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運命の試練

光の扉を抜けた先には、これまでの旅とは全く異なる空間が広がっていた。天空は紫に染まり、大地は不規則に割れ、光る魔力の流れがその隙間を埋めている。浮遊する岩々の上には古代文字が輝き、静寂を貫くように何かが待ち受けている気配があった。

「ここが……試練の地?」

真奈が声を漏らすと、ラザールは手にした剣を握り直しながら頷いた。

「アルザハールが言っていた通りだ。この空間そのものが俺たちを試してくるだろう。」

イグナスが軽口を叩きながら、緊張を隠そうとしている。

「こういうの、だいたい最初にデカい敵が出てくるって相場が決まってるもんだぜ。おい、気を抜くなよ、真奈。」

しかし真奈はその言葉を耳にする余裕もないほど、胸を高鳴らせていた。目の前に広がる光景は、ただの試練という言葉では片付けられない神秘を感じさせたからだ。

大地が震える音とともに、遠くに黒い影が浮かび上がった。それはゆっくりと近づいてくると、やがてその姿をはっきりと現した。

「ようこそ、挑戦者たちよ。」

影の正体は、まるで人型のような輪郭を持ちながら、黒い霧で覆われた存在だった。霧の中からは無数の赤い目が真奈たちを睨んでいる。

「私は試練の使者。ここを訪れる者に力を問い、その意志を試す者。」

ラザールが剣を構える。

「力を問い、意志を試すだと? 何をさせたい。」

使者は答えず、代わりに霧の手を振り上げた。その瞬間、大地が割れ、無数の影が飛び出してくる。それらは魔界の住人を模した形をしていたが、表情は歪み、瞳には憎悪の色が浮かんでいた。

「お前たちが倒すべき敵は、ここにいる者たちではない。」

使者が低く響く声で告げる。

「では、何をすればいいの?」

真奈が震えながら問いかけると、使者は静かに答えた。

「自らを知ることだ。お前たちが何者であり、何を成そうとしているのか。その答えが見つからぬ限り、この地を出ることはできない。」

突然、空間が揺れたかと思うと、真奈、ラザール、イグナスの三人はそれぞれ別の場所に飛ばされてしまった。

真奈は荒れた砂地の上に立っていた。周囲には誰もおらず、不安が胸を締め付ける。

「ラザール! イグナス! どこにいるの?」

しかし答えはない。

一方、ラザールは霧の中にいた。影が次々と彼に襲いかかるが、剣を振るうたびに霧は散っていく。だが、敵を倒しても新たな影が湧き上がり、終わりが見えない。

「これが試練だというのか……!」

イグナスは、古い記憶に囚われたような幻影の中にいた。自分の失敗や後悔が目の前で繰り返される光景に、彼は苛立ちを隠せない。

「くそっ……こんなものに付き合ってる暇はない!」

一人砂地を歩いていた真奈の前に、光の柱が現れた。その中には見覚えのある人物が立っている。

「お母さん……?」

そこにいたのは、真奈の亡くなった母親だった。優しい微笑みを浮かべながら、真奈を見つめている。

「真奈、あなたは本当に強くなったのね。」

「お母さん……どうしてここに?」

母親の姿を見た途端、真奈の心に隠していた弱さが溢れ出す。魔界での旅の中で経験した恐怖や孤独、そして自分の無力さ。全てが一気に押し寄せてきた。

「私、強くなんかないよ。いつも怖くて、みんなに助けられてばかりで……。」

母親の幻影は静かに首を振った。

「それでも、あなたは前に進み続けてきた。それが強さというものよ。真奈、もう一度自分の心に問いかけなさい。あなたが本当に守りたいものは何?」

真奈が母親の幻影に向かい、小さく頷くと、光の柱が消えた。同時に、彼女はある答えを心に見つけた。

その瞬間、空間が歪み、真奈はラザールとイグナスの元に戻される。ラザールは汗だくで剣を握り締め、イグナスは息を切らしながらも笑みを浮かべていた。

「おい、戻ってこれたな。」

イグナスが冗談めかして言うが、その声には安心感が滲んでいる。

ラザールも真奈を見て、深く息を吐いた。

「全員無事か。これが終わりじゃなければいいが……。」

三人が試練の使者の前に立つと、彼は再び霧の手を動かし、地面に大きな円を描いた。

「意志は確認した。この扉をくぐることで、お前たちは混沌を鎮める力を得られるだろう。ただし、その代償もまた大きい。」

「代償って?」

真奈が尋ねると、使者は何も答えずに消えていった。

ラザールは剣を納め、真奈を見つめる。

「先に進むかどうか、決めるのはお前だ。」

真奈は一瞬だけ迷ったが、すぐに力強く頷いた。

「進もう。この世界を救うために。そして、みんなの笑顔を守るために!」

ラザールとイグナスも頷き、三人は光の扉へと足を踏み入れた。

扉の先に待つのは、魔界の核心。そして、二人の運命を左右する決断の時が訪れる。

果たして三人は何を選び、魔界の未来を変えることができるのか!?


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