決戦の幕開けと揺らぐ覚悟
千年の城の最奥部で、真奈たちは魔界の均衡を保つ魔法陣とその代償について知ることになった。しかし、そこに現れたレグナルトとその闇の兵士たちが一行に立ちはだかる。均衡を保つか、魔族たちを守るかという苦渋の選択を迫られる中、真奈とラザールたちはそれぞれの覚悟を問われることになる。
◇
「その力を使うつもりか？」
霧の中から現れたレグナルトは嘲笑を浮かべながら問いかけた。彼の背後には、禍々しい闇の兵士たちが揺らめくように立ち並んでいる。
「お前たちに均衡など保てるはずもない。愚かな人間と、その手を借りる王子がどれほど滑稽か……教えてやろう。」
ラザールは剣を握り締め、冷たい声で応じた。
「貴様に魔界を弄ばせるつもりはない。どんな犠牲を払ってでも止めてみせる。」
「犠牲、か……」
レグナルトは不気味に笑いながら、真奈を一瞥する。
「その犠牲に、あの人間の少女も含まれるのだとしたら、果たしてお前はそれを受け入れられるのか？」
その言葉に真奈は身震いしたが、ラザールは迷うことなく応じた。
「真奈を巻き込むつもりはない。それを防ぐのが俺の役目だ。」
「立派な王子様だな。だが、その言葉がどれほどの力を持つか、試させてもらおう！」
レグナルトが手を振り上げると同時に、闇の兵士たちが一斉に襲いかかってきた。
◇
「来るぞ！」
ラザールが叫ぶと、イグナスが素早く剣を抜き、前線に飛び出した。
「ラザール、真奈を守れ！俺はこいつらを引き受ける！」
真奈は背後に退きながらも、胸の宝珠が強い光を放つのを感じた。まるで自分に何かを伝えようとしているような感覚だった。
「この力……使えば、何とかなるのかな……」
そう思い、真奈が宝珠を掲げようとしたその瞬間、ラザールが鋭い声で制した。
「無茶をするな、真奈！その力はまだお前自身のものになりきっていない！」
「でも、みんなを守るためなら！」
真奈の決意にラザールは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに頷き、彼女のそばに立った。
「ならば俺が守る。お前はその力を信じて使え。」
その言葉に力を得た真奈は、宝珠の輝きを解放する。眩い光が闇の兵士たちを弾き飛ばし、周囲の空間を清めるように広がっていった。
◇
戦いがひと段落したその時、レグナルトが高笑いを響かせながら現れた。
「なるほど、宝珠の力は確かに本物のようだ。しかし、肝心の覚悟が足りていない。」
「何を言っている……？」
ラザールが険しい表情で問い返すと、レグナルトは指を鳴らした。
すると、真奈の目の前に幻影が現れた。そこには、真奈が元いた世界――学校や友達、家族の姿が映し出されている。
「人間の少女よ。お前の選択次第で、ここに戻ることも可能だぞ。魔界の問題など放り出してな。」
真奈は息を呑んだ。懐かしい風景に胸が締め付けられるような思いがした。しかし、ラザールの言葉が彼女を現実に引き戻した。
「惑わされるな、真奈。奴はお前の心を揺さぶり、力を奪おうとしている。」
「でも……」
真奈は迷いを見せたが、すぐに頭を振った。
「そんなこと、できないよ……。私は、ここでみんなと一緒に戦いたい。だって、私がこの力を得たのは、ただ戻るためじゃない。」
その言葉に、ラザールとイグナスが静かに微笑む。
「よく言った、真奈。」
イグナスが頷きながら剣を構えた。
「ならば、その覚悟を証明してみせろ！」
レグナルトが闇の力を振るい、最終局面へと導く。
◇
レグナルトが自身の姿を巨大な魔物へと変え、戦いが激化する。一行は力を合わせて立ち向かうが、その圧倒的な魔力の前に追い詰められていく。
「ラザール、このままじゃ……！」
イグナスが苦悶の表情を浮かべる中、ラザールが全力を振り絞って立ち上がった。
「真奈、最後の一手だ。お前の力を俺に託してくれ。」
真奈はラザールを見つめ、恐怖を押し殺しながら頷いた。宝珠を両手で握りしめると、その力を彼に送るように祈り始めた。
「お願い、みんなを……守って！」
宝珠が輝き、ラザールの体を包み込む。その瞬間、彼の剣が赤い炎をまとい、巨大な力を帯びた。
「これで終わりだ！」
ラザールが剣を振り下ろし、レグナルトの闇を貫いた。
◇
レグナルトとの戦いは終わりを迎えたが、均衡を保つ魔法陣の前で真奈たちは再び究極の選択を迫られる。果たして、魔界と真奈の未来はどうなるのか——。
