紅月の頂に眠る秘宝
虚無の従者との死闘を制した真奈たちは、新たな目的地「紅月の頂」を目指し旅を続けていた。紅月の頂には、魔界に古くから伝わる「秘宝」が眠っていると言われ、それが虚無の門を封じる鍵になるかもしれないという。しかし、その道中には新たな試練と謎が待ち受けていた。
◇
紅月の頂へ向かう途中、一行は荒涼とした大地に足を踏み入れていた。空は血のように赤く染まり、枯れた木々が無数に立ち並んでいる。「ここ、本当に人が通れる場所なの?」
真奈が不安そうに呟く。
「もともとは、この地も豊かな森だった。だが、虚無の門の影響でこんな有様になった。」
ラザールが険しい表情で答える。
「この荒野、ただの不毛地帯じゃないな……気を抜くと足元をすくわれるぞ。」
イグナスが地面を蹴りながら警告する。
その言葉通り、一行が進む道には隠された罠や瘴気の吹き溜まりがあり、足を止めるたびに慎重な行動が求められた。
「何か、誰かが私たちを見ている気がする……」
真奈が立ち止まり、背後を振り返る。
「気のせいではないな。」
ラザールが剣に手を掛け、鋭い目で周囲を見渡す。「影が……増えている。」
◇
突如として空気が冷たくなり、霧が立ち込め始める。霧の中から現れたのは、骸骨のような姿をした魔物の群れだった。その目は紅く輝き、虚無の力に支配されているようだった。
「この地に住む魔族たちが、虚無の影響で変異してしまったのかもしれないな……
」イグナスが呟き、剣を構える。
「戦うしかなさそうだね……!」
真奈も覚悟を決め、剣を抜いた。
「気を付けろ。こいつらは数が多いが、連携が取れている。」
ラザールが前線に立ち、一行を指揮する。
戦闘が始まると、骸骨の群れは異様な統率力を見せ、ラザールやイグナスの攻撃をかわしながら反撃してきた。
「こんな連携、ただの魔物の仕業じゃない!」
イグナスが声を上げる。
「誰かが操っている……!」
ラザールが周囲を見渡し、霧の奥に潜む存在を感じ取る。
◇
戦況が徐々に一行に不利になりつつある中、真奈は剣を輝かせ、再び覚醒の力を試そうとする。しかし、覚醒の力を完全にコントロールするにはまだ時間が足りない。
「真奈、無理はするな!」
ラザールが叫ぶが、真奈は一歩前に踏み出した。
「私も戦うって決めたんだ!」
真奈は剣を掲げ、周囲の霧を払いながら魔物たちの注意を引きつける。
「なら、俺たちがフォローする。」
イグナスが彼女の背後に立ち、ラザールもすぐに真奈の横に並ぶ。
「全員、一気に決めるぞ!」
ラザールが号令を掛け、三人が一斉に攻撃を仕掛ける。真奈の剣が放つ光が骸骨の群れを貫き、その隙にラザールとイグナスが止めを刺す形で次々に敵を倒していく。
◇
戦闘が終わった後、一行は霧の奥から拍手が聞こえるのを耳にする。そこに現れたのは、黒いローブをまとった謎の人物だった。
「さすがは紅き王子とその仲間たち。そして、異界の少女……君の力には本当に驚かされる。」
その声は冷たくも滑らかで、一行の背筋を凍らせた。
「何者だ?」
ラザールが剣を構え、敵意を露わにする。
「私はただの使者さ。虚無の門が開かれるその時を待つ者に過ぎない。」
ローブの男は不気味な笑みを浮かべた。
「虚無の門を開いて何を企んでいるの?」
真奈が問い詰めるが、男は答えず、ただ手を振ると霧の中に消えていった。
「奴が背後にいる限り、厄介なことになりそうだ。」
ラザールが険しい表情を崩さない。
◇
霧が晴れ、再び紅月の頂が見えるようになる。その山頂は、赤い月光を反射するように輝いていた。
「頂上まであと少し……」
真奈が疲れた声で言うと、イグナスが笑いながら肩を叩く。
「その顔だと、もう山登りはこりごりだって感じだな。」
「だって……ここまでで、もう何度も危ない目に遭ってるんだよ?」
「安心しろ。俺たちがついてる。」
ラザールが微かに微笑み、真奈に手を差し伸べた。
「うん……!」
真奈がその手を握り、一行は再び歩き始めた。
◇
紅月の頂には、魔界の未来を左右する秘宝が眠っている。
しかし、彼らがそこに辿り着いた時、その秘宝を巡る新たな敵と、予想もしなかった真実が待ち受けているのだった——。