異世界、行ってみませんか?
目の前の自称・神様が何かを話しているが、今の自分はきっとアホみたいな顔をしているんだろうな。
というか、何でこんな状況になっているんだ?
スマホでゲームやってた事は覚えてる。
それで、なんか変な広告が出てきたんだ。
確か・・・『ダンジョン、潜りませんか?』だったか?
いつも通り消そうと思ってたけど、やたらと×が小さかったな。
それで・・・間違ってタップして・・・スマホがなんか光って・・・
「これ!聞いておるのか!」
あぁ、すんません。
目の前の爺さんは怒ってるけど、しょうがないだろ?
いきなりこんな所に連れられて、訳の分からない話をされて・・・正気でいる方が異常だろ。
自称・神様はわざとらしい溜息を吐き、もう一度説明をしてくれた。
えらく長く話してるけど、簡単に言えばこうだ。
『異世界にあるダンジョンを攻略して欲しい・・・いや、して来い』
・・・バカじゃねぇの?
え?何?この爺さんヤバい奴?
それとも夢か?
俺、寝落ちしてる?
いや、知識はあるよ?
渡辺君と杏杖君と森下君とよく話すし。
異世界召喚とか異世界転生とは知ってるけど・・・漫画とかアニメの話だろ?
っていうか、あれって大体死んだ奴がいくんじゃねぇの?
そう言えば・・・渡辺君が『トラックの運転手が可哀想』って言ってたな。
まぁ、それはいいや。
え?何?俺死んだの?
「これ!聞いておるのか!」
あぁ、すんません。
聞いてるけどさ・・・え?マジ?
頬をつねっている間にも目の前の爺さんは何かを話しているが関係ない。
ちょっと痛いから・・・夢じゃないのか。
えぇ・・・マジかぁ・・・
「―――と、言う訳じゃ。行ってくれるな?」
「え?嫌だよ」
爺さんが驚くが、当たり前だろ。
俺にも現実の生活があるし、興味はあるけど何でそんな危ない事しなくちゃいけねぇんだよ。
っていうか、そもそも何で俺なんだよ。
異世界行きたい奴なんてそこら辺に山程いるだろうが。
え?それとも何?もしかして・・・俺に凄い才能があるとか?
選ばれし者とか?
そうだとしたら、一考の余地は・・・
「いや?全然。お主があの広告で立候補したんじゃろ?」
「・・・はぁ?」
何のことだ?
何言って―――
一瞬硬直し、すぐに理解した。
ふざっけんじゃねぇぞ!クソ爺!
あんなもん誤タップだ!誤タップ!!
昨今の芸能人の間でも誤タップ流行ってんだろうが!!
つーか、あんなに×が小せぇ事あるかよ!?
そこいらのエロ広告よりも悪質じゃねぇか!!
っていうか、何で異世界に連れて行くのに広告なんだよ!?
もっとなんかこう・・・色々あるだろ!?
「まぁ、落ち着け。ちゃんと特別なスキルは用意してある。それも3つもじゃ」
・・・え?
先程までの怒りはどこへやら、僅かに興味が湧いた。
転生先で外れスキルとか、生まれつき外れスキルとかは聞くけど・・・神様が直接くれるスキルに外れは無いんじゃないの?
それも3つだよ?3つ。
絶対に1つは当たりだろ。
いや、俺の知識不足かも知れないけど・・・
くそっ!こんな事なら、もっと3人と話しておくんだった!
いや、待て。
恐らくこのパターンはチート無双物だ。
そんな感じがする。
だとしたら・・・副次効果でハーレムもあるか?
異世界の女の子達と・・・うへ。
「まぁ・・・その・・・なんだ・・・興味は無いけど・・・一応・・・聞いてみようかな・・・?」
「うむうむ。良い心がけじゃ。心して聞くがいい。1つ目は『死中に活』じゃ!これはお主が命の危機に陥った時、全ステータスを上げる優れものなんじゃぞ」
シチューにカツ?
シチューには牡蠣だろ?
どっちかって言うと、カツはカレーだろ。
まぁ、それはいいや。
1つ目は命の危機に瀕した時に発動する系か。
・・・いいじゃないの!
何か名前もカッコいいし、主人公っぽい!
次は何かこう・・・魔法的なやつがいいな。
「2つ目は『底力』じゃ!これはお主が命の危機に陥った時、力が増大する優れものじゃ」
・・・ん?
スキルって技術とかって意味だよな。
『底力』って・・・技術なの?
気の持ちようとかじゃないの?
あれ?ん?
っていうか、2つ目も命の危機に瀕した時に発動する系?
え?何?
俺TAでもするの?
そんなに火力盛らなきゃ駄目なの?危なくない?
名前もやたらと男臭いし・・・いやいや、待て待て。
これは前座、言わば外れスキル枠。
本命は最後の一枠だろ。
ガチャだって最後の1つが輝いてるんだ、間違いない!
この爺・・・憎い演出しやがって。
「そして3つ目。最後のスキルは―――『ド根性』じゃ!!これは凄いぞ!日に一度しか発動はせんが「ふざっっっけんじゃねぇぞ!!クソ爺!!」
どうした?と、爺が目を丸くする。
どうしたもこうしたもあるかよ!
何だよ『ド根性』って!
スキルもクソもねぇよ!
ただの精神論じゃねぇか!
当たり外れ以前の問題だろ!
この世知辛い世の中生きてるから根性は誰にでもあるんだよ!!
このクソじ―――いや、待て。
冷静に考えろ。
自称・神だぞ。
こんな訳の分からないスキルを与えるか?
それも特別と言っていた。
命の危機・・・特別なスキル・・・異世界・・・
これらを考察し、導き出される答えは―――
「・・・その世界は何回死んでもいい系のやつか!」
それに応えるかのように爺が微笑む。
何だそういう事か。
だとしたら納得だ。
痛いのは流石に嫌だが、死んでも大丈夫なら・・・まぁ・・・
常に火力を維持していればそんなに恐れる事は・・・
「何を訳の分からん事を。死んだらお終いじゃろ?お主・・・頭大丈夫か?」
爺が哀れみの目を向けてきた。
ぶん殴るぞ、このクソ爺!!
死んだら終わりの世界で何で瀕死前提のスキルを渡すんだよ!?
ゲームじゃねぇんだよ!?
そんな世界に誰が行くかよ!
「最後にお主のステータスじゃが・・・これでいいかの?」
いや、行かねぇよ!!
話聞けよ!
そんなんだから無神論者が増えんだよ!
反論するが、無情にも目の前に淡い光で文字が描かれていく。
名前 :玉 鋼次郎
年齢 :21
職業 :穀潰し
生命力 :5
魔力 :3
力 :9
耐久力 :2
素早さ :8
賢さ :6
信仰心 :0
スキル :『ド根性』『底力』『死中に活』
マジでぶん殴るぞクソ爺。
穀潰しってなんだよ!
職業じゃねぇだろ!
つーか働いてるよ!
明日も仕事なんだよ!
だから行かねぇって言ってんだよ!
・・・ん?
それにこの数字・・・『ご・み・く・ず・や・ろ・お』?
「このクソじじ「それじゃあ、頼んだぞい」
ニヤける爺の合図と同時に、無情にも足元に出来た穴に落ちていく。
このクソ爺・・・!
覚えてやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
空しく響き渡る叫びと共に―――異世界でのダンジョン攻略が始まった。
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