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裂けた信頼の影

共存への道を証明するため、真奈、ラザール、イグナスは魔界各地を巡る旅を始めた。最初の目的地は、魔界北西部に位置する「ルゴラの森」。そこにはかつて、魔族と人間が共存していたという伝説の村が存在していた。しかし、現在では荒れ果て、住む者もいないという。三人はその地に向かい、かつての共存の証拠を探すことにする。

霧深いルゴラの森に足を踏み入れると、静寂と薄暗さが支配していた。真奈は、辺りの不気味な雰囲気に身震いしながらも、ラザールの背中を頼りに進む。

「ここが……共存の村だった場所?」

真奈がつぶやく。

崩れた石造りの建物や朽ちた木製の家が点在している。その中には、どこか人間の文化を思わせる装飾や道具が残されており、魔族のものとは異なる雰囲気が漂っていた。

「確かにここは、人間と魔族が一緒に暮らしていた村だ。」

ラザールは村を見渡しながら語る。

「だが、今はこうだ。共存が失敗に終わった結果と言える。」

その言葉に、真奈は胸が締め付けられるような痛みを覚えた。共存の希望を証明したいと願う一方で、目の前の現実がそれを否定するかのようだったからだ。

「でも、どうしてこうなっちゃったんだろう……。」

真奈の疑問に答えるように、イグナスが肩をすくめた。

「争いだよ。人間と魔族が互いを理解しきれず、結局ぶつかり合った。それだけのことだ。」

三人が村を調査していると、どこからか足音が響いた。ラザールが鋭く周囲を見渡し、剣を抜く。

「誰だ! 姿を見せろ!」

霧の中から現れたのは、一人の魔族だった。彼の体は痩せ細り、目は血走っている。ボロボロの衣服をまとい、右手には錆びついた剣を握っていた。

「お前たち……また争いを持ち込む気か!」

男はラザールたちを睨みつける。その様子に真奈は一歩後ずさるが、ラザールが前に出て彼を制した。

「落ち着け。我々は争いに来たわけではない。この村の真実を知りたいだけだ。」

しかし、男は剣を構えたまま、怯えるように後ずさる。

「真実だと? この村を滅ぼしたのは、人間だ! 魔族を裏切り、俺たちを追い詰めたんだ!」

その言葉に、真奈は衝撃を受けた。共存を信じたいと思う一方で、過去の裏切りがどれだけ深い傷を残しているのかを思い知らされたからだ。

「でも、それがすべてじゃないはずです!」

真奈は勇気を振り絞り、男に向かって言った。

「私も人間だけど、あなたを傷つけるつもりはない。過去のことは変えられないけど、未来は変えられるって信じてるんです!」

彼女の瞳には涙が浮かんでいた。その純粋な訴えに、男は少しだけ剣を下ろした。

「……お前の言葉が本当なら、証明してみせろ。」

男はそう言い残し、霧の中へと姿を消した。

三人は村の中心にある大きな広場に足を踏み入れた。そこには、一つの石碑が残されていた。その表面には、人間と魔族が手を取り合う姿が刻まれている。

「これが……共存の証?」

真奈が手を触れると、石碑に刻まれた言葉が光を放ち始めた。その瞬間、頭の中に不思議な声が響く。

「共存の未来を選ぶ者よ、この地の記憶を受け取れ。」

次の瞬間、真奈の目の前に幻影が広がった。それは、かつて村が繁栄していた頃の姿だった。人間と魔族がともに笑い合い、助け合う光景——その温かさが、真奈の心に希望を灯す。

しかし、その幻影はやがて崩壊の瞬間へと変わった。些細な誤解から争いが始まり、村は炎に包まれる。

「こんな……。」

真奈の胸が締めつけられる。だが、彼女はその光景から目を逸らさなかった。

「この悲劇を繰り返さないためにも、私は……!」

幻影が消え、真奈は石碑の前で拳を握りしめた。

「絶対に、共存の未来を証明してみせます!」

その決意を受け、ラザールは静かに頷く。

「お前がそう決めたのなら、俺はそれを支えるだけだ。」

イグナスも笑みを浮かべながら、肩を叩いた。

「しっかりしろよ、真奈。これからが本番だ。」

三人は村を後にし、次の目的地へと向かう。共存への道を切り開くために——。

共存の証を探し続ける真奈たち。だが、次なる土地では、新たな敵が彼らを待ち受けていた——。


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