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闇の王の影

ザイロスの森を抜けた真奈たちは、ヴェルガードの言葉が残した不穏な余韻を抱えたまま、新たな目的地である「黄昏の城」へと足を進めていた。この城はかつてラザールの祖先が築いたとされる場所で、今や闇の魔力に支配されていると言われる。魔界を覆う混乱の原因の一端がここに隠されていると信じ、彼らは旅を急いでいた。

「真奈、調子はどうだ?」

イグナスが馬車の上から声をかける。

「うん、大丈夫だよ。」

真奈は笑顔を返しながらも、内心は緊張を隠せなかった。ザイロスの森での一件以来、彼女は自分が魔界に与える影響について考え続けていた。

「おい、イグナス。軽口を叩く暇があるなら、警戒を怠るな。」

ラザールが鋭い口調で注意する。

「わかってるさ。だけど、あんまり張り詰めすぎるのもよくないだろ?」

イグナスは肩をすくめ、周囲を見渡す。

その時、突然地面が揺れ、馬が驚いて立ち止まった。

「何だ?」

ラザールが剣を抜き、真奈を背後に庇う。地面から黒い霧が立ち上り、それはやがて人の形を成した。

「またあの霧か……!」

イグナスが剣を構えると、霧の中から低い声が響いた。

「お前たちの旅はここで終わる。」

黒い霧の中から現れたのは、魔族の鎧を身にまとった複数の兵士だった。その中心に立つのは、ヴェルガードとは別の男。全身を漆黒の甲冑に包み、冷たい目で真奈たちを見下ろしている。

「我が名はダルクス。闇の王の配下として、異界の少女の排除を命じられた。」

「闇の王……?」

真奈が小さく呟くと、ダルクスは冷笑を浮かべた。

「貴様がこの地に現れたことで、すべての均衡が崩れた。お前が存在する限り、魔界に平和は訪れない。」

「そんなの、勝手な理屈だ!」

真奈は怯えながらも反論する。だがダルクスは答えず、兵士たちに命じた。

「かかれ!」

兵士たちが一斉に襲いかかる中、ラザールとイグナスが即座に応戦する。

「真奈、下がっていろ!」

ラザールが叫びながら剣を振るい、迫りくる敵を次々と薙ぎ倒していく。一方、イグナスは軽快な動きで兵士の間をすり抜け、その隙を突いて反撃を繰り返す。

「これが闇の王の部下か……思ったよりしぶといな!」

イグナスが軽口を叩きながらも鋭い斬撃を放つ。

真奈はその戦いを見つめながら、自分の無力さに苛立ちを覚えていた。しかし、ザイロスの森で得た力を思い出し、彼女は意を決して行動を起こす。

「私だって、何かできるはず……!」

両手を胸の前で組むと、真奈の体から淡い光が放たれた。その光は兵士たちを一瞬足止めし、ラザールとイグナスに隙を与えた。

「やった……!」

「よくやったぞ、真奈!」

イグナスが笑顔で振り返るが、その時、ダルクスが動いた。

「無駄だ。貴様の力など、この闇の前では無力。」

ダルクスが手をかざすと、黒い稲妻がラザールたちに向かって放たれる。ラザールは間一髪でそれを剣で受け流すが、その衝撃で後退してしまう。

「くっ……!」

「ラザール!」

真奈が駆け寄ろうとしたその時、ダルクスが彼女に向かって手を伸ばす。

「ここで終わりだ、異界の少女。」

だが、その瞬間、イグナスがダルクスの前に飛び出し、剣を振り下ろした。

「そう簡単にはやらせない!」

イグナスの一撃がダルクスの甲冑をかすめ、彼を後退させる。しかし、ダルクスはすぐに立ち直り、不気味な笑みを浮かべた。

「面白い……だが、いずれまた会うことになる。その時を楽しみにしておけ。」

ダルクスは霧となって消え、残された兵士たちも次々と消滅した。

戦いの後、真奈たちは再び歩みを進め、ようやく黄昏の城が見えてきた。その巨大な門の前で立ち止まり、三人は静かに息を整える。

「ここが……黄昏の城……。」

真奈が呟くと、ラザールが力強く頷いた。

「この中に、俺たちが追い求めてきた答えがあるはずだ。」

「でも、あのダルクスがまた現れるかもしれないよね。」

真奈が不安そうに言うと、イグナスが軽く肩を叩いた。

「大丈夫だ。俺たちはあいつに負けやしない。」

「そうだ。俺たちはここまで来たんだ。この先も、共に進む。」

ラザールの言葉に、真奈は小さく頷き、城の門へと一歩を踏み出した。

黄昏の城で待ち受けるのは、闇の王の真の姿。果たして真奈たちは、この最も危険な試練を乗り越えることができるのか——。


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