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虚無の門、開かれる時

紅月の頂で迎えた決戦の場。遺跡を包む重々しい空気の中、ラザールと真奈、そしてイグナスは、ローブの男とその配下たちに対峙していた。虚無の門を開く儀式が始まろうとしており、その魔力は周囲の空間を歪ませるほどの凄まじさだった。

ローブの男は冷笑を浮かべながら、真奈たちを見下ろしている。

「紅月の秘宝を手にしたところで、お前たちに何ができる? 虚無の力を制するには、その深淵を知る覚悟が必要だ。お前たちのような甘い心では扱える代物ではない。」

ラザールはその挑発に動じず、剣を構え直した。

「お前のような奴に魔界を渡すつもりはない。虚無の門を開かせるわけにもいかない!」

男の背後では、巨大な魔法陣が輝きを増している。虚無の門が徐々に形を成し始め、黒い霧がその中心から溢れ出していた。その異様な光景に、真奈は恐怖を覚えながらもラザールに倣って剣を握りしめる。

「ラザール、どうすれば止められるの!?」

真奈が必死に問いかけると、イグナスが冷静に状況を分析しながら答える。

「あの魔法陣だ。あれを破壊すれば、儀式は中断するはずだ!」

「ならば、俺たちで前線を押さえる。真奈、お前は魔法陣を狙え!」

「分かった!」

真奈は一瞬の躊躇を振り払い、遺跡の中央に向かって駆け出した。しかし、ローブの男が彼女の動きを見逃すはずもなく、指を鳴らすと無数の魔物が湧き出して進路を遮る。

「貴様らの浅はかな努力など無意味だ。虚無は全てを呑み込む……希望も、未来も!」

ラザールとイグナスが魔物たちの群れに突撃し、剣と魔法を駆使して道を切り開いていく。ラザールの剣から放たれる炎の斬撃は魔物を次々と薙ぎ払い、イグナスの素早い動きと正確な剣さばきが援護を完璧に果たしていた。

「真奈、進め!俺たちがここで食い止める!」

ラザールが叫ぶと、真奈は小さく頷き、懸命に魔物の隙間を縫うように走り抜けた。

しかし、彼女の前に再び現れたのはローブの男自身だった。

「愚か者が。虚無の力に触れようなど、死を望むようなものだ。」

彼は黒い杖を掲げ、虚無の魔力を凝縮した球体を放つ。

「くっ……!」

真奈は咄嗟に剣を構えて防御するが、その衝撃で後方へと吹き飛ばされてしまう。

倒れ込む真奈の目の前で、ローブの男がゆっくりと近づいてくる。

「お前は無力だ。人間風情が魔界の未来を語るなど、笑止千万。」

その言葉に、真奈は奥底から込み上げる怒りを感じた。これまでの旅の中で出会った魔族たちの笑顔、ラザールやイグナスと過ごした日々……彼女の心に刻まれた全てが、彼女を立ち上がらせる原動力となった。

「無力なんかじゃない!」

真奈は剣を再び握りしめると、全身に湧き上がる不思議な力を感じた。それはこれまで何度も彼女を救った、魔界の力と共鳴する感覚だった。

「この力……信じる!」

真奈が叫ぶと、剣が紅い輝きを放ち始めた。その光はローブの男を怯ませ、彼が思わず後退するほどの威力を持っていた。

「なに……その力は……!?」

「これが、私とみんなの絆の力!」

真奈は全力で突撃し、男の隙を突いてその胸元へ剣を叩き込む。

ローブの男が崩れ落ちると同時に、虚無の門の形が不安定になり始めた。魔法陣が崩壊し、黒い霧が次第に吸い込まれていくように消えていく。

「やった……!」

真奈が安堵の息をついたその瞬間、ラザールとイグナスが駆け寄ってきた。

「無事か、真奈!」

ラザールが彼女を抱き起こし、心配そうに顔を覗き込む。

「うん……なんとか。」

真奈が微笑むと、イグナスがいつもの調子で茶化した。

「さすが俺たちのヒロインだな。お前がいなけりゃ、これは成功しなかった。」

しかし、完全に崩壊したはずの虚無の門の中心から、新たな存在が姿を現した。それは漆黒の鎧に身を包み、圧倒的な威圧感を放つ謎の人物だった。

「お前たちが、虚無を閉じたのか。」

低く響くその声に、一行は緊張感を走らせる。

「何者だ!」

ラザールが剣を構えると、漆黒の人物はゆっくりとその兜を外し、冷酷な微笑みを浮かべた。

「私は虚無そのもの。門を閉じたとしても、その存在が消えることはない。」

虚無の門から解き放たれた真の敵。その圧倒的な力を前に、真奈たちはどう立ち向かうのか——。


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