桜と私と君と。
初投稿です。短編です。うまくは書けませんが……こんなことになったらいいなと、妄想を膨らませて書きました。
春特有の、暖かく優しい風が吹いて、淡い桃色が視界を埋め尽くす。
バックのどこまでも蒼い空とのコントラストは、正に絶景……なのだが。
「はあぁぁ…………」
その光景が綺麗だと惚けている余裕は、実由には無かった。
川井 実由、15歳。今日は、市立桜宮高等学校で華のJKデビューをする予定で、まだ着慣れない制服に身を包んでいる。
日差しに反射したボタンがキラキラと輝いている、キャラメル色のブレザーに、ビターチョコといちごみるくの色の膝丈チェックスカート。そしてそれとお揃いの柄のリボン。
この可愛い制服目当てに、市外からも沢山の生徒が集まってくる。
市立桜宮高校、偏差値はそこまで高くなく、学力は県内では中の下くらいである。
だが、建っている場所の近くには大型遊戯施設、コンビニやスーパーなど、学生の丁度いい寄り道先が沢山あるのだ。
可愛い制服で買い物も出来るし、友達とも遊べると評判の高校である。
そのお陰で倍率はとても高く、実由もここに入るのには苦労したものだ。
……と、話が逸れた。
はっきり言おう。
実由は、この歳になって、
「迷ったぁ……」
迷子になったのである。
自宅から高校まで、電車を使えばたったの15分。
高校の最寄り駅からそこへ歩けば、数分も経たないうちに着く筈なのだが。
前を偶然通りかかった、ちょこちょこ歩く愛らしい三毛猫を追いかけているうちに、桜並木がずっと続く、よく分からない場所に辿り着いてしまった。
しかも、猫は何処かへ消えてしまうし……
本当にツイてない、と溜息を吐く実由。
ちら、と腕時計を見ると、もう入学式の10分前だ。
あーあ、絶対に間に合わない。
絶え間なく吹く風が、実由のライトブラウンのショートヘアを揺らしていく。
今日は、サボっちゃおうかな。
うん、サボろう。こんな良い景色にも巡り会えたし、仕方ない、明日に期待しよう。
そう決めた実由は、日向ぼっこ出来そうな場所を探そうと立ち上がろうとした……そのとき。
カサ、と落ちた桜を何者かが踏みしめる音が響いた。
「______大丈夫?」
澄んだテノールの声。
風にさらさらと揺れる黒髪。
明るく輝くキャラメル色のブレザー。
少し長めのチョコレート色のズボン。
二重の瞼が少し落ちていて、桜色の唇は仄かに緩んでいる。
「え……?あぁ、はいっ!大丈夫?です、かね……へへっ」
いや全然大丈夫ではない。実由は突然現れた、王子様のようなルックスの男子生徒に慌てている。
かっこよすぎて直視出来ない。
浮世離れしたその存在が、こんな綺麗な景色の中でこちらに微笑んでいるなんて……
まるで夢のような出来事すぎて、実由は頬を抓った。痛い。
「君も高校同じだよね。その……俺、迷っちゃってさ。案内してくれると、助かるんだけど……」
目を逸らしながら頭を搔く彼に、実由は目を奪われ、頬は勝手に熱を持っていく。
ダメかな……?と手を合わせて懇願してくる彼のそんな姿はまるで子犬の様で。
そんな可愛らしい彼に見つめられたら、自然に鼓動も高鳴る。
「わ、私も!同じ……だねっ」
緊張のあまり震える声でそう言うと、男子生徒はくすりと笑う。
少し恥ずかしいが、打ち解けられた……のかな?と勝手に思案する実由。
「だよね!よかった……あ、俺は清峰 博音。宜しく……」
そう言っておずおずと手を出してくる、清峰くん。
「私は、川井 実由だよ。清峰くん、よろしく!」
出された手を握りしめながら、ぺこりと会釈する。
そっと清峰くんの顔を盗み見ると、端正な顔は朱色に染まっていて。
同じだ、と思いついつい頬を緩ませてしまう実由。
すると、いきなり走り出す清峰君。そんな彼に手を引かれ、足をもつれさせながら実由も走り出す。
すっかり忘れていたが、そういえばもうすぐ入学式は始まってしまうのだった。
「えっ、どっちかわかるのーー!?」
「多分こっちの方だと思う!」
見た目は王子様っぽくて、何事もキチッとしてそうなのに、意外とテキトーだなぁ、と吹き出す実由。
ついさっき知り合ったばかりの相手に、いつの間にか、安心して身を任せている自分がいて。
何でだろう、と男性経験があまりない実由は考える。
走っているせいか、熱を帯びてきたお互いの手を離さぬように。
実由と博音はこれから向かう学び舎に期待に胸を膨らませながら、桜道を掛けていったのだった____
いやあ、やっぱり難しいですね。
長編小説にも挑戦できるよう、もっと修行せねば……!(笑)
これの続きもいつか書いてみたいです….♪*゜