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未来への誓い

虚無の皇との激闘が終わり、魔界には久しぶりの静寂が訪れていた。夜空には紅い月が静かに輝き、遺跡の廃墟には、戦いを終えたラザール、真奈、イグナスの三人が佇んでいた。

「これで、本当に終わったんだね……」

真奈は剣を地面に突き立て、ほっとしたように微笑んだ。その顔には疲労が滲んでいたが、それ以上に充実感と安堵の色が浮かんでいた。

ラザールは真奈の横に立ち、深い息を吐きながら頷いた。

「ああ。だが、この勝利はお前が掴んだものだ、真奈。」

「そうさ!」

イグナスが軽く真奈の肩を叩く。

「お前がいなかったら、俺たち、どうなってたか分からないぜ。虚無の皇を相手に、ここまでやれるなんてな。」

真奈は恥ずかしそうに笑った。

「そんな……一人じゃ何もできなかったよ。ラザールやイグナス、みんながいてくれたから。」

戦いの疲労が体に重くのしかかる中、三人は遺跡を後にし、近くの村へと向かって歩き始めた。

途中、ラザールはふと足を止め、夜空を見上げた。

「……これで魔界には平和が訪れるだろう。しかし、平和を維持するのは、この勝利以上に難しい。」

「平和を維持……」

真奈もラザールを見上げ、彼の横顔に宿る覚悟を感じ取った。

「ラザールは、この先もずっと戦い続けるの?」

「戦い続けるつもりはない。」

ラザールは少し笑いながら答えた。

「だが、王として、この世界の未来を守る責任がある。それが俺の務めだ。」

真奈はその言葉を聞きながら、心にある想いがふと蘇った。この魔界での旅路、自分を必要としてくれた人々、そしてラザールやイグナスと過ごした時間。全てが大切な記憶となって、真奈の胸を温かくしていた。

「私も……何かできるかな?」

真奈はつぶやくように言った。

「お前はもう十分やっている。」

ラザールは真奈に優しい視線を向けた。

「だが、もしこの魔界で生きることを選ぶなら、これからも支えてほしい。」

村に到着した三人は、宿屋でひとまず体を休めることにした。真奈は部屋の片隅で剣を眺めながら、思考にふけっていた。

「この剣……紅月の力って言ってたけど、私と魔界を繋ぐ絆みたいなものなんだよね。」真奈は剣をそっと撫でた。

「でも、それって……」

その時、ドアをノックする音が響いた。

「真奈、入るぞ。」

ラザールの声だった。

彼が部屋に入ると、真奈は立ち上がり、彼に向き合った。

「ラザール……私、聞きたいことがあるの。」

「何だ?」

真奈は少し躊躇いながらも口を開いた。

「私は、この世界に留まった方がいいのかな? それとも……元の世界に帰るべきなのかな?」

ラザールはしばらく沈黙した後、静かに言った。

「それを決めるのはお前自身だ。だが、どちらの選択をしても、お前のしたことが無駄になることはない。」

「……ラザールは、私にここにいてほしいと思う?」

その問いに、ラザールは少し驚いた表情を見せたが、すぐに真剣な眼差しで答えた。

「正直に言うなら、お前にはいてほしい。この魔界を共に支えてほしい。」

真奈はその言葉を聞いて、胸が熱くなるのを感じた。

翌朝、真奈はラザールとイグナスを前に、自分の決意を伝えることにした。

「私……この魔界に残ることにする。」

イグナスは目を丸くし、

「おいおい、いいのか?お前には元の世界があるんだろ?」

と声を上げた。

真奈は頷いた。

「うん。でも、元の世界では何もできない私だった。でも、この魔界では、自分にできることがある。みんながそれを教えてくれたから。」

ラザールは真奈を見つめながら、静かに頷いた。

「ありがとう、真奈。その決意、俺も支えよう。」

「お前、本当にやるなぁ。」

イグナスは苦笑しながら頭をかいた。

「これからは、俺たちの仲間として扱うぞ。覚悟しておけ!」

三人は笑顔を交わし合い、新たな旅立ちへの一歩を踏み出した。

紅い月が輝く魔界の空。その下で、真奈は剣を掲げ、新たな未来を目指して歩き出す。

「これからもずっと、この世界のために……そして、自分のために。」

真奈の決意は、彼女の心に深く根を張り、この魔界に新たな希望の光を灯していた。


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