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Lv17

今日は休みだ。

前に約束したとおりアルと二人で城の外に出ようと城門まで来たのだが……


「許可なく城外へ出ることは許さん」


門番に捕まった。


「どうする?」


「どうするって言っても…困ったね」


アルもこの間の調査隊以外での外出は初めてらしく、許可が要るとは思わなかったようだ。


「何をしている?」


「げっ!?この声は…」


振り返ると鬼がいた。


「あ、あの。ナナ隊長、僕らは……」


「娘男はともかく、あんたが簡単に外に出られる訳ないだろ」


「・・・だよなぁ」


そう、オレは一応国に栄光をもたらす“竜の子”と思われているのであって簡単には見逃してくれないらしい。この世界で生き抜いていく力を身につけなきゃいけない以上、今のところは逃げる気はないんだが。


「何処へ行く気だ」


赤鬼、もとい『紅姫』ナナ様は俺たちに聞いてくる。そう言えば、今日は休みだからかいつもの赤い鎧をつけていない。動きやすそうな黒のタンクトップに膝上までのデニム風パンツ、赤のシャツを羽織っている。赤を基調とするのは仕様なのか?


「あー……オレが居た洞窟を見に行こうと思ってな。何か思い出せるかもしれないし」


「二人でか?」


「そ、そうです!一応、魔物が出るのもわかっているので剣も持ってきました!」


スチャっと持っていた剣を目の前に出しナナに見せるアル。


「あんたたち二人で魔物を倒せるのかい?」


「弱い魔物しか出てこないって聞いてるしな」


「、、、そうかい。ならあたしも付いて行こう」


「ええっ!?マジかよ」


「なんだ、不服か?」


「いや…せっかくの休日に隊長様を連れ出すのも恐れ多いというか何というか邪魔で動きにくいというか、、、」


「相変わらず口の減らないなガキめ…まぁいい、一応あたしは竜のお子様の教育係だからな。勝手に死なれたら困るんだよ」


「はいはい、そうですね」


(まぁ正直なにかあった場合は頼りになるし、今日は訓練でもないからいいか)


「と、いうわけだ。今日は訓練の一貫としてあたしがこいつらの面倒を見る。門を開けな」


「は、はい!わかりました!!」


門番が急いで城門を開ける。通り過ぎた後から門番達のヒソヒソ声が聞こえた。


「おい、見たか今の」

「ああ、あの紅姫にあんなくちがきけるなんて」

「竜の子ってすげーんだな」

「俺なんか紅姫が普通に話してるの初めてみたよ」


(…どんだけ怖がられてるんだよ)




–––––城下町–––––



城に来る時は意識がなかったので、実は町に出るのを密かに楽しみにしていたのだ。

ガヤガヤとヒトで賑わう通り、威勢の良い掛け声で商品を売り込む屋台、怪しげなアクセサリー路商に武骨な態度の武器防具屋。ゲームや小説の中で夢に描いた町並みがオレを待っていた。


「さぁっ!初めての城下町だー、、、って、あれ?」


いや、待っていなかった。


「なんか、ヒト少なくね??」


そう、通りがあり家も立ち並んでいるが閑散とした雰囲気が漂っていた。


「何を期待していたんだ?皆その日1日を生きるのに必死なんだ。浮かれているのはお前の頭の中だけにしておけ」


確かに、少ないが歩いてるヒトたちの顔には活き活きとしたものは感じられない。角が生えているのでもしかしたら注目浴びたりするのかとか思っていたことが逆に恥ずかしい。そんなことを思いながら三人で歩いている内に、いつの間にか細い路地に入っていた。


「竜のお子様を英雄のように敬いヒトが群がって来るとでも期待したか?」


「…してねーよ。それより、何でこんな大きな城下町なのに賑わってないんだ?ヒトが少ないわけじゃないよな?」


「・・・」


オレの問いにナナは答えない。


すると、


「へ、兵士さま……」


後ろから声をかけられる。見るとボロボロの衣服を纏った中年の女性が赤ん坊を抱えてこちらにすがってきていた。


「お願いします…どうかお願いします。この子にミルクを、何か口にする物をいただけませんか?」


女性は必死に乞うてくる。


「おいおい、この子そうとう痩せ細ってるじゃねぇか!?オレ、ちょっとおっさんのところに、、、」

「チハヤ僕も、、、」


ガシッ


城に戻り食堂のおっさんに食べる物をもらいに行こうとしたオレとアルは首根っこを掴まれた。


「・・・行くぞ」


ナナは我関せずという表情でそのまま進み始めた。


「おい、離せよ!あんなに瀕死になってるならおっさんのマズい料理だって、、、」


「周りをよく見ろ」


ナナに抵抗しようとし諌められ、あたりを見回して見た。


「!?」


「ち、チハヤ…こんなに……」


いつの間にかオレたちは町の住人、特に飢えた貧しいヒトたちに囲まれていた。家の陰から、窓の中から、壁際に、物陰に。そこかしこから視線を感じる。


「な、なんだこの町は、、、」


「サッサと歩け!それになんだ貴様ら、物乞いなら聞かんぞ!!とっとと失せろ!」


ナナの怒号に周りに居たヒトたちは散って行く。気付けば赤子を抱いた女性も居なくなっていた。


そのまま黙ってオレたちは道を歩き始める。しばらくして口を開いたのはナナだった。


「あいつらは食べる力がない。金がない。それを稼ぐ術を生み出せなかった。すなわち弱かったんだ。ただそれだけだ、余計な感傷は抱くな」


「、、、でもよ」


「あたしやあんたらが毎日食うに困らず訓練に励むことができるのがなぜだかわかるかい?」


「、、、国民から…」


「そうだ。言葉を濁すな。税収によってあたしたちは生かされてるんだ」


「こんなに…」


アルが泣きそうな声で言う。


「こんなに?あたしが聞いた話だと、これから更に税率をあげるそうだよ」


オレとアルは驚いて目を見開く。


「まだ…これ以上??」


「ああ、みたいだよ」


そう言ってる内に町並みが切れ、石の外壁が見えてきた。


「今日は楽しいピクニックだ。ひとつ、昔話をあんたたちにしてやろう」


外壁までもう少し。そこを越えれば町のそとに出れるというところでナナは振り向き、話し始めた。

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