そらをいくゆめ
てぃんくーてぃんくーりとーすたー はーあーわんだーわっちゅーあ~♪
れいちゃんはお歌が大好き。
踊るのも大好き。
今日保育園で教えてもらったばかりのお歌を、みんなとやった手振りも交えて、早速おばあちゃんに聞かせてあげています。
おばあちゃんは手を叩いて褒めてくれましたが、れいちゃんは窓からどこか高いところを見上げて、なんだかちょっと気に入らないみたいです。
どうしたの、とおばあちゃんが声をかけても、振り向いてくれません。
「おほしさま、いない……」
おばあちゃんも一緒にお星さまを探してくれましたが、やっぱりどこにもいません。
「くらいよるになればおほしさまいるって、せんせいいってたのに……」
今日の楽しみだったのにお星さまがどこにもいなくて、つまらなくなったれいちゃんはほっぺをぷーっと膨らませてしまいました。
そんなれいちゃんの頭を、おばあちゃんは優しく撫でてくれます。
ゆっくり、何度も撫でられるのがあったかくて、やっとれいちゃんは元のぷにぷにほっぺに戻ってくれました。
それからおばあちゃんは、れいちゃんにお話を聞かせてくれました。
「人の灯りが明るすぎて、お星さまはお空から追い出されてしまったのじゃ」
「ひとのあかり?」
「そう、これじゃよ」
おばあちゃんはれいちゃんを後ろに向かせて、天井の照明を指差しました。
「でんきのこと?」
そうじゃ、と答えたおばあちゃんは、もう一度れいちゃんを窓の方へと向かせました。
「あっちの家にも向こうの家にも、たくさんあるじゃろう?」
「うん」
「人は灯りをたくさん点けて獣を追い払い、家をたくさん作ってきたのじゃ」
「うん。おうち、たくさんある」
「そうしてもっとたくさんになった灯りがお空まで届いて、今度はお空からお星さまを追い出してしまったのじゃ」
追い出されたと聞いておかあさんに怒られた時を思い出したれいちゃんは、悲しくなってきてしまいました。
「お星さまを追い出して、人は今度は空に征くのかもしれんのう……」
おばあちゃんもちょっと悲しそうに、お空を見上げました。
「おそらにいけるの?」
お空に行けると聞いて悲しいのはどこへやら、れいちゃんはいっぺんに元気になりました。
「れいちゃんもいけるの? どうすればいけるの?」
聞かれて考えこんでしまったおばあちゃんに、れいちゃんはねえねえと腕を引っ張って揺さぶりました。
「そうじゃなあ……、お空に行くにはたくさんの人が一緒にがんばらないといけないじゃろうな」
「たくさんってどれくらい? ほいくえんのみんな?」
「いいや、もっとたくさんじゃ。よその国の人とも一緒でなければならんじゃろう」
「よそのくに?」
「そうじゃ。髪の色、目の色、顔の色が違う人、テレビで見たことがあるじゃろう?」
今度はれいちゃんがちょっと考えてしまいましたが、おばあちゃんはれいちゃんを引っ張ったりしないで待っていてくれました。
れいちゃんがあると答えると、おばあちゃんはよく覚えていた、いい子だとまた褒めてくれて、れいちゃんは嬉しくなって笑いました。
「そういう人たちと一緒にがんばるためには、まず英語が必要じゃろうな」
「えいご?」
「そういう人たちにもわかってもらえる言葉じゃ」
「いまのおうたもえいごって、せんせいいってた」
「そうじゃ。だからそのお歌はよその国の子たちとも一緒に歌えるのじゃよ」
「そしたられいちゃんもおそらにいける?」
「がんばればきっと、な」
嬉しくなったれいちゃんは、またお空に向かってお歌を歌いました。
おばあちゃんもれいちゃんから手振りを教えてもらって、二人で楽しく歌いました。
満足したれいちゃんはおねむになって、おばあちゃんに手を引かれてお布団に入りました。
あったかいお布団の中にいたはずなのに、いつの間にかれいちゃんは高いお空にいました。
頭の上はまっくらなのに、足の下にはお家の窓から漏れてくる光がたくさんあって、おかしな感じです。
でもそのおかげでみんなが一緒なのが見えます。
保育園のみんなだけじゃなくて、おばあちゃんが言っていた色が違う子たちも、高いところや低いところにたくさんいました。
れいちゃんが英語のお歌を歌うと、みんなも一緒になって歌ってくれました。
するとまっくらだった頭の上に点々と、白や黄色、赤や青白い光がたくさんつきました。
「おほしさまだ!」
みんな嬉しくなって、大きな声で笑いながらずっと楽しく歌っていました。
てぃんくーてぃんくーりとーすたー はーあーわんだーわっちゅーあ~♪