Lv19
「王の間に居た双子の姫様は、その昔話の姫様と関係があるのか?」
「さあな、あまりに似過ぎているので家臣たちの間では『最強と最恐の再来』とか噂されて居たが、国王がそんな与太話はと睨みを効かせてからは城内で話はでない」
「確かにあの溺愛っぷりだもんな。でも、なぜそんな話を?」
「この国の今はそんな昔話のときと状況が似ているのさ。民は飢え、王族が私腹を肥やしてる。もっとも、一番喜んでいるのは姫様たちだろうがな」
「なるほど…でも、そんな話を俺たちにしてもいいのか?一応兵士隊長なんだろ?」
「関係ないさ。どうせあんた達に話しても何も変わりゃしないし国王と姫様達以外は皆そう思ってる。ただね、あんた達がさっきあいつらにメシを与えようとしたろ?そんなんじゃ誰も救えないってことを言いたかっただけだよ」
そう言ってナナは外壁の外へ歩き出した。
(ねえチハヤ、今の話なんか…)ヒソヒソ
(ああ。まるで現状を何とかしたいみたいな風にも聞こえたな)ヒソヒソ
今のところはまだ何もわからない。ただ、この国の背景にはそういう歴史もあると頭に入れておこうと思った。
–––––平野–––––
「あっ!」
山に向かい歩いていく途中ある物を見つけた。少し…いや、オレはかなり感動している。
「スライムだ!」
そう、見た目楕円形ゼリーの冒険序盤には欠かせないあいつがいたのだ。プルプルしてる!!
スライムがあらわれた。
どうする?
たたかう
ぼうぎょ
どうぐ
にげる
さわる
「ジャマだ」
プシャッ
キュー・・・
ナナはスライムをふみつけた。
経験値0
お金0ルギ
てにいれた。
パッパパッパパー
チハヤは悲しさが1あがった。
「何を打ちひしがれている?」
「、、、いやなにも…」
一応オレもワクワクすんだよ。くそ
「は、はは…チハヤは初めて魔物を見たから珍しいんだよね」
「む、そういえばそうだな。実践か……よし、あいつを倒してみな」
ナナはあたりを見渡してから一方向を指差す。
遠目に小さい人影が見えた。
ただヒトではない。小柄なヒト型の魔物。
「ふぁぁ、、、ゴブリンだ」
オレは今モーレツに感動している。
緑色の体表にボロい腰布、耳まで裂けた大きな口の冒険序盤に欠かせないあいつ。
ゴブリンがあらわれた。
どうする?
たたかう
ぼうぎょ
どうぐ
にげる
つかまえる
「ジャマだ」
ドカッ
キュー・・・
ナナはゴブリンをけりつけた。
経験値0
お金0ルギ
てにいれた。
パッパパッパパー
チハヤは悲しさが1あがった。
スキル『嘆き』を開放した。
「なんでだよぉ!瞬殺じゃねーか冒険初心者舐めんな!!」
「?意味がわからん」
ちょっとはさあ、とりあえず身構えたり戦闘態勢なったりって少しは体験してみたかったんだよ。
「・・・なんでもねぇよ」
「ふむ。そうだな、ザコでもあんたたちの経験にはなるか。ちょうどいい、あそこに二体居るから二人でやってみな」
遠目の岩のそばにゴブリンとスライムが見えた。
「よっし!いくぜアル」
「う、うん!」
俺たちは二匹の魔物に駆け寄った。
向こうも俺たちに気が付いたようだ。
アルが剣を抜いた。
オレは、、、丸腰だな。とりあえず殴る蹴るでいくしかない。
オレは位置的にスライムを、アルはゴブリンを相手取る。
「くらえ!」
チハヤはスライムをふみつけた。
「あ、チハヤ!いけない!!」
「え?うわっ!」
スライムの体の端の方を踏見つけたらグニャリとした感触がしたが潰れなかった。そしてスライムが反撃だと言わんばかりに足に巻きついてきた。
「な、なんだこれ!?」
「チハヤ!待ってて!!」
アルが目の前のゴブリンに対し正眼の構えを取る。
「ほぉ…」
ナナが感嘆の声をあげるが二人に届くものではない。
「すぅーーー、、、ふっ!」
スパン
ゴブリンは叫ぶこともなくアルに真っ二つにされ黒い塵になった。あとには小さなビー玉サイズの宝石のような物がポトリと落ちる。
「アルすげぇ…」
初めてみたアルの戦いに普段からは想像できない姿を見た。剣のことはわからないが、なんというか凄く、見事な動きをしていたと思う。
「あちっっっ!」
スライムが巻きついた足にお湯をかけられたような衝撃がはしる。
「チハヤ!」
アルが駆け寄ってきて巻きついたスライムの体の一部をオレの体に当てることなくスレスレで斬りつける。
シュピ
斬られたスライムはゴブリンと同じように塵に消えた。後にはビー玉より小さなおはじきサイズの水色の宝石の様な物が落ちていた。
「チハヤ、だいじょぶ!?」
「あ、ああ。助かったぜアル」
「やれやれ、竜のお子様はスライム相手に大奮闘だな。娘男の方が頼りになるね」
ナナがオレの足元を見ながら皮肉を言ってくる。見ると、スライムが巻きついた形にズボンが溶け消えていた。
「魔物…か」
ゲームとは違う。
当たり前か、少し舐めすぎてたな。
ファンタジーは物語だからファンタジー。現実に魔物が出てくるなら、それほど恐ろしいことはないだろう。
「だ、大丈夫なの足?」
「ああ、すぐ治る。ただ色々と舐めてかかってたのを気付かされたよ」
オレはナナが鼻にもかけず蹴散らしていたのを見てこいつらを確かに舐めていた。
「スライムはね、薄っすらと体内に見える核を攻撃しないと倒せないんだ。切っても突いても意味ないんだよ」
「そうだったのか。教えてくれてありがとう、アル」
「うん。僕もわかることなら教えれるから一緒に頑張ろうね」
そう言って笑ったアルは女の子みたいな顔なのに、とても頼りに見えた。




