表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/69

第六十五話 希望の翼

「サーシャー!!!!」


 風を切る音が轟音となって耳に襲う中、微かにレナード様が私を呼ぶ声が聞こえてきます。


 突然のこと過ぎて、まだよくわかっておりませんが……この浮遊感……私、落ちているのでしょうか?


 あはは……何とか出来ると思ったら、こんなミスをしてしまうだなんて、私ったら本当に情けないですわね。情けなさすぎて、逆にこんな状況なのに冷静になれておりますわ。


 もしかしたら、レナード様が急いで助けに来てくださるかもしれませんが、瘴気の動物の対処に追われていたので、助けに来るのは難しいでしょう。

 自分で何とかできればいいのですが、私は空中に放り出された時に対処できそうな魔法は、何一つ使えません。


 ……私はもう、助からないということですね。レナード様との幸せな未来は、たった一つの失敗で、失ってしまいました。


 ごめんなさい……レナード様。でも、せめて私の聖女としての使命だけは、果たさせてください!


「あぁぁぁぁぁぁ!!」


 落下しながらも、私は更に魔力を高めていくと、それが体から光として溢れ出ました。そして、その光は私の背中に集まり……巨大な天使の翼のような形になりました。


「つ、翼……? もしかして、飛べますの!?」


 このままでは、落ちて死んでしまうだけ……一か八かで、翼を思い切り動かすイメージをしてみましたところ、翼は大きく羽ばたき、私の体は再び宙を舞いました。


「これも聖女の力なのでしょうか……? とにかく、まずはレナード様を安心させなくては!」


 私がもう助からない思い込んで、瘴気の攻撃に無抵抗になってしまっては、全てが無意味になってしまいます。早くレナード様の元に帰らないと!


「レナード様ー!!」

「サーシャ!? い、生きていたのか……!?」

「はい! 突然現れたこの翼のおかげで、なんとか!」

「よかった……本当に良かった……すぐに抱きしめたいが、それは後にしよう。彼らが来ている!」


 私とレナード様を取り囲むように、瘴気の動物が集まってまいりました。


 でも、私の頭に流れているこのイメージ……これがあれば、おそらく!


「我が聖なる力よ、民を不幸にする悪しき魔力の悉くを浄化せよ!」


 私の呪文に、背中の翼が応えてくださいました。翼からは無数の羽根が舞い散り、彼らはそれぞれの位置に飛んでいくと、そのまま強い光を放ち始めました。


 その光から、浄化の魔法を使った時と同じ魔力を感じました。それを受けた瘴気の動物達は、光に照らされた影のように、一瞬にして消えてしまいました。


「凄い……さすがだ、サーシャ!」

「ありがとうございます! あとは結界を……あら?」


 私の気のせいでしょうか? 先ほどと比べて、結界の魔力が弱まっているような……もしかして、あれも瘴気と同じく、私の浄化の魔法でどうにかできる……?


「やってみる価値はありますわね。集中……集中……」


 私がさらに魔力を溜め始めると、背中の翼の大きさがさらに大きくなりました。私は、その大きくなった翼に浄化魔法の魔力を組み込み、一斉に大量の羽根を飛ばしました。


「これで終わりですわ! 皆様、お願い致します!!」


 私の号令に従って、辺りに漂う羽根たちは、再び一斉にまばゆい光を放ち始めます。光が一つだけならまだしも、最低でも何百もの数の羽根。いくら強力な結界とはいえ、耐えきれないでしょう。


「……結界が無くなっている……」

「あの結界も瘴気の一部と思ったのですが、正解だったようですね」


 結界が無くなったとはいえ、まだ魔法を止めたわけではありません。現に、まだお城の中から感じる魔力は、残ったままですもの。


「それにしても、さすがはサーシャだ! くそっ、こんな事態じゃなければ、手当たり次第に君のことを自慢して回ったというのに!」

「も、もう……レナード様ったら……それよりも、早く中に入って魔法を止めましょう!」

「そうだね。場所はどこかわかるか?」

「はい。あそこ……お城の最上階にある、結界魔法の部屋です!」

「あそこだね。よし、わかった!」


 この先には、この魔法の核があります。それと同時に……きっとあの子がいるはず。

 生贄と言われていたし……生きているかはわからないけど、聖女として苦しんでいる人がいれば、必ず助けます。それがたとえ、私のことが嫌いで、この国を無意識に滅茶苦茶にした人ですが、あの子だって……ある意味犠牲者ですもの。


「到着っと。ありがとう、しばらく休んでてくれ」

「ぶるるるる」


 私達が、目的地の部屋に繋がる廊下の窓から中に入ると、馬は鼻を鳴らしながら、魔法陣を通って帰っていきました。

 ここまで頑張ってくれて、感謝しかありません。帰ったら、ゆっくりニンジンでもあげたいですね。


「さあ、開けますよ……」


 目的地である部屋の前に立ち、ゆっくりと扉を開けると、そこではぐったりしたルナが、聖女様の石像の前で、磔のような形でつるされていました――

ここまで読んでいただきありがとうございました。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、モチベーションに繋がりますので、ぜひ評価、ブクマ、レビューよろしくお願いします。


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【★★★★★】から出来ますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