6話 お土産?
ガイアス父さんが帰ってくる日の朝。
俺はぐっすり眠っていた。
朝食の時間にサラに起こされ、渋々朝食を食べるために動いた。ここで駄々をこねるとライラ母さんから大目玉を食らうことになることは何回も経験済みだ。
朝食を食べ終わったら、すぐに自分の部屋に戻った。エル兄さんとセレナ姉さんは剣の稽古をするらしい。俺はまだ四歳なのでやらない。というかやりたくない。
というわけで寝ていたのである。前世の時は寝るのがそれほど好きというわけではなかった。けれども、赤ちゃんの時に寝ることのすばらしさを知ってしまったのである。赤ちゃんの時に転生させた神様が悪いのだ。俺は悪くない。
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やがて時間がたち俺はセーラに起こされた。
「レイフォード様、レイフォード様、起きてください。ガイアス様がお帰りになられますよ~」
「ああ、すぐに行くからちょっと寝かせて」
と言いつつ俺は布団に潜り込む。
「何言ってるんですか~ さっさと起きましょうね~ もう四時ですよ~ いつまで寝るつもりですか~」
なぜだ!寝る子は育つというではないか。寝ることは当然の権利であろう!
俺は屈しない。決っっして屈しないぞーーーー
「ライラ様がさっさと起きないと怒るからねと言ってましたが、しょうがありませんね~」
「いや、さっさと言ってよそれ!!!」
固い決意はすぐにセーラの言った言葉に打ち砕かれた。こればっかりはしょうがない。ライラ母さんを怒らせてはいけない。ライラ母さんは怖すぎる。流石の俺でもちびってしまう。
急いで着替えてライラ母さんのいるところまで電光石火で向かった。
屋敷の門の前まで行くと馬車が向こうに見えた。
「あら、レイ、思っていたよりか早かったわね」
「いえいえ。いつも通りですよ。ご機嫌麗しゅう。母様」
「レイはいつも寝てばかりね。もっと体を動かしなさいよ」
「嫌だ。セレナ姉さんと違って体力バカじゃないんでね」
「なんかいった?」
「いいえ。何にも」
セレナ姉さんも機嫌を損ねるとヤバい。さっきなんかヤクザ顔負けのオーラが出ていた。
「ほらほら。ガイアス父さんが帰ってきたよ」
さっきまでは豆粒くらいの小ささだった馬車が今では門の前まで来ている。馬車が止まり、ガイアス父さんが出てきた。
「ただいま。ライラ、エルディス、セレナ、レイ」
「「「おかえりなさい」」」
よし。これでまた寝ることができるぞ。自分の部屋に向け足を踏み出そうとした時。
「ちょっと聞いてほしいことがあるんだ。レイもちょっと待って」
なに。ガイアス父さんまで俺の崇高な睡眠の邪魔をするというのか。
「何も相談しないで決めてしまってすまない。弟の娘さんを引き取ることになった」
「じゃあ、私たちの妹になるの? それとも姉?」
「セレナから見たら妹だね。歳はレイと同じだ。一応、レイのほうが年上になるのかな」
「あらあら、すっごいお土産ね。よかったじゃない。セレナ」
おやおや。お土産の範疇を超えてる気がするのは俺だけですか?
