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真実の王冠

三人の手によって「裂け目」が閉じられた後、魔界に一時の静寂が訪れる。しかし、その静けさの背後には、まだ消えぬ闇が潜んでいた。真奈、ラザール、イグナスたちは「真実の王冠」と呼ばれる神器の秘密を解き明かすべく、魔界最奥に向かうことを決意する。そこに待ち受けるのは、魔界の過去を揺るがす真実だった。

裂け目を閉じたものの、真奈たちは完全に事態が収束したとは思えなかった。魔界の空は相変わらず紅い月に照らされ、不穏な風が吹き続けている。

「これで終わりじゃないんだよね。」

真奈は、ラザールの背中を見つめながら問いかけた。

「……ああ。この裂け目はただの前兆だ。本当の敵は、まだその姿を見せていない。」

ラザールは紅い瞳を細め、遥か彼方を睨む。イグナスが横で軽く肩をすくめた。

「つまり、まだ俺たちは一息つく暇もないってことだな。」

「冗談言ってる場合じゃないよ、イグナス!」

真奈が眉を吊り上げるが、イグナスはいつもの軽口で返す。

「まあまあ、姫君。こういう時こそ冗談の一つでも言わないと、心がもたないってもんだ。」

その軽い言葉の裏に隠された覚悟を、真奈は何となく感じ取っていた。

次なる目的地は、魔界の中心にそびえる「王冠の聖域」。そこには、魔界の創生とともに生まれたとされる神器「真実の王冠」が眠っているという。

「この王冠には、魔界のすべての歴史が記されていると聞いたことがある。」

ラザールが真奈に説明する。

「記されているって……そんなことができるの?」

「できるさ。魔界の力は人間界の理屈では計り知れないものだからな。だが、これには代償もある。王冠を使う者は、そのすべての真実に耐えなければならない。」

「耐える……ってどういうこと?」

ラザールは言葉を続ける代わりに、険しい顔をしたまま口を閉ざした。その様子に、真奈の胸がざわめく。

王冠の聖域に向かう道中、一行はこれまで以上に強大な敵に襲われる。次々と現れる魔物たちの猛攻に、真奈も身を震わせたが、ラザールとイグナスが先陣を切って戦い、彼女を守り続けた。

「真奈、大丈夫か!」

ラザールが血飛沫を浴びながら、振り返って声をかける。

「う、うん! 私も戦える!」

真奈は持っていた杖を握りしめ、かつて魔族たちから教わった魔法を放つ。火球が飛び、敵の群れの一部を打ち払うことに成功するが、その瞬間、背後から別の魔物が迫る。

「危ない!」

イグナスが素早く剣を振るい、真奈の背後の敵を斬り伏せた。

「いいぞ、その調子だ、真奈。でも無茶はするなよ!」

「うん……ありがとう、イグナスさん!」

激しい戦闘を繰り返し、ようやく一行は「王冠の聖域」へと辿り着く。そこは白い霧に包まれた荘厳な空間で、中央に鎮座する王冠が幻想的な輝きを放っていた。

「これが……『真実の王冠』……。」

真奈は思わず息を呑む。その王冠はただの装飾品ではなく、生きているかのように微かに脈動していた。

「さあ、ラザール。お前がこれに触れる番だ。」

イグナスが前に進むよう促す。

しかし、ラザールは動かない。代わりに真奈の方をじっと見つめた。

「……俺が触れるべきなのか?」

その言葉に、一瞬場が凍りつく。

「何を言ってるんだ、ラザール。お前はこの魔界の王子で、未来の王だぞ。」

イグナスが驚きの声を上げるが、ラザールはゆっくりと首を振る。

「この王冠はただの神器じゃない。これに触れた者は、魔界のすべてを受け入れなければならない。だが……」

ラザールは真奈を見据え、続ける。

「お前こそが、鍵を持つ者だ。お前がこれに触れるべきなのかもしれない。」

突然の指名に、真奈の心臓が激しく跳ね上がる。

「私……そんなこと、できるの?」

「真奈、お前ならできる。俺たちが支える。」

ラザールの真剣な眼差しに後押しされ、真奈は震える足で王冠へと歩み寄る。そして、両手を伸ばし、そっと王冠に触れる。

瞬間、眩い光が辺りを包み込む。同時に、真奈の頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。

「これは……魔界の過去……!」

彼女は魔界の創生、数々の戦争、王族の秘密、そしてこの世界を滅ぼそうとする「真の敵」の存在を目の当たりにする。

光が収まり、真奈はゆっくりと顔を上げた。その瞳には確かな決意が宿っていた。

「ラザール、イグナス……わかった。私たちの敵は、この世界そのものに根付いている闇だよ。」

「どういう意味だ?」

「それは……」

真奈が知った「真実」とは何か。そして、それが仲間たちにどんな影響を与えるのか。物語は新たな局面を迎える——。


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