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祠に響く古の声

ラザールたちが「灰の祠」に足を踏み入れると、そこは外見からは想像もできないほど荘厳な空間が広がっていた。天井からは青白い光が差し込み、無数の古代文字が壁一面に刻まれている。静寂が空間を支配し、どこか厳粛な雰囲気が漂っている。

「ここが……古代魔族が築いた祠なのね。」

真奈が小声で呟くと、ラザールは壁を慎重に調べながら答える。

「この場所には、魔界の創生にまつわる秘密が隠されていると言われている。俺たちが探す『真実』もここにあるはずだ。」

イグナスは壁に刻まれた文字を見て、感心した様子で首を傾げた。

「相変わらず古代文字は読めねぇな。ラザール、お前は読めるか?」

ラザールは一瞬黙り込むと、深刻な表情で首を横に振った。

「断片的には読めるが、完全に解読するのは無理だ。」

「じゃあどうするの? このままじゃ何も分からないままじゃ……」

焦りの色を見せる真奈に、ラザールは静かに言った。

「祠そのものが何かの『鍵』になるかもしれない。進んでみるしかない。」

祠の奥へ進むと、突然床が光り始めた。足元には複雑な魔法陣が浮かび上がり、その中心には大きな水晶のような装置が置かれていた。

「これ……何?」

真奈が近づこうとすると、水晶から低い声が響いた。

「来訪者よ、汝らの目的は何か。」

その声は古代魔族のものでありながら、どこか優しさを帯びている。不意の問いかけに真奈は言葉を詰まらせたが、ラザールが一歩前に出て答えた。

「我々は、この魔界を覆う混乱を終わらせるための真実を求めてここに来た。お前がその鍵を握っているのか?」

水晶の声はしばらく沈黙した後、再び響いた。

「ならば、汝らが真にその資格を持つか、試させてもらう。」

次の瞬間、魔法陣が激しく光を放ち、空間がねじれるように歪んだ。ラザールたちは異空間に引き込まれた。

目を開けると、真奈は見知らぬ場所に立っていた。周囲には誰もいない。

「ラザール? イグナス?……誰もいない。」

心細さを感じる真奈の目の前に、鏡のようなものが現れた。鏡の中には、自分自身の姿が映っている。しかし、映る真奈は穏やかではなく、どこか冷たい目をしていた。

「あなた、誰?」

真奈が問うと、鏡の中の自分が不気味な笑みを浮かべて答える。

「私はあなた。けれど、あなたが見たくないと思っているもう一人の自分。」

「……どういうこと?」

「あなたはいつも怖がっている。周りに迷惑をかけたくない、弱い自分を隠したいとね。でも、それで本当に皆を救えるの?」

その言葉に、真奈の心はざわついた。

「私は……そんなこと……」

「違うと言える? 弱いままのあなたが、ラザールを、魔界を救えると本当に思っているの?」

鏡の自分が放つ言葉に圧倒されそうになる中、真奈はペンダントを握りしめた。

「確かに、私は弱い。怖いこともたくさんある。でも、それを理由に立ち止まっていたら、何も変わらない……!」

真奈の決意が形になるように、ペンダントが光を放つ。鏡の中の自分がその光に飲み込まれ、やがて姿を消した。

異空間から戻ると、真奈の目の前にはラザールとイグナスが立っていた。二人も同じような試練を乗り越えたのか、どこか疲れた表情をしているが、その目には確かな決意が宿っている。

「無事か?」

ラザールが真奈に声をかける。

「うん……。ちょっと怖かったけど、大丈夫。」

真奈が笑顔で答えると、イグナスが軽口を叩いた。

「おいおい、真奈が一番強い顔してるじゃないか。俺たちが試されてるみたいだな。」

三人は再び水晶の前に立ち、その光を見つめた。

「汝らは試練を乗り越えた。よって、真実への道を開こう。」

水晶が光を放ち、周囲の空間が変化していく。目の前には新たな扉が現れ、その向こうからは暖かい風が吹き込んできた。

「これが……真実への道?」

真奈が扉を見上げると、ラザールは静かに頷いた。

「行こう。この先に、俺たちが探している答えがある。」

扉の向こうに待ち受けるのは、魔界の創造に隠された真実。そして、二人の関係に新たな試練が訪れる——。

真奈とラザールが手に入れる真実とは何か。そして、それが二人の絆をどう変えるのか。


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