Lv4
「神様ってのは随分と身勝手なんだな」
目の前の不快な神々への苛立ちから自然に言葉が出てきた。敬語を使うのも忘れているが、さして問題でもないだろう。
「あら〜、何か気に障ったのかしら?貴方、なかなか好みの顔してるわね。この世界の人と顔立ちが少し違うというか...でも、怒った顔も素敵よ♪」
「なになにー?そいつ怒らせちゃったわけ?てか、なんなのそいつ??」
「ひっひっひ、身の程もわきまえないヒトの分際で頭が高い、神の御前であろう」
ガイコツの神、リッチーが前に差し出した骨の指先がピッと光る。
(っ!?……か、からだが?)
魔法なのだろうか、俺の身体が指先一つ動かせない金縛りにおちいった。なんとか目線は動かせるものの、声を出すのもままならない。
「大人しうしとれ。すぐに塵に変えても良いが、この様な場面に巡り会えた幸運を評して特等席で竜の最期のショーを見せてやろう。ひひひ、光栄じゃろう」
他の神も滑稽なものを見るようにニヤニヤしている。
『おのれらの相手は我であろう!?サッサとかかってこんか、一柱では何もできないこの腰抜けどもが!神相手に意見するそこのヒトの小僧の方がよっぽど度胸があるでは、、、』
ドゴォッッ!!
竜が挑発するような事を神々へ言い始めていたが遮るように湖底で爆発音がした。目線だけ動かして湖の底を見てみる。
(な、、、マジか…)
黒光りする頑強そうな鱗に覆われた胴体が、弾けて無くなっていた。そのあとには強い光を放つ煌びやかな剣が湖底に刺さっている。
『ーーーーーーーーっ!?!!!』
竜は声無き叫びをあげる。
「・・・下賎なヒト如きと我等を比べるとは、許しがたいな」
声のする方を見ると、我関せずを貫いていたアーサーが右手を前に出していた。そして、湖底に刺さっていた剣が浮かび上がりアーサーの手に収まる。同時に、立っているその横に淡い青白い光の柱が現れる。
「汝らももう良いだろう?興が削がれた。行くぞ。リッチー、竜のあとはそこの目障りな生き物も消しておけ」
「ひっひっ、もちろんじゃとも」
そう言い残してアーサーは光の柱の中に進むと姿を消した。
(こいつが、、、やったのか。お、おい!おい竜!大丈夫か!?)
『・・・』
(返事が、ない……まさか死んだ、のか?)
「あらあら、アーサー怒らせちゃったら怖いのよね〜。そこのヒトの坊やも残念だわ。でも、仕方ないわね♪バイバーイ」
ドゴォッッ!
『・・・』
アルテミスが陽気な笑顔と共に手を振ると再び爆発が起こる。矢が刺さっていた竜の翼が無くなっていた。フッと矢が消えアルテミスも光の柱に消えていく。
「アーサーっちは大のヒト嫌いだからな〜、しゃーないっしょ」
ドゴォッッ!
続いて槍の刺さった尾の部分も爆発し、槍と共にオーディンも消えていった。
(お、おい。おい!お前、竜の真祖なんだろ?これで死んじゃうのか!?)
湖の底には残りはもう右目に杖が刺さった竜の顔だけ。俺は心の中で強く叫んだ。
『……小僧、よく聞け』
(お前っ!?生きて、、、)
『無駄話してる時間は無い。お主は平和が好きか?』
(な、何聞いてんだよこんな時に、、、)
『我はな、どんな種族も争いが絶えることはないがいつの時代にも訪れる束の間の平和というのが好きであった。と言っても、最初はそうは思わなんだが……あいつが、我が弟が教えてくれたのよ、日向ぼっこの良さをの』
(弟……というか、無駄話してるのお前だろ)
「ひっひっひ、さて。お祈りは済んだかの?まぁ神の御前じゃから何の問題もあるまい」
リッチーが骨だけの顔にも関わらずニンマリといやらしい笑みを浮かべて俺たちにトドメを刺しに来る。
『くくく、威勢の良いヒトの子よ。小僧、生きたいか?』
(当たり前だ)
そう言った瞬間、杖が刺さったままの竜の目がカッと見開きその恐欄な口が開かれた。空間が歪んで見える程の強大な力が竜の口に集まっていくのを感じる。
ゴォァァッッ!!!
竜の口から黒い炎が吐かれた。
まさに業火と呼べる凄まじい勢いの炎が湖から立ち昇る。黒炎はそのまま勢いを止めずリッチーに向かっていった。
「ひっひっひ、最後の悪あがきか」
リッチーは直撃寸前で一瞬姿を消し真横に現れた。瞬間移動、というやつか?
「いやぁ惜しかったのぉ実に惜しい」
不敵な笑いを浮かべるガイコツ。
だが、かわしたはずの黒炎は弧を描きこちらに向かって来る。
「ひっひっ、無駄なことよ、、、ん?」
ブーメランのように追尾して来るかと身構えていたリッチーをまるで無視して、黒炎は俺に向かってきた。
『ならば受け取れ小僧、そして生き抜いてみよ!我が名はバラン!我が真祖たる所以、原始の黒炎を!!』
(、、、え?)
ゴウッッ!
「うわぁぁぁっ!!!」
俺は黒い火柱に包まれた。