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揺らぐ絆、秘められた誓い

魔深の森で手に入れたゼクトラの手がかりは、真奈たちを次の試練へと導いていた。その旅路の中で、ラザールの一族とゼクトラの繋がりという謎が重くのしかかり、一行の間に微妙な溝が生まれつつあった。

「ラザール、本当に大丈夫?」

馬車の中で、真奈が不安げに問いかける。

「……心配するな。」

ラザールの返事は簡潔だったが、その目はどこか遠くを見つめていた。魔深の森で見た光景が、彼の胸中をかき乱していることは明らかだった。

「おいおい、あんまり難しい顔をするなよ。真奈まで暗い気持ちになっちまうぞ。」

イグナスが軽口を叩いて場を和ませようとするが、ラザールは反応を示さない。

「……行くぞ。次の目的地は『影喰らいの谷』だ。」

影喰らいの谷は、その名の通り、太陽も月光も届かない漆黒の地である。そこにはゼクトラが作り出した「影魔」が潜んでいるとされ、これまで多くの魔族が命を落としてきた場所だという。

「さすがに不気味ね……。」

真奈が小さな声で呟く。彼女の手には初代から託されたペンダントが握られており、その淡い光だけが足元を照らしていた。

「影喰らいの谷は、ただの戦場じゃない。」

ラザールの言葉に、真奈とイグナスが顔を向ける。

「ここは、魔界の歴史上最大の戦いが起きた場所だ。ゼクトラの勢力が一度消滅したはずの場所……だが、奴の呪いがこの地を支配している。」

「ゼクトラの力って、本当にどこまでも広がってるのね……。」

真奈が恐怖を感じつつも呟いたその時、足元から奇妙な音が響き渡った。

「来たか……!」

ラザールが剣を抜くと同時に、地面から黒い影が現れ、形を変えて魔物へと姿を変えた。

「気をつけろ、こいつらは普通の魔獣じゃない!」

イグナスが声を上げ、剣を振るって影魔を迎え撃つ。

影魔たちは不気味な動きで一行を囲い込み、攻撃の手を緩めなかった。真奈はその場で怯えながらも、ペンダントを握りしめる。

「……お願い、助けて!」

すると、ペンダントから眩い光が放たれ、影魔たちの動きが一瞬止まった。

「何だ、この光は……?」

ラザールが驚きの声を上げる中、真奈は光に導かれるように歩を進める。

「この光……彼らを退けることができるかもしれない!」

光は影魔たちを押しのけるように広がり、道を切り開いた。その中心で、真奈はペンダントを掲げながら叫んだ。

「ラザール、イグナス! 今のうちにあの霧の向こうへ!」

2人は互いに頷き、真奈を守るように進んでいく。

霧の先にあったのは、朽ち果てた神殿のような建物だった。その中央には巨大な紋章が刻まれており、それはラザールの一族のものと同じだった。

「やはり……。」

ラザールが硬い表情で紋章に手をかざすと、それが淡い光を放ち、記憶の幻影が浮かび上がった。

幻影の中では、かつてラザールの祖先がゼクトラと手を組み、魔界を支配しようとしていたことが描かれていた。

「これが……俺の一族の罪か……。」

ラザールの拳が震える。彼の背中からは責任の重さが痛いほど伝わってきた。

「ラザール……!」

真奈が駆け寄ろうとするが、彼は手を振って制した。

「俺は……こんな血を受け継いでいる。真奈、お前を巻き込むべきじゃなかったのかもしれない。」

「そんなの関係ない!」

真奈の強い声が神殿に響く。

「ラザールがどんな過去を背負っていようと、私は今のラザールを信じてる! 一緒に戦おうって約束したでしょ!」

その言葉に、ラザールの紅い瞳が揺らぐ。しかし、彼は無言のまま目をそらした。

一行が神殿を後にしようとした瞬間、周囲を無数の影魔が取り囲んだ。

「くそっ、あいつら、数が多すぎる!」

イグナスが剣を振りながら叫ぶ。

真奈はペンダントを再び掲げたが、光は先ほどほどの力を発揮しなかった。

「どうして……?」

「真奈、無理をするな!」

ラザールが叫びながら影魔を斬り伏せるが、次々と湧き出る影に押されていく。

その時、真奈の心に初代の声が響いた。

「恐れるな、真奈。お前の想いこそが、この世界を動かす力だ。」

真奈は深呼吸し、自分の心に問いかけた。ラザールとイグナス、そして魔界の未来を守りたいという強い願いが、ペンダントに新たな力を与える。

「お願い……みんなを守って!」

ペンダントが再び光を放ち、今度は影魔たちを吹き飛ばすほどの力を発揮した。その眩い光の中で、影魔たちは消え去り、静寂が戻った。

戦いが終わり、ラザールは真奈の前に跪き、静かに言った。

「真奈……お前の力がなければ、俺たちはここまで来られなかった。ありがとう。」

「ラザール……。」

真奈は涙を浮かべながらも微笑み、彼の手を握った。イグナスが遠くからからかうように声を上げる。

「おいおい、二人だけの世界を作るのは勘弁してくれよ!」

その言葉に、真奈とラザールは顔を赤らめながらも笑い合った。

影喰らいの谷を突破した真奈たち。しかし、ゼクトラの次なる刺客が動き出そうとしていた。真奈とラザールの絆はさらに試されることになる。果たして、二人は魔界の未来を切り開くことができるのか?


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