「出ておいで」
すると馬車の中からつややかな銀髪の少女が下りてきた。その銀髪は腰まで伸びている。瞳は透き通った碧眼だが、その瞳の輝きは失われている。おそらくは親を亡くしてしまったショックであろう。
「…………」
「この子はソフィアという名前だ」
「そしたら、まずは自己紹介からしましょうか。まずは私からね。これからあなたの母親になるライラ=アルケイドです。よろしくね、ソフィアちゃん」
「エルディスです」
「セレナっていうわ」
「レイフォードです。っていうか家の中に入ろーよー」
「それもそうだね。中で話そうか」
よし! 寝れるぞ。
レイフォードを筆頭に玄関を通り居間まで歩いて行く。その途中途中でライラ母さんがソフィアに話しかけていた。しかしソフィアは声を出そうとはしなかった。セレナ姉さんもまだ新しい家族となったソフィアとの距離を測りかねているようだ。
そうこうしている間に居間についた。ついにこっから長い話が始まるのだろう。だが、俺にはプランαがある。
「僕ちょっとトイレ!」
「レイ、素直に戻ってくるんだよ」
とエルディス兄さん。
「レイ、そのまま寝ないでね」
とガイアス父さん。
「やだなぁ……俺が戻ってこないことなんてあった?」
「「「「あった!!」」」」
あれ? そんなに使ってたかなぁ。完璧なプランなはずなのにどうして疑われるんだ? 某アニメでは何回使われても大丈夫だったのに…… と思いつつ寝室に向かって歩いていった。
ーーーーーー
次の日の朝、いつも通りに朝食を食べるため、居間まで下りて行った。
「いっただっきまーす」
今日の朝食もおいしそうだ。
「レイ、昨日あったこと覚えてるの?」
「そりゃあ。セレナ姉さんよりかは覚えてるよ」
流石に馬鹿にしないでくれ。昨日のことぐらいは覚えてるに決まってるよ。それよりかどうしてみんなは俺を呆れたような目で見ているんだ? 朝食が食べずらいではないか。
「昨日、トイレに行ってくるといったまま帰ってこなかったアホに言われたくはないわね」
そういえばそうだったか……
「というわけでねレイ。昨日みんなで話し合って今日の午後の間、ソフィアちゃんのお世話係に任命するわ」
ライラ母さんが昨日のことで怒ってこないのはそういうことか。
「お世話って何すればいいの?」
「あら。珍しく素直ね。簡単にいえば一緒に遊べばいいのよ」
「いや、拒否できないでしょ」
「森の奥には行っちゃだめよ。あとそんなに遠いところもだめだから。午後から行ってらっしゃい」
あ…… ごまかしてる。
「じゃあ午前は?」
「家族会議よ」
「「「?」」」
エルディス兄さんとセレナ姉さんも初耳みたいだ。ソフィアの反応は読み取りずらいな。
「そんな難しい顔をしなくていいわよ。ちょっと意見を聞かせてほしいの」
朝食を食べ終わりサラに紅茶をいれてもらい優雅なひと時を過ごし、本当にひと時だなぁと物思いにふけっていた。
「家族会議を始めるわよ」
皆はテーブルにつき、俺はテーブルの上に肘をつき、手を顔の前で組み手で頭を支えた。そう、これこそは一度やったことがあるだろう重要な会議をするときの体勢だ。もちろんエ〇ァンゲリオン信者ならわかるだろう。
「なんかレイがやってる体勢は雰囲気がすごいね」
「さすがエル兄! わかってるね」
「何馬鹿なことやってんのよ。どうせその体勢もつらいんだからやめなさいよ」
まあ、実際その通りなんでやめるけどね。
「ガイアス父さんは?」
「業務に追われているわ」
そうか。何日も王都にいたもんね。
「それよりか会議内容は何よ?」
「ソフィアちゃんが言葉を話してくれないの……」
うん。ガイアス父さんがいないから深刻な話ではないなと思っていたらそのことか。
「っていうかあれから一言も話してないの!?」
「そうなのよ。うなずいたりしてはくれるんだけどもねぇ……」
失声症かなぁ。親が死んでしまって心的外傷などによる心因性の原因になってしまったのか? こればっかりは時間がどうにかしてくれるのを願うばかりだが……
「「難しいね」」
「やっぱりどうしたらいいかわからないのよね」
「たぶん…… 親が亡くなってしまったからそうなってしまったのかしらね」
「こればっかりは仕方がないと思うよ。時間がどうにかしてくれるよ」
「本当? 何かできることがあるといいけどね。母さん」
「エルディスの言うとおりね。何かできることはないかしら…………」
俺は心理カウンセラーでもないからな。知識はあってもそこまでは…… うん。どうしようもない。めんどくさいし考えるのやめよ。
「きっとどうにかなるよ。こういう時は寝よう!」
「いや、寝るんじゃないわよ!!」
さすがセレナ姉さん。切れのいいツッコミだ。芸人の才能あるかもしれないな。
やがてお昼の時間になり家族会議が終わった。結果的に誰も妙案を思いつかずに午前中が終了した。
午後からはソフィアのお世話かぁ…… 何しよう…… と無気力状態でお昼を食べているレイフォードだった。いや、正確にはいつも通り無気力状態のレイフォードであった。
更新が遅くなってしまい申し訳ないです……
一応、毎週更新はしたいと思っているのですが難しいですね……
次回のタイトルは「(アメリカ)じゃない。(イタリア)だ」です。(国名)には食べ物が入ります。さて何の食べ物でしょう。