真奈はその鍵としてどこか別の次元に……」

イグナスの言葉に、ラザールは立ち上がり、鋭い目で彼を睨みつけた。

「どこであろうと、真奈を取り戻す。俺にはそれしかない。」

真奈が姿を消してから数日後、ラザールは魔界の王宮に戻っていた。彼の帰還を待ち望んでいた臣下たちは、彼の変化に気付いていた。いつも威厳に満ちていた彼の目には、どこか哀しみが漂っている。

「殿下、混沌の脅威が去ったことで、各地の領主たちも和平に向けた動きを始めています。このままでは、魔界は再び統治の秩序を取り戻せるでしょう。」

一人の側近が報告を終えると、ラザールはゆっくりと頷いた。

「それは喜ばしいことだ。だが、俺の戦いはまだ終わっていない。」

ラザールは部屋を後にし、イグナスを呼び出した。

「お前、また何か無茶なことを考えてる顔だな。」

イグナスが苦笑する。

「俺たちの旅はまだ終わらない。」

ラザールの目は鋭く光っていた。

「真奈を取り戻すために、あらゆる可能性を探る。そしてそのためには……混沌の意思を完全に消滅させる方法を見つける必要がある。」

ラザールとイグナスは、古代の文献が保管されている「時の書庫」を訪れた。そこには、魔界の歴史が記された膨大な量の書物が眠っている。

「ここに混沌の意思について何か手掛かりがあるはずだ。」

ラザールが無造作に本を開くと、イグナスが横から茶化すように言った。

「お前が読書なんて珍しいな。これで頭脳派になるつもりか?」

「黙って協力しろ。」

二人が何時間も書物を漁っていると、一冊の古い予言書が目に留まった。それには、こう記されていた。

「混沌の意思は滅びず、ただ姿を変えるのみ。光を持つ者が新たな均衡を生むとき、再び闇の影が忍び寄るだろう。」

「闇が戻るだと……?」

イグナスが驚きの声を上げる。

「これは、真奈がしたことが一時的な解決に過ぎないという意味かもしれない。」

ラザールは苦々しく呟いた。

さらに書物を読み進めると、別の記述が彼らの目に飛び込んできた。

「光の鍵が真の力を発揮するには、紅き月が再び輝く夜、次元を超える門が開かれる。そのとき、犠牲となった者は再び選ばれる者として蘇る。」

「次元を超える門……」

ラザールは拳を握り締めた。

「それだ。真奈を取り戻すための鍵はこれだ。」

一方、真奈のいなくなった魔界では、彼女が救った村々で奇妙な現象が報告され始めていた。村の人々は、夜ごと真奈の声が聞こえると言い始めたのだ。

「夜になると、遠くから優しい声が聞こえるんだ……まるで、お祈りをしているみたいに。」

ある村人の証言を聞いたラザールは、真奈が完全に消えたわけではないことを確信する。

「真奈はまだこの世界と繋がっている。」

ラザールの言葉に、イグナスも頷いた。

「俺たちは急がないとな。その門が開くまでに、全ての準備を整えるんだ。」

ラザールとイグナスは再び旅に出た。混沌の意思の痕跡を追いながら、次元を超える門を開く方法を探し続ける。

ラザールの胸の中には、真奈と再び会えるという確信と、彼女の犠牲を無駄にしないという決意が燃えていた。

真奈の声が導く新たな冒険。混沌の意思の秘密を解き明かし、再び彼女を救う旅が始まる——。

果たして、二人がたどり着く真実とは!?


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