Lv8
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『チハヤ』
「・・・」
『起きなさい、チハヤ』
「・・・ぅうん。。。」
『朝よ、学校遅れるわよ』
窓から朝日が差し込んでいる。
昨日の夜はゲームのキリがなかなかつかなくて夜更かししたからまだ目が開かない。
それでも、母親というのは根気強く起こしてくれるものだ。
小学生ながらにそんなことをふと思ってしまう。
あぁ、夢か。
子供のころの夢なんて、見るのは初めてじゃないか。
とりあえず、子供らしくぐずってみても悪くないだろう?
暖かいベッドの中で布団を頭からかぶりなおしてみる。
「あと少しだけ。。。」
『また遅くまでゲームしてたのね。駄目よ、さっさと起きて顔洗ってらっしゃい』
「うぅん。。。母さん、眠いよ」
『早くしないとたいへんよ』
「ダイジョブだって、急いで準備するから。。。」
『だって、早くしないとチハヤ、、、』
『燃えてるのよ?』
「え?」
ゴアァァァァッッッッ
「うわあぁぁっっ!!!!!!」
暖かいベッドはいつの間にか無くなってて、俺は黒い炎に包まれた。
「ぅあっ、、、ぐ、、ぐぁ、、、、」
炎の熱で息ができない。
前も見えずただその場でもがくことしかできない。
『あらあら、だから言ったじゃない♪』
母さんの声がした方からしたその声は、焼かれながらもなぜかハッキリと耳に届いた。
あの女の神の声によく似ている。
あれ?どっちが夢だ??
などと考えるよ暇は今の俺にはなかった。
必死に目を開けてみると。
『ひっひっひ、おはよう♪』
リッチ-の顔のガイコツがアルテミスの声で挨拶をした。
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「うあぁぁっっ!!!」
思わず飛び起きた。
知らない部屋...木と石造りの内装はまるで見たことのない景色だ。
朝日が差み小鳥が鳴いている。
「はぁ、、、はぁ、、、」
心臓がバクバクいってるのがハッキリ聞こえる。
汗がハンパない。
(いやにリアルな夢?...だった)
ベッドの脇、テーブルの上に洗面器とタオルが見えた。
誰かが介抱してくれたようだ。
その程度の現状把握はできた。
(俺は...あの時炎で焼かれた、、、よな?)
必死に記憶を探りつつ汗を拭くために目に入ったタオルに手を伸ばしてみる。
が、なかなか届かない。
(まだ感覚が、、、)
手を伸ばしてもタオルが遠い。
(けっこうダメージ受けてるのか。あんな非現実的な、って今もそんな世界にいるみたいだが...)
しかたなくまだ気怠い感はあるが足をベッドの外に出し降りようとした。
(ん?意外と高いな)
この世界の住人はデカいのか?等と思いながら少し飛ぶようにベッドから降りタオルに手を伸ばした。
(背伸びしなきゃ届かないとは。。。)
なんとかタオルを掴み取り顔や首、服の中を拭く。
(......まさかな)
とは思いながらも自分の体の変化には気づかざるを得ない。
また心臓がドクドクしてきたが、とりあえず気持ちを落ち着けてシャツを脱ぎ汗を拭こうとする。
が、、、
「あれ?」
思わず声が出た。
シャツを脱ごうと頭の高さまで捲り上げたが何かに引っかかる。
(頭になにかついて、、、)
なんとなく予感はした。
頭に引っかかるそれは、まるで以前からあったというように自然に頭についていたから。
意を決して頭のそれに触ってみる。
(......角......?)
「まじかぁぁっっ!?」
予感は外れてはくれなかったようだ。
そしておもむろに部屋のドアが開いた。
「お、起きたなクソガキ」
部屋に入ってきた女性を見上げた俺は気の強そうな赤い髪をした美人の赤い瞳と目が合う。
「やっぱりかぁぁぁぁ!!!」
ああ、これも予想はできてたさ。
なんせ30年以上も付き合ってきた体だからな。
周りの家具や人がデカいんじゃない。
テーブルに届かない短い腕、小さな手。
ベッドから床に足がつかない短い足。
ファンタジー舐めてたよ。
「俺が子供になったんだ......」