Lv18
その昔、この大陸に一つの大国があった。
名前はアリザベス帝国。
絶対的な王権主義のもと民は統治されていたが、内容は恐怖政治そのものだったという。
男も女も戦う力があるものは全て徴兵され、武力による進行で次々に他国を襲い領土を拡大していった。大小問わず功績を挙げたものには惜しみない褒賞を与え、兵士たちに格差制度を敷き完全な武の縦社会の出来上がりだ。
その陰で逆に戦えないものは奴隷のように虐げられ過酷な税収を強いられていた。
徐々に領土を拡大し、やがて大陸一の軍国家になるのにそう時間はかからなかったという。
そんな国の民たちが日々恐れるものがあった。
『三時の鐘』
鐘が鳴り響くたびに人々は怯え、ただ嵐が過ぎるように祈ることしかできない。
その鐘の意味するものは、
『双子の王女のおやつの時間』である。
鐘が鳴る時刻に王女たちは三時のおやつを食べる。これだけ見ればなんのことはないように思えるが、問題は彼女たちの機嫌だった。
少しでも気に入らない物が出てきた時には大臣に命じ作った菓子職人は処刑され、家もろとも焼かれた。次第に国内の菓子職人は居なくなり、他国の菓子職人を求めるため戦が起こる。それの繰り返しで国の財政はどんどん削られ、民から搾取するの繰り返し。
そんな中でも他国に侵略されず自国でも暴動やクーデターが起きなかったのには理由がある。
齢十六にして王位を継承(真実は意図的な策略によるものとも言われている)した双子の王女の力だった。
万を超える人口からなる完全な武力社会の中で頂点に君臨し力でヒトを従える
『最強の王女』
セーカ・アリザベス
それと、
洗脳とも言えるほどの人心掌握術と、あらゆる戦術戦略を導き出すことのできる地球で言うIQ350の超天才
『最恐の王女』
レーカ・アリザベス
この二人の女王制によるものだった。
二人は私欲の限りを尽くし欲しいものは全て手に入れたという。
しかし、そんな傍若無人な二人の天下もわずか数年で終わりを迎える。
ある日、王女たちは言った。
「美味しいプリンが食べたいわ」
「ええ、美味しいプリンが食べたいわ」
それを聞いた菓子職人達は知恵を絞った。鐘が鳴るごとに職人たちは処刑され戦争が起こり、民も飢えていく。
菓子職人以外にも被害は出始め、大臣などの家臣たちにも被害が出るようになっていった。
残った家臣たちは総動員で知恵を絞り研究を重ね各地を巡り試行錯誤を繰り返す。
そして彼等は至高のプリンの作り方を、あとは三つの材料をそろえるだけ、というところまでたどり着いた。
『金の砂糖』
『三頭牛の牛乳』
『竜の卵』
この三つが必要であった。
前者二つは大勢の犠牲者が出る中なんとか手に入れることができたが、最後の卵だけは多大な犠牲を払っても手に入れることができなかった。
しびれを切らした双子の王女はついに自らが最後の材料を手に入れると言い出した。無論、止めることのできる者など国には居ない。
しかし、欲に身を焼かれるとはよく言ったもので彼女たちは本当に身を焼かれることになる。
甚大な犠牲を払って確認できた竜は四匹。
『火竜』
『水竜』
『風竜』
『地竜』
この中から一つでいいので卵を手に入れようと双子の王女は兵士を集め城を出発しようとした。
いざ出発というとき、空を黒い影が覆う。
『大陸の覇者』『竜の頂点』『真祖竜』
様々な呼び名をもつ『黒竜』が現れたのだ。
竜族に敵する人々に制裁を与えるため。
最強セーカ王女の武力も、
最恐レーカ王女の頭脳も、
黒竜の前では塵に等しく、燃え盛るブレスの一撃で集結していた兵士共々焼き払われた。怒る竜は最後に城を焼き払い飛び去ったという。あとには、戦う力のなかった国民たちだけが生き残ることができた。
残った民の中からリーダーとして働いた者が今の国王の祖先という話になっている。つまり生来の王族の血は絶え、一般の民の末裔が今の王族になった。
リーダーの名前は
ルイバッハ・ナーブヘルム
ナーブヘルム王国の初代国王である。
そして、
二人の王女の肖像画は国の戒めの今でも城の宝物庫の中には国への戒めの象徴として地下の宝物庫に補完されている。
右サイドポニーのセーカ王女、左サイドポニーのレーカ王女の肖像画は夜中に見るとたまに笑みを浮かべることがあると噂話にもなっている。
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「というこの国に伝わる昔話だ」
と、ナナは昔話を締めた。
「・・・なぁ…」
話し終えたナナにオレは質問を投げかける。
さあ、聞きたいことがあるぞ。




