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第三十四話 王の勅命

■ルナ視点■


 あーなるほど、お義姉様かー……確かに正義感の塊のお義姉様なら、無償でやりそう……って、いやいやいや!? お義姉様って生きてたの!? てっきり外の世界で死んでると思ったんだけど!?


「もう一つというのが……結界の範囲が少しずつ狭まり、力が弱まっていることだ。その影響か、瘴気の被害に遭う村や町が増えている」

「なんですって!? それは本当なんですの!?」

「信じがたいが、本当だ」

「結界が狭まるなんて、前代未聞ですわ! 結界の中に瘴気が発生するのも、そこの聖女が、結界の維持を適当にやっているのではなくて!?」


 ……ちょっと待って。その言い方って、まるでわたしのせいで今回の事件が起きてるように聞こえるんだけど? さすがに聞き捨てならない。確かにわたしは結界魔法が苦手だけど、毎日しっかりやってるんだからね?


「は? おばさん、適当なことを言わないでもらえる? こっちは毎日ちゃんと仕事をしてるけど?」

「な、な、な……なんて口の利き方を……一体、どんな教育を受けてきましたの!?」

「教育とか、そんなのどうでもいいから。いつもは偉そうにふんぞり返ってて、なにかあったらヒステリックを起こして喚き散らしてる無能に、そんなことを言われたくないって言ってるんだよ」


 おっと、わたしったら……つい汚い言葉が出ちゃった。イラっとすると、昔の癖で汚い言葉が出ちゃうんだよね。あ、もちろんわたしが悪いだなんて思ってないから、謝るつもりは一切無いよ。


「ルナ、落ち着きなさい」

「お義父様は、わたしの味方をしてくれないのですか!?」

「もちろん私は、常にルナの味方だ。だが、今は国王陛下の御前であることを、忘れていないか?」

「……はい。大変失礼いたしました」

「ふんっ!」


 ちょっと、わたしが譲歩して謝ったってのに、なんであんたは不満そうに鼻を鳴らしてるわけ? 納得いかないんだけど。


 ……いつか必ず仕返ししてやるんだから、覚悟しておきなさい。


「このことが民に知られたら、反乱を起こす可能性もある……ルナよ、日頃の聖女の仕事ぶりを疑うつもりは無いが、明日からはより一層励んでもらいたい」

「もちろんです、お義父様! 結界魔法はちょっぴり苦手ですけど、頑張りますわ! そのかわりと言ってはなんですが……わたし、もっとお小遣いが欲しいんですけどぉ」

「まだ欲しいのか。仕方がない、他ならぬ愛娘の頼みだからな」

「やった~! ありがとうございます、お義父様!」


 ラッキー! 思わぬところでお小遣いの上乗せが出来ちゃった! あの厚化粧ババアのせいでイライラしたけど、お義父様の寛大な心のおかげで、イライラが消えてくれたよ!


「国王陛下からは、この件について、なにかございますでしょうか?」

「うむ……もしこのまま事態が改善しなかった場合、サーシャがどこからか嗅ぎ付けて、事態を収めるだろう。サーシャという女は、そういう人間だ」


 それならそれで、わたしの仕事が減って良いんだけどね。国王陛下の口ぶりからして、あまり良くないことなんだろうなぁ。


「サーシャに救われた民は、サーシャに感謝をするだろう。同時に、いつまでたっても身分の低い自分達を助けてくれない余達に、不満を抱くだろう。それこそ、ヴァランタンが言っていたように、反乱を起こす民がいるかもしれん」

「それは大変ではありませんか! そうだ、サーシャを始末してしまえばよいのではありませんか!?」

「それについてだが、奴が今いる所が……クラージュ家なのだ。そして、傍についているのは……レナード・クラージュ」


 レナードという名前が出た瞬間、会議室が異様な空気に包まれた。


「例の生き残りか……だから早く始末をしろとあれほど……!!」

「それに関しては、あの時に捕獲できなかったワタクシたちにも責任がございますわ。それにしても、大魔女アレクシアの弟子、ジェラールの子供が近くにいるのは面倒ですわね。下手に手を出したら、クラージュ家と全面戦争になりかねません」


 なんか、面倒なところがあるのだろうか。わたしにはよくわからないな。たかが家一個くらい、国の全勢力をつぎ込めば、簡単に押しつぶせそうだけど。


「ふむ……反乱を未然に防ぐために、余からルナに命ずる。普段の聖女の任とは別に、現地に赴いて事態の収拾にあたれ」

「わ、わたしがですか!?」

「他に誰がいる? 言っておくが、今回の件はルナの力不足によって起こった可能性もゼロではないというのは、わかっておるのか?」


 いや、そんなの知らないし。わたしは苦手なりに、毎日一生懸命やってるっての! わたしのせいだって言いたいなら、その証拠を持ってきなさいよね!


「……くすっ。天下の聖女様なんだから、それくらい出来ますわよねぇ? ワタクシ、たくさん応援して差し上げますわ~!」

「っ……!!」


 こいつ、煽る天才か何かなの!? 絶対いつか泣かせてやる……いまのうちに笑ってればいいよ。


「では、次の議題に移る。その前に……ルナ、もうそなたが必要な議題は終わったから、部屋に戻っておれ」

「はい、国王陛下。では失礼しますわ」


 わたしは、こいつらの前でお辞儀をしてから、例の厚化粧ババアをチラッと見ると、見下しと蔑みが混ざっているような、汚い笑みを浮かべていた。


「くそっ、イライラする……!!」


 部屋を出たわたしは、親指の爪を噛みながら、自室へと戻っていく。


 こういうストレスは、教会にいる時はお義姉様をいじめて発散してたんだけど、今はいないから……欲しいものを爆買いするしかない! そうと決まれば、前に貰ったお小遣いを持って、早く行かなくちゃ!


 ……え、聖女の仕事? こんなイライラしてたら出来るわけないじゃん!

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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