Lv11
–––兵舎の食堂–––
「はぐはぐはぐはぐっ!!」
「ほえ〜・・・」
オレは飯を食べている、
ひたすらがっつく。
「んぐ、んぐ、んぐ、、、ぷはー!やっと落ち着いた!」
「は、はは…よく食べるね」
目を覚ましたら夜になっていた。
木造りの小さめの部屋に二段ベッドが一つ。その上の段で目を覚ましたオレにテーブルの向かい側に座る少年(なんつーか、男の娘?)アルバートに介抱してもらった事を聞いた。お互い色々話を聞こうとしたが、腹の虫がそれを妨げた。とりあえずは晩飯にしようという事で食堂に連れてきてもらったのだが。。。
「ふーっ!あーマズかった!!」
「クスクス、そうだね。ここの料理はお世辞にも美味しいとは言えないね」
アルバートがそれを見て笑う。
幻覚か?こいつの笑顔の周りにお花が見えるぞ。その辺の女の子より可愛らしいんじゃないか?線の細い体になで肩、グレイのサラサラで綺麗な髪してるし。目もなんだかキラキラしてる。まつ毛長ぇ。
というか、何故兵士に??
「ほぉ……俺様の料理に盛大にケチをつけてくれたやつはおめぇか……」
座っていたテーブルの後ろ、調理場の方から筋肉ムキムキスキンヘッドの顎髭おっさんが出てきた。料理に文句が聞こえ頭に青筋を浮かべている。
(・・・お約束なのか?こういうキャラ)
「いやいや、そんな事ないですよ!!いつも美味しくいただいてますジークフリートさん!」
「いつもより随分注文がくるなと思って見に来たらアル坊、お前さんの連れか…」
(調理場のおっさんなのに名前が格好良い!?)
「ったく、おい坊主。お前さん不味いなんて言っときながら本当は俺様の料理が気に入ったんだろう?ううん??」
「いや、本当に不味い」
「こらてめぇ!!五人前はペロリと食いやがったくせにどの口がそんな事言ってんだ!?」
「いや、だってさ……このスープなんて芋入れて煮込んだだけで味付けもなんもしてないだろ?それにこの肉、ただ肉焼いただけじゃねーか、しかも焼き過ぎ。挙句にサラダなんて葉っぱ千切って皿に盛っただけとか、、、」
「ワイルドだろうが?兵士メシ」
何処ぞの人か。
「それでも腹が減ったら食えるもんだ。何でもいいから口にしなきゃ死にそうだったんだ、ありがとう。ごちそうさま」
「……お、おぅ」
「あはは、ジークフリートさん滅多に『ごちそうさま』なんて言われないから照れてる」
「う、うるせー!食ったらとっとと行きな!ここはガキの溜まり場じゃねーんだ!!」
そんな捨て台詞を吐いておっさんは調理場に引っ込んで行った。去り際に見えた耳の赤さについては何も言うまい。
「ところでアルバート、色々と聞きたいことがあるんだが、、、」
「アルでいいよ。僕のことはそう呼んで。僕も……チ、チハヤって呼び捨てにしていい、、、かな?」
(なんだこの可愛い生き物)
「あ、ああ……かまわない。というか、アルはいくつなんだ?」
「僕?16になったばかりだけど」
(あ。年の話なんかしたら俺も言わなきゃいけんよな……とりあえず見ためにあわせて、、、)
「オレの二つ上か」
「チハヤは14歳なんだ!最年少兵士が僕じゃなくなったよ」
「最年少か」
(すまんなアル。実は36歳なんてお前は知らなくてもいいんだよ)
「あ、あとね。まだまだ聞きたいことがあるんだけど、、、」
「落ち着けよ。ここで話してたらまたあのワイルド料理人が出てきてうるさいかもしれんから、一旦部屋に戻ろう」
「そっか、そだね!」
(話してて誰かに聞かれたら不味いことがあっても面倒だしな…)
オレはまだこの世界のことを何も知らない。知らないということは致命的だ。命すらアッサリ落としてしまうかもしれない。あの竜に助けられたこの命、大事にしないとな。
オレはアルと共に食堂を後にした。
––––––––––
兵舎で割り当てられた部屋の中。
俺がナナにボコられ気絶してから目を覚ました所だ。偶然なのか、二段ベッドの下の段の住人はアルだった。
「まさかルームメイトとはな」
「ふふふ、そうだね。僕、なんだか嬉しいよ!」
(笑顔が眩しい…)
オレたちは互いのことを話し合った。
もちろん、オレの方は念のためナナに話したのと同じように記憶喪失と14歳の設定は維持したまま。
アルは凄い勢いで色々なことを話してくれた。他の兵士たちは20歳を超えてるものがほとんどで、同年代の仲間が嬉しかったのだろう。田舎の村で育ちイジメられていたことや家族にも男仕事を任せきれないとみそっかす扱いされて村を飛び出してきたこと。この国はヒトと呼ばれる人間族しか住んでいなく、国を出たら亜人と呼ばれるヒト以外、例えば半人半獣の種族などが住んでるということ。金銭価値や人々の風習、習慣、生活様式など基本的なことは全て教えてくれた。
一番驚いたのは、兵士志願したのはいいが当然のごとく門前払いされたらしく、それでも三日三晩城門の前で粘り続けたとのことだ。可愛らしい容姿からは想像できない根性の持ち主だと素直に驚いた。
「同じ駆け出し同士、頑張ろうね!」
「お、おぅ...明日もあの赤鬼にしごかれるのか」
「あ、、、はは、鬼って。確かに、ナナ隊長は怖いよね。何人も血祭りにあげられたのを見たことあるし」
「血祭りって...」
「でも不思議なんだよね。僕は今まで隊長からしごかれたことがないんだけど、なんでだろう??」
・・・恐らくアルは男としてみられていないか、男なのに女の子の容姿を持っているから男嫌いなナナからしたら近寄りたくないんだろう。
「それはそれでラッキーと思っておけよ。ところで、アルは武器は何を使っているんだ?」
「僕?剣だよ。先輩に『ちょっとは使えるみたいだな』って褒められたんだ」
えへっと笑う顔が可愛すぎる。
「へ~、剣か。。。」
「チハヤは何を使うの?」
「正直、武器は持ったことがないんだ。まあ、色々試してみるよ」
「うん!そうだね。あ、もうそろそろ寝ないとね。明日も早いし」
「おう、色々教えてくれてありがとな」
「じゃあまた明日」
「ん、おやすみ」
オレは二段ベッドの上、アルは下の段で眠りについた。




