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第三十七話 想定以上の被害

「はぁ……」


 屋敷に帰ってから三日後。私は一人ぼっちで自室のベッドに寝転がりながら、溜息を漏らしていました。


 溜息の原因は、レナード様です。三日前から、調べものがあると言って、屋敷をずっと留守にしているんです。


 レナード様のことですから、危ないことはしないのはわかってますが……遠出する時は通話石で連絡してくださっていたのに、連絡が来ないのがとても心配ですわ……こっちから連絡しても繋がらないし……。


「はあ、レナード様……早くお帰りになられないでしょうか」

「セレーナ、呼んだかい?」

「呼びました。もう、三日も戻ってこないなんて……って、え? えぇ? か、帰っていらしたのですか?」

「ちょうど今ね。ただいま、サーシャ」

「おかえりなさい、レナード様!」


 一瞬思考がおかしくなったけど、すぐに戻った私は、レナード様に強く抱きつき、その勢いのまま唇を奪ってしまいました。


「さ、サーシャ……三日ぶりのそれは……刺激が……がくっ」

「三日も連絡もしないで心配をかけた罰ですっ!」


 ……なんていいつつも、私は気絶してしまったレナード様を、なんとかベッドの上に寝かせると、私もすぐ隣にゴロンっと寝転んだ。


 三日ぶりの、レナード様の熱、匂い、音……全てが愛おしくて、私に安らぎをくれますの。

 欲を言うなら、毎日一緒にいてくれた方が、嬉しいですけど……それは私のワガママですからね。



 ****



「うぅ……」

「あ、おはようございます」

「ああ、サーシャ……俺は気絶していたのか……思い出したら、また気絶しそうだ……」


 気絶してからさほど時間が経たないうちに、レナード様は無事に目を覚ましました。

 まだ寝ぼけていらっしゃるのか、ボーっとしている顔がなんとも可愛らしいですわ。


「それで、なにを調べてたんですか?」

「調べて……ああ、そうだ! これを見てくれ!」


 レナード様は勢いよく起き上がると、お帰りになられた際に持っていた荷物から、一枚の地図を取り出して、テーブルの上に広げました。


「以前、不調な民が多くいる地域をまとめた地図を見せただろう? あれの瘴気だけのものと思ってくれれば大丈夫だ」

「こうしてみると、想像以上に数が多いですわね……」


 地図には、ギリギリ結界の範囲に入っている町や村を中心に、多くの場所に瘴気が発生しているのを示す印がついています。これを調べるために、家を空けていたのですね。


「こんなに多いなんて……やっぱり結界に問題がありそうですわね」

「俺もそう思う。何とか出来ないのかい?」

「国を囲えるほどの結界は、お城の中にある特別な部屋じゃないと行えません。聖女はそこで毎朝魔法を使いながら祈りを捧げ、結界を維持しているのです」

「それを、ルナが怠っている可能性は?」

「怠れば、そもそも結界が完全に消えているでしょうし、周りの目もありますから、無いとは思いますが……」


 魔法自体は使ってても、適当にやっている可能性も無くはないですが……他の可能性となると、ルナの聖女としての腕が低いことでしょうか?


 うーん、それも考えにくいですわ……元々、ルナは私と同じくらい聖女の適正が高くて、それを見込まれて、メルヴェイ家に養子として迎え入れられたくらいですし。


「原因の究明も大切だが、まずはこの状況について考えよう。サーシャ、君はどうする?」

「そんなの、全ての場所に赴いて、治療をするに決まってますわ!」

「ははっ、そう言うと思ってたよ! よし、そうと決まれば近い所から行こう! もちろん、君が無理をしない程度にな!」

「うっ……わ、わかりましたわ」


 さすがに何度も疲労しているところを見せてしまっているからか、先に釘を刺されてしまいましたわ。


「サーシャなら治療をしに行くと思って、既に外出の準備はしてもらっているんだ。さあ、行こう!」

「えっ、レナード様はまだ帰ってきたばかりじゃありませんか。レナード様こそ、少しは休んだ方が……」

「君があれだけ疲れても頑張っている姿を見てるのに、俺だけ休んでいるわけにはいかないからね」


 私が疲れているからって、レナード様も疲れても問題ないなんてことにはならないと思うのですが……そんなことを思っていると、レナード様に手を優しく握られました。


「……レナード様、少し痩せました?」

「き、気のせいじゃないか?」


 そうでしょうか……? レナード様の手の肉が、なんだか以前に比べて減っているような気がするのですが……私の気のせいでしょうか?

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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