自分がぐっさんだと思っている追放勇者のキンタマを握り潰す話
「捧げるぅ!!」
ある日、俺のパーティのリーダーがいきなり俺を指さして変なことを叫んだ。
「どしたん?うんこしたいの?」
「捧げっちゅ!捧げマックス!捧げチャイナタウン!」
「捧げるって何を?誰に?」
「ああ!?捧げると言えば、ぐっさんに決まってるだろ!俺の元ネタのぐっさんだよ!」
…あー、ぐっさんか。あの国民的ダークファンタジーのラスボス(予定)のぐっさんのモノマネをしてたのか。
「ごめん、リーダー。似て無さすぎて、ぐっさんだと気付かなかったわ。んで、何でぐっさんのモノマネをしてるん?」
「決まってるだろう!俺達の居るこのハイファンタジーが日間一位に返り咲く為だ!」
「ふむ」
「異世界恋愛、というか婚約破棄物に日間ランキングを奪われてはや5年。俺達追放ざまぁと、あいつら婚約破棄ざまぁの何が違うかを研究した結果、スピード感が原因だと俺は思った」
確かに、婚約破棄物は早い場合は婚約破棄の現場でざまぁがされている。いや、場合によっては婚約破棄前にざまぁが完成しているのもある。
「それでだ、俺はあいつらのスピードに追いつく方法は無いかと色々考えた結果、俺のルーツであるぐっさんの『捧げる』に辿り着いた!追放イベントと魔族化イベントを同時にこなす事で確実にスピードアップ、更にお前にも復讐という明確な動機が生まれる一石三鳥の名案だ!」
「成歩堂、そういう事だったのか」
「そういう事だ!分かったら、婚約破棄打倒の為に捧げられてくれ!そして、近くの森でお腹すかせたフェンリル助けろ!」
「悪いがそれは無理だ」
「何でえ?」
何でえ?と言われても理由が多すぎる。『捧げる』は『捧』を発音しちゃ駄目だとか、なろうでも明確すぎるパクりは不味いだろとか、捧げる相手である超越者がこの場にいないとイベントが成立しないとか、本家で単行本十数巻使った重厚なイベントを時短に使うなとか、ぐっさんがなったのは魔族というより天使だとか言いたい事は山程ある。
しかし、上記の理由を言ってもリーダーはアホなので絶対理解しないだろう。だから俺は、リーダーの頭でも分かる理由を突きつける事にした。
「あのさ、リーダーは自分の事をぐっさんの劣化版と思ってるみたいだけど、まずそれが間違っているんだよ」
「ええっ、俺はジェネリックぐっさんじゃなかったのか?だって、俺は追放するし魔族化するし、顔だけが取り柄のクズだぞ!ぐっさんの条件コンプリートしてるじゃねえか!」
「それじゃあ、ここからはリーダーとぐっさんの違いについてじっくり解説するから」
俺はいそいそとリボンを取り出して頭に付けると、三角帽子をリーダーに渡す。
「リーダー、これ被って」
「え?何で?」
「早く被って!被ったら画面の左側に立って!」
「左ってどっち?」
「俺の反対側!はい、これ台本!幕が上がったら俺が最初に喋るから、台本を読んでいって!」
「は、はい」
よし、導入部分の目安である千文字前後になんとか収まった。読者の皆様お待たせしました。間もなく本編が始まります。
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GO!
【じっくり解説劇場:追放してざまぁされる勇者の元ネタって誰?の巻】
ミコ「読者の皆様こんにちは!じっくり解説劇場へようこそ!この作品では主になろうテンプレの元ネタについて色々解説やツッコミをしていく予定です。申し遅れました、私は解説役の右野ミコです」
リサ「き、聞き役の左文字リサなんだぜ」
ミコ「今回は追放勇者の元ネタについて解説するわ。リサは追放勇者の元ネタって誰だか知ってる?」
リサ「俺の、じゃなくって、え、えっと追放勇者さんの元ネタ?ぐっさんじゃないのか?」
ミコ「どうやら違うっぽいのよ!元ネタが誰かを言う前に、まずはぐっさんと追放勇者の違いを証明していくわ」
『根拠1.ぐっさんと違い、追放勇者はイケメンじゃない』
リサ「待てや!」
ミコ「あら、どうしたの?」
リサ「追放勇者はイケメンなんだぜ!顔だけは良いというのが共通認識なんだぜ!」
ミコ「建前上はそうね。でも、この書籍化作品を見てよ。イラストに書かれているのは誰?」
リサ「こっちの作品はヒロインと主人公、これもヒロインと主人公。追放勇者は全然イラスト化されてないのぜ」
ミコ「でしょ?たまに描かれても蟹座の黄金聖闘士みたいなチンピラ顔、それが追放勇者よ。並よりはマシな顔かも知れないけど、ヒロインや主人公より明確にルックスは下。少なくとも、作品のヴリになれるレベルに達していないわ。一方でぐっさんはどうかしら?」
リサ「ぐっさんは作品内ダントツのイケメンに描かれてるぜ」
ミコ「そう、追放勇者とぐっさんじゃあ、顔面偏差値がまるで違うのよ!顔が(普通より)いいだけのクズと顔が(誰よりも)いいだけのクズ、この二つはとても同じとは言えないわ」
『根拠2.追放された側の受け取り方の差』
ミコ「2つ目は追放された側の受け取り方の差よ。リサ、ぐっさんに追放された主人公はどうなったかしら?」
リサ「追放後の小笠原は肉体改造して新たな仲間と旅しながら打倒ぐっさんに燃え続けているぜ」
ミコ「そう、途中のイベントはあくまでサブで、ぐっさんを倒すのがゴールで一貫してるわ。じゃあ、追放されたナローシユの場合はどうかしら?」
リサ「つまり、お前が俺の事をどう思ってるかだよな。えーと」
グシャァ!
