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虚無の皇、目覚める

虚無の門から現れた漆黒の鎧を纏う存在。その名は「虚無の皇」。その姿は、威圧感に満ちた漆黒のオーラと共に、見る者の心に恐怖を刻み込む。ラザール、真奈、そしてイグナスは、この新たな敵を前に、一瞬言葉を失った。

「虚無そのもの……だと?」

ラザールが剣を握りしめながら問い詰める。

虚無の皇は冷ややかな声で答えた。

「そうだ。私は虚無そのもの、すべてを呑み込み、すべてを終焉へと導く者だ。そして、この魔界もまた、私の糧となる運命にある。」

その言葉に真奈は身震いしながらも、立ち向かう決意を込めて叫んだ。

「そんなこと、させない! 魔界の人たちが苦しむのは、もう見たくない!」

ラザールとイグナスが虚無の皇に向かって同時に攻撃を仕掛ける。しかし、その一撃は彼の黒いオーラによって簡単に弾き返されてしまう。

「貴様らの力では、私を傷つけることすら叶わない。」

虚無の皇は冷たく笑いながら右手を掲げ、巨大な漆黒の槍を生成した。その槍を振り下ろすと、地面が激しく砕け、遺跡全体が揺れ動く。

「ぐっ……強すぎる!」

イグナスが歯を食いしばりながら体勢を立て直す一方、ラザールも息を切らせながら攻撃の隙を探していた。

「ラザール、どうする!?このままじゃ持たないぞ!」

イグナスが叫ぶ。

ラザールは虚無の皇の動きを睨みながら低く呟いた。

「奴の力には弱点があるはずだ。それを見極めるまで、持ちこたえるしかない!」

真奈は二人の姿を見ながら、剣を強く握りしめた。

「私も戦う。みんなだけに頼っていられない!」

真奈は虚無の皇に向かって走り出した。彼女の剣から再び紅い光が放たれ、その光が虚無の皇の漆黒のオーラと衝突する。

「お前がその剣の持ち主か……」

虚無の皇は初めて興味を示すような表情を見せた。

「なるほど、その剣は……紅月の力そのものか。」

「この剣がある限り、私は負けない!」

真奈が渾身の一撃を放つ。しかし、虚無の皇はその一撃を手のひらで受け止め、彼女を大きく吹き飛ばした。

「くっ……!」

真奈は地面に叩きつけられ、呻き声を上げる。

「真奈!」

ラザールが駆け寄ろうとするが、虚無の皇が再び黒い槍を振りかざし、彼の動きを封じる。

「お前たちは何も理解していない。この剣が持つ力は、虚無を破壊するものではない。むしろ、虚無と共鳴する力だ。」

虚無の皇の言葉に、真奈は驚きながら剣を見つめた。

「共鳴……?」

その瞬間、剣が微かに震え、彼女の手に熱を伝えるような感覚が走った。

「真奈、その剣はお前と魔界を繋ぐ絆そのものだ!」

ラザールが叫ぶ。

「お前が剣を信じ、自分自身を信じれば、きっと奴に対抗できる!」

「私と魔界の絆……」

真奈は剣を握り直し、これまでの旅を振り返った。魔界で出会った人々、ラザール、イグナスとの絆、そして自分を受け入れてくれたこの世界。その全てが、彼女の心に力を与えた。

「分かった……私は一人じゃない!」

剣が紅い輝きを増し、真奈の全身を包み込むように光を放った。その光は虚無の皇のオーラをかき消し、彼の動きを鈍らせた。

「何だ、この力は……!」

虚無の皇が動揺の色を見せる。

「今だ、真奈!」

ラザールが叫ぶ。

真奈は剣を高く掲げ、その光を全て剣先に集中させた。

「これで終わりにする!」

全力で突き進む真奈の姿に、虚無の皇も全力で対抗するが、その剣が放つ光は彼の漆黒のオーラを完全に貫いた。

「ぐあああああ……!」

虚無の皇は苦しげに叫び、黒い鎧が徐々に崩れ落ちていく。

「虚無は……滅びぬ……いずれまた……」

そう呟くと、彼の身体は完全に光の中に消え去った。

静寂が訪れた遺跡。真奈は剣を地面に突き立て、膝をついて息を切らしていた。

「真奈、大丈夫か?」

ラザールが彼女の元に駆け寄り、その肩を支える。

「うん……私、やったのかな……」

「ああ、お前が魔界を救ったんだ。」

ラザールが微笑むと、イグナスも疲れ切った様子で近づいてきた。

「いやはや、よくやったな。俺たちも少しは役に立ったか?」

真奈は笑いながら首を振る。

「イグナスも、ラザールも、みんながいたからできたんだよ。」

その言葉に、三人は静かに微笑みを交わした。

平和を取り戻した魔界。

しかし、真奈の心には新たな決意が芽生えていた。彼女が選ぶ未来とは——?


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