表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/129

秘宝の守護者と封じられた記憶

紅月の頂に到達した真奈たちを待ち受けていたのは、壮麗で荘厳な遺跡だった。その中心には、紅い月光を受けて輝く神秘的な祭壇があり、その上には不思議な光を放つ結晶が浮かんでいる。その光景は美しいが、同時に不気味な静けさを湛えていた。

遺跡の中央に近づこうとしたその時、突然地面が揺れ、祭壇の前に一人の巨大な影が現れた。鋼のような銀色の肌を持つその守護者は、六本の腕を持ち、それぞれに異なる武器を携えていた。

「秘宝を求めし者よ、答えよ。その力を何に用いんとするか。」

低く響く声が遺跡全体に広がり、真奈たちの胸を震わせる。

「俺たちは魔界を救うために、その秘宝が必要だ!」

ラザールが一歩前に出て答える。

守護者は沈黙した後、冷徹な声で言い放った。

「魔界を救う? 紅月の力はそのような小さき願いに応えるものではない。」

「小さいだと!? 魔界の未来を守ることが、そんな些細なことだとでも言うのか!」

ラザールが激昂するが、守護者は動じず、六本の腕をゆっくりと動かしながら構えを取る。

「我が問いに答えた者よ。その真意を見極めるため、力を示せ。」

守護者は、六本の腕で異なる攻撃を繰り出し始めた。一つは斬撃、一つは炎、一つは氷、そして魔法の光弾までもが四方八方に飛び交う。

「こんな奴、どうやって倒せば……!」

真奈が一瞬怯むが、ラザールが振り返り叫ぶ。

「真奈、冷静に周囲を見ろ! 弱点があるはずだ!」

「分かった!」

真奈は戦闘の中心から距離を取り、守護者の動きを観察する。一方、ラザールとイグナスは果敢に守護者へ挑みかかった。

「こいつ、動きが規則的だ!」

イグナスが剣で炎の攻撃を受け流しながら声を上げる。

「真奈、その目で何か見つけられるか?」

真奈は目を凝らし、守護者の動きとその背後に浮かぶ結晶を注意深く見つめた。すると、守護者が動くたびに結晶が微かに光ることに気づく。

「背後の結晶……あれが弱点かも!」

「なるほど。ならば、あれを叩くしかないな!」

ラザールが瞬時に判断し、守護者を正面から引きつける役に徹した。

真奈は結晶を狙うべく、ラザールとイグナスが作った隙をついて守護者の背後へ回り込む。しかし、守護者もすぐにそれを察知し、残りの腕で真奈を捕らえようとする。

「やらせないわ!」

真奈は咄嗟に剣を構え、これまでの戦いで身につけた技を駆使して攻撃を回避しつつ、結晶に近づいていく。

「真奈、焦るな!動きにリズムを合わせろ!」

イグナスがアドバイスを送り、真奈はその言葉を胸に、呼吸を整えながら慎重に進む。

ついに結晶に到達した真奈は、剣を高く振り上げた。

「これで終わりだ!」

渾身の力を込めて一撃を放つ。その瞬間、剣が結晶に触れると眩い光が放たれ、守護者が苦悶の声を上げながら跪いた。

「やった……の?」

真奈が剣を下ろすと、守護者の動きが完全に止まった。

結晶が砕けると同時に、守護者の体が崩れ落ち、その代わりに一冊の古びた書物が現れた。その表紙には古代魔族の文字で「虚無の記憶」と書かれていた。

「これは……?」

ラザールが慎重に書物を手に取ると、それが静かに開き、周囲に映像が浮かび上がった。

そこに映し出されたのは、ラザールの幼い頃の姿と、彼の父である先代の王の姿だった。

「ラザール……これは、あなたの記憶?」

真奈が驚いたように問いかける。

「いや……知らない。こんな記憶はないはずだ。」

ラザールは困惑しながら映像を見つめる。映像の中で、先代の王がラザールに何かを語りかけている。その内容は「紅月の秘宝」にまつわる真実だった。

「紅月の秘宝は、魔界を救う力でもあり、滅ぼす力でもある。使い方を誤れば、虚無の門を開いてしまう……」

「虚無の門を……開く?」

真奈が呟く。映像はそこで途切れ、書物は再び閉じられた。

「どういうことだ?」

ラザールは書物を見つめながら頭を抱える。

「紅月の秘宝が魔界を滅ぼす可能性があるなんて……。これを本当に使っていいの?」

真奈も不安を隠せない。

「だが、この書物が語ることが全て真実とは限らない。」

イグナスが慎重に言葉を選びながら続ける。

「俺たちにはまだ選択肢があるはずだ。」

その時、遺跡の外から爆音が響き、一行は慌てて外に駆け出す。そこには、先ほど紅月の頂で見かけたローブの男が、無数の魔物を従えて待ち構えていた。

「遅かったな。紅月の秘宝を得るためには、試練を乗り越えた者の手を借りる必要があったのだよ。」

「何……?」

ラザールが敵意を露わにするが、男は嘲笑を浮かべる。

「さあ、我が主の望みを果たす時だ。」

そして、紅月がさらに暗い輝きを増し、虚無の門を開く儀式が始まろうとしていた。

紅月の頂で明らかになる虚無の力の全貌。真奈とラザールは魔界を救うための最後の決断を迫られる——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