ミコ「リサ、私達は解説美少女コンビ。追放作品の主人公とざまぁキャラとは無関係よ」
リサ「ハイ、スミマセンデシタ。私達は美少女なんだぜ。だから、キンタマから手を離して欲しいんだぜ」
ミコ「改めて聞くわ。主人公から見た追放勇者って何?」
リサ「追放されてから直ぐに美少女との新たな人生に夢中になって忘れ去られるのが平均なんだぜ。つまり、この点でもぐっさんと追放勇者は違い過ぎるのぜ」
『根拠3.追放後の軌道』
ミコ「最後は追放劇の後の人生ね。ぐっさんは小笠原を追放した後どうなったかしら?」
リサ「潰れたダイエーホークスをモデルとし、ソフトバンクホークスを立ち上げ監督就任。リーグ優勝を果たしたぜ。後戻り出来ない破滅の道を進んでる気はするけど、表面上は上手く行ってるのぜ」
ミコ「それに比べて追放勇者は酷いものよ。追放後ほぼ百パーセント仕事を失敗し、主人公に戻ってこいと泣きつき人生転落し続けて底なしの不幸に嵌っていくわ」
リサ「何で追放前は成功者だったのか分からないレベルの無能なのぜ。ぶっちゃけ、追放勇者って主人公と組んだ状態でも成り上がれる気がしないんだぜ…」
『じゃあ追放勇者の元ネタって?』
ミコ「これで分かったでしょ?ぐっさんと追放勇者は全くの別物なのよ」
リサ「じ、じゃあ結局追放勇者のルーツはどこなのぜ?」
ミコ「それは…糞同人む」
リサ「待て」ミコ「それは今から22年前、なろう読者が新卒就職に失敗した就職氷河期世代!」リサ「読者を敵に回すな」ミコ「なろう読者が初めてインターネットで触れたであろうざまぁ物、それがアスキーアートの虐」リサ「ノクターンでやれ」ミコ「そこで産まれたテンプレ、それは生活力が無いアフォが自分がこの世界の主人公であるとほざき孤立し滅びていく、正に追放勇者ざまぁと同じ流れ、否、勇者もビンクも領主も妹も王子もこの流れは一緒」リサ「読者と作者の古傷えぐるの辞めてください」ミコ「違いがあるとすれば、ウンコを食うか食わないかぐらい」リサ「ノクターンでもやるな」ミコ「私はなろうのざまぁ物を見て真っ先にあのスレを思い出した。そして、お前ら二十年前から変わってねえなーと」リサ「ミコー!文字数!三千字越えたよ!」
しまった。なろう読者は三千字を超える短編はほとんど読まない。残念ながらこの話はここまでだ。俺はリボンを取り、この話のオチを付ける事にした。
「…とまあ、そんな感じでリーダーのキャラじゃないんだよ『捧げる』とかは」
「分かったのぜ!ぐっさんのマネは辞めて、他の方法で異世界恋愛をぶっ倒してやるのぜ!」
「リーダー、もうその喋り方はいいって。ほら、帽子返して」
リーダーは帽子を深く被り、イヤイヤと首を横に振る。
「リーダー?」
「気に入ったんだぜ!取っちゃやだぜ!」
「リーダー…」
こうしてリーダーが新たな性に目覚めた事により、パーティの男女比は2:2から1:3になった。唯一の男となった俺は、ハーレムパーティの新リーダーの座に収まり、それに伴いやる気に満ち溢れ支援以外の仕事も率先して行う様になり、懸念材料だったパーティ仲も修復された。
「幼馴染、ビッチ、リサ、なんかいい感じのストリームアタックを仕掛けるぞ!」
「うん!」
「おっけ!」
「ぜ!」
待っていろ異世界恋愛!俺達ハイファンタジーは、俺達のやり方で一位を取り返して見せる!この物語がハイファンタジーの復活に繋がると信じて俺達は戦い続ける!
フェンリルは餓死しました。