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第五十五話 ついに……!?

「……あれ、ここは……」


 目を覚ますと、私は夜の砂漠の真ん中に倒れていました。


 どうやら、無事に地上に戻ってこれたようですわね……聖女様には何から何までお世話になりっぱなしです……。


「力を得たおかげか、体の疲労が全く感じませんね。これなら、夜が明ける前に戻れるかもしれません」


 砂漠に入る前に、御者から預かっていた石を取り出して魔力を流すと、細い光の筋が伸び、とある方向を指し示していました。


 この光の先に、御者が持っている石があるのでしょう。つまり、この光に沿って向かえば、屋敷に戻れるということですわ。


「レナード様、すぐに戻りますから……待っててください!」


 ここまで来た時とは打って変わり、軽やかに砂漠の砂を蹴って駆け出しました。悠長に歩いていたら、また気温が上がってしまいますし、明るいと光の筋が見えにくくなってしまいます。

 それに、この寒い環境では、動いている方が楽ですもの。


「レナード様……レナード様……!」


 今こうしている間にも、レナード様が苦しんでいると思うと、自然と体が前のめりになってしまいます。足元が悪いのですから気を付けないと、転んで怪我でもしたら笑い話にもなりません。


「ふぅ……はぁ……あ、あれは!」


 頑張って砂漠を進んでいると、日が上り始めた頃には無事に御者が待っている場所に到着することが出来ました。


 こんなに早く戻ってこれるとは、正直驚きですわ。思った以上に、祭壇は遠くにあったわけではないみたいですわね。


「サーシャ様、おかえりなさいませ! ご無事でなによりです!」

「あなたも、熱中症になっておりませんか?」

「ご心配していただき、誠にありがとうございます。私めも馬も、何も問題ございません」

「それはよかったですわ。こんな所で待たせてしまい、大変申し訳ございません」

「いえいえ。ところで、首尾の方は……」

「はい、上場ですわ! 早くレナード様の元に戻りましょう!」


 私の言葉を聞いて、とても嬉しそうな御者と共に、急いでレナード様の待つ屋敷へと無事に戻りました。


 色々とあったせいか、なんだかとても久しぶりに帰ってきた気がします。って、感傷に浸っている時間などありませんわ。早くレナード様の元に!


「レナード様、ただいま戻りました!」

「……サーシャ……? 本当に、サーシャなのか……!?」

「はい、サーシャですわ!」

「よかった……無事だったんだね! 急に屋敷を飛び出したって聞いて、心配していたんだよ!」


 無理に起きようとするレナード様を急いで制止させて、ゆっくりとレナード様をベッドに寝かしてから、その冷たくなった手をギュッと握りました。


「ごめんなさい、レナード様……どうしてもあなたを助けたくて」

「その気持ちはとても嬉しいよ。でも……もう助からない俺のために、無理はしないでくれ」

「いえ、助かりますわ」

「ふふっ、サーシャは本当に俺を励ますのが得意だね。そう言われると、本当にそうなんじゃないかって思うよ」


 レナード様は、まだ私に何があったかご存じではありません。だから、まさか私の言葉が本当だとは、夢にも思っていないでしょう。


「レナード様、大丈夫ですわ……私がすぐに元気にしてさし上げます」

「サーシャ、なにかあったのかい……? 随分と大人びたような……」

「色々とございまして。その話はまた後程。今は、治療が先ですわ」


 私は目を閉じると、体の内から溢れ出ようとする魔力をコントロールして、魔法の準備に入ります。


 聖女様から頂いた力を使うのは初めてですが、準備の段階で既に以前の私とは比べ物にならないほどの力を感じますわ!


「我が聖なる力よ、彼の者を苦しめる根源のことごとくを浄化したまえ!!」


 私の声に応えるように、部屋を全て覆うくらいの巨大な魔法陣が出現し、赤い光を放ち始めます。


 その魔法陣から発せられる光や魔力が凄まじいせいで、屋敷中の使用人、そしてその日は家で仕事をしていたジェラール様が、部屋の中に飛び込んできました。


「レナード! サーシャ! 大丈夫か!!」

「はい、大丈夫ですわ! お騒がせして申し訳ございません! これは私の魔法の影響ですの!」

「サーシャの魔法だって!? この魔力、全盛期のお師匠様と同じか、それ以上ではないか!」


 心配で様子を見に来た方々が驚く中、私の魔法によってレナード様の体が光に包まれていき……そして光が消えました。


「レナード様、お体の具合はどうですか?」

「…………」

「レナード様?」


 レナード様は、ゆっくりと体を起こしましたが、うんともすんとも言いません。


 もしかして私の魔法は失敗してしまったのでしょうか……そんな嫌な予感が脳裏に過ぎる中、レナード様は私の方を向きながら、一筋の涙を流しました。


「君は……本当に凄いね。あれだけ苦しかったのが……嘘のように消えたよ」

「な、なん……だと……? レナード、それは本当か……?」

「はい、義父上。俺の体は……サーシャが治してくれました」

「治った……レナード様……本当に……うっ……ぐすっ……うわぁぁぁぁん!!」


 もう助からないと思っていたレナード様が、無事に回復した。そう思ったら、緊張の糸がプツンッと切れてしまい、レナード様に抱きつきながら、大声で泣いてしまいました。


「よかっ……よがっだですわぁぁぁぁ! レナードさまぁぁぁぁぁ!!」

「サーシャ……俺は、これからもずっとサーシャと暮らせるのか……? そんな夢のような……あ、ははっ……サーシャ……サーシャ……!」

「んむっ!? んっ……レナー……はむっ!」


 感極まったレナード様は、大勢の人がいる中で、私の唇を奪ってきました。


 ……もちろん恥ずかしかったですけど、そんなのが気にならないくらい、レナード様が元気になったのが嬉しくて、私はレナード様の首に手を回し、そのキスを受け入れました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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