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第四十話 言葉が見つからない……

「とてもお綺麗ですよ、サーシャ様」

「ありがとうございます」


 同日の夜、パーティーに出席するために身支度を整えてくれた使用人が、私のことを褒めてくださいました。


 今日はレナード様のお誕生日ということもあり、私がこの屋敷にある多くのドレスの中で、これだと思うものを選びましたの。そのドレスに合わせて、身支度を整えてくださりましたのよ。


「レナード様は、パーティー会場に赴いて、準備をされております」

「わかりました。私もすぐに向かいますわ」


 私は自室を後にすると、部屋の前で待機していた別の使用人に連れられて、屋敷の敷地内にある会場へと向かいます。


「レナード様へのプレゼント、いつ渡しましょう……」


 出来れば今日のうちに渡したいところですが、肝心のレナード様が朝からとても忙しいようで、中々渡す機会がございません。


 プレゼント自体は持ち歩いていますので、渡せそうなタイミングで手早く渡した方が、レナード様の負担にならなさそうですが……。


「出来れば、二人きりの時に渡したいですわ……」


 初めての婚約者のお誕生日なのですから、二人きりで良いムードのところでプレゼントをお渡ししたい……なんて妄想をしながら歩いていると、例の私を良く思っていない使用人達とすれ違いました。


「…………」

「…………」

「ちょ、ちょっと……なにボーっと見てますの?」

「そ、そっちこそ~……」

「あれは仕方がないというか……あまりにも綺麗すぎないか?」

「ば、バケモノのくせに~……なんだか、同じ女として、凄く負けた気分~……」


 今日もヒソヒソと何かお話しているようですが、まあいつものことですね。それよりも、早くレナード様と合流いたしませんと。


「ここから会場まで、少し歩きます。お足元にお気をつけください」

「わかりました」


 屋敷から少しだけ離れた場所にあるパーティー会場への道は、とても綺麗に舗装されているので、外の道よりも危なくはありませんが、油断してたらドレスの裾を踏んづけてしまうかもしれません。気をつけて歩きませんと。


「サーシャー!」

「レナード様?」


 会場へ向かう途中、前からレナード様が息を切らせて走ってきました。


 どうしてレナード様がここにいらっしゃるのでしょう? 会場で色々と準備をしていると聞いていたのですが……。


「どうしてここに? 会場にいらっしゃるとお聞きしてたのですが」

「そろそろ来る頃かなって思って、迎えに来たんだけど……」

「まあ、そうでしたのね。ありがとうございます」

「…………」


 てっきり、レナード様のことですから、私のこの格好を褒めてくださるのかと思って身構えてたのですが、なぜかレナード様は真剣な表情で、私のことをジッと見つめておりました。


「レナード様?」

「…………」

「もしかして、今日の私はレナード様の好みではございませんでしたか……?」

「それは断じてない! くそっ、なんて言えばいいんだ……!」

「…………」


 レナード様に喜んでほしくて、レナード様の一年に一度のお誕生日を少しでも良い日にしたくて、はりきってこのドレスを選んだのですが……。


「ああ、そんな顔をしないでくれ……今日の君は、あまりにも美しすぎて、言葉が出てこないんだ!」

「えっ……? あ、あの……えっ……?」


 私になにかされた時のように、耳まで真っ赤にしたレナード様の言葉に、思わず言葉を詰まらせてしまいました。


「もちろん、普段の君も世界で一番美しい! だが、今日の君はそれを超えるくらい美しくて……俺の貧弱な語彙力では、君の美しさに対しての言葉が出てこないんだ!」


  そ、そうでしたのね……レナード様に気に入ってもらえて良かったですが……そこまで仰られてしまうと、私もなんて言葉を返せばいいか、わからなくなりますわ……。


「その……とりあえず、会場に向かいませんか?」

「あ、ああ……そうだね」


 私達は、どちらからともなく手を繋ぎ、会場へ向かって再び歩き出しました。


 こんなふうに一緒に歩くのなんて、もう何度もしているというのに……胸が高鳴って仕方がありません。て、手汗とか大丈夫でしょうか……?


「レナード様、パーティー後のご予定は、サーシャ様にお伝えしているのですか?」

「あ、そうだった! パーティーの後に、二人きりで少し過ごしたいと思っててね! 疲れているところに申し訳ないんだが、俺のために少し時間をあけておいてくれないか?」

「も、もちろんですわ!」


 ここまで案内してくださった使用人の助け舟のおかげで、何とも言えないムズムズする空気を変えることが出来ましたわ。


 それに、プレゼントを渡す絶好の機会が用意されていることも知れて、本当に良かったですわ。これも、話を切りだしてくれた使用人のおかげですね。


「…………」


 急いでお礼を伝えようとして使用人に視線を移しましたが、それをわかっていたと言わんばかりに、彼女はシーっ……と人差し指を立てながら、ウインクをしておりました。


 どうやら、彼女に気を遣わせてしまったようですわ。あとで改めてお礼を言いませんといけませんね。

 でも今はその前に、せっかく用意してくださった機会を無駄にしないようにしませんとね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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