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均衡を守る者たち

闇の影との激闘を終えた真奈たちは、新たな試練の地に向かって歩を進めていた。その先には魔界の均衡を保つ存在——「古の者たち」が待ち受けているという。しかし、彼らの真意を探る中で明かされる魔界の運命。真奈は巫女としての責務と、異界の少女としての自分との間で苦悩する。

「次の試練の場所、ここで間違いないんだよね?」

真奈は前方を歩くラザールに問いかけた。目の前には巨大な山々がそびえ立ち、その斜面は霧に包まれている。

「『均衡の聖域』と呼ばれる場所だ。あそこにはこの世界の真理を知る者たちがいる。」

ラザールの声は険しく、その顔も普段以上に緊張しているようだった。

「真理って……一体どういうことなんだろう。」

真奈は胸に手を当て、宝珠の鼓動を感じながら呟いた。

「難しい顔するなよ。俺たちがいるだろ?」

イグナスが軽く真奈の肩を叩いた。その笑顔に少しだけ気が楽になる。

「でも気を抜くなよ。この山にはただならぬ力が漂っている。」

ラザールが険しい目つきで辺りを見回す。

山の中腹に差し掛かる頃、真奈はふと立ち止まった。霧の中から、不思議な気配が感じられる。

「誰か、いる……?」

真奈の言葉と同時に、霧の中から現れたのは、透き通るような白い身体を持つ巨大な鳥だった。その目は紫色に輝き、真奈たちを静かに見つめている。

「この者たちよ、聖域への扉を開く資格を示せ。」

鳥の声は直接心に響いてくるようだった。その威厳ある響きに、真奈は自然と膝をつきそうになるのを堪えた。

「資格? それって、どうすれば……?」

真奈が尋ねると、鳥は冷たく言い放つ。

「汝らの心に潜む真実を示せ。我らが望むのは偽りなき魂だ。」

ラザールは剣を握りしめた。

「そんな抽象的なことを言われても、俺たちは試練を受けに来た。それを通せ。」

しかし鳥はその言葉を無視し、鋭い視線を真奈に向けた。

「お前だ、光の巫女。その胸に宿すものが、均衡を揺るがす鍵となる。」

真奈は思わず後ずさったが、イグナスが彼女を支えた。

「大丈夫だ、真奈。何かあっても俺たちがいる。」

真奈は深呼吸し、小さく頷く。

「分かりました。私が試練を受けます。」

鳥が翼を広げると、その周囲に輝く光の輪が生まれた。それが山奥へと続く道を作り出していく。

「ならば来るがよい。我らの裁定を受ける覚悟があるのならば。」

辿り着いた先には広大な祭壇が広がっていた。四方を囲む柱には、それぞれ異なる形の紋章が刻まれている。

祭壇の中央に立つと、三人の前に不思議な姿の者たちが現れた。半透明な身体を持つその者たちは、人のようでもあり獣のようでもある。

「我らは均衡の守護者。古の誓いに基づき、巫女に試練を課す。」

一人の守護者が静かに告げる。その声には怒りも喜びもない。ただ冷静で中立的な響きがあった。

「試練って、具体的に何をするんですか?」

真奈が恐る恐る尋ねると、守護者たちは小さく頷いた。

「巫女よ、汝は二つの選択を迫られる。一つは魔界の均衡を守り、闇を浄化すること。もう一つはこの均衡を壊し、新たな世界を生むこと。」

その言葉に、ラザールとイグナスも息を飲む。

「均衡を壊す……? そんなこと、私に決められるはずが……!」

真奈は動揺し、守護者たちを睨みつけた。

「だがその決断こそが、巫女たる汝の責務だ。」

守護者の一人が手を掲げると、真奈の胸元にある宝珠が眩い光を放った。その光の中に、魔界の壮大な歴史が浮かび上がる。

真奈の目に映ったのは、かつて魔界を治めていた「第一の巫女」の記憶だった。彼女は魔界の創造主たる存在から授かった宝珠を使い、世界を均衡へと導いた。しかし、その代償として彼女自身が命を落とし、その力は後世へと受け継がれることになったという。

「これが……私が受け継いだ力?」

真奈は思わず涙を浮かべた。その力の重さに、彼女の心は引き裂かれそうになる。

「そうだ。そして均衡を守るということは、犠牲を伴うものだ。」

守護者たちは冷たくそう告げる。

ラザールが真奈の前に立ちはだかった。

「おい、その力を強要するのはやめろ。彼女には彼女の意思がある。」

「王子よ、汝もまた巫女の選択に従うべき運命。抗うことは許されぬ。」

イグナスも剣を握りしめたが、今は言葉を飲み込むしかなかった。

守護者たちの指示で、真奈は一人で祭壇の中央に立つことを求められた。周囲が次第に闇に包まれ、真奈は自分の内面と向き合うことを強いられる。

「私は……どうすればいいの?」

真奈の心の中に現れたのは、これまで出会った魔族たちの顔。そして、彼らの優しさや笑顔が浮かび上がる。

(均衡を壊すことが新しい未来を生むとしても……私は、魔族の平和を壊したくない。)

その瞬間、彼女の胸の中で宝珠が再び輝きを放った。光が闇を裂き、彼女の答えを守護者たちに示すように広がっていく。

真奈の選択がもたらしたのは、一筋の光か、それともさらなる闇か。守護者たちから与えられる最終試練に、ラザールとイグナスも巻き込まれていく。魔界の未来を懸けた戦いが、いよいよ動き始める——。


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