表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼月夜  作者: くまおやG
8/19

死霊の森

 一行は、焚き火を囲い休息を取っていた。

「ときに兄さん、中々の槍捌きじゃの」

「いや~それほどでも」

「いやいや、中々どうしての物じゃったぞ」

「我が家は、代々国を守護する武門ゆえ」

「しかし、あの技は西洋の物ではないのぉ」

「はい、李書文先生に師事しました」

「おぉ、あの神槍の弟子か?」

「はい、李先生を招き、教えて貰いました」

「なるほど」

「先生には、お前はヘタクソだから右払い、左払い、突きのみやっておれと言われ、ひたすらそれのみをやってました。先生が御帰りの際、船で東国まで私が御供したのですが、船の上でも毎日それのみ……」

「うむ!それこそ極意じゃ!」

「そう言う物ですかね?」

「ちがうかね?」

「……そうですね」

「さ、飯も食ったし、そろそろ行くかの」

 蘇化子は、そう言うと立ち上がった。

「いいかいお嬢ちゃん、これから何が起こっても見て見ぬ振りをしなさい」

「はい」

 シャルロットは、何のことか分らないが頷いた。

「では、行くぞ」

 一行は、真っ暗闇の峠道をランプだけを頼りに進んだ。

 国境に着いたが、案の定門番は居なかった。

 アッサリと国境を越えることが出来た。

 一行がしばらく進むと……


 少女が1人道端に座り込み、しくしくと泣いていた。

『おいでなさったか』


 一行は、無視を決め込んで通り過ぎようとした。

 がしかし、シャルロットは振り返り駆け寄った。


「どうしたの?」

「お父さんも、お母さんも居ないの……」

「わかったわ、お姉さんも一緒に捜しましょう」


『ああ……注意したのに』

 テリュースは、シャルロットに駆け寄った。

「行くぞシャルロット」

「テリュース、貴方は何て薄情なの!この様な幼子を1人こんな暗い森に置いて行けと言うの!」

「シャルロット、よくその子の足元を見てごらん」

 そこには、まだ子供の物と思われる白骨死体が転がっていた。

「……」

 シャルロットは、息を呑んだ。

「亡霊だよ、親を捜しに森に入ると二度と出られなくなる。そしてお前も骨を転がす事に成るぞ」

「……」

「わかっただろ、行くぞ!」

 テリュースは、シャルロットの手を引いた。

『ごめんなさい』

 シャルロットは、心の中で謝った。


「だめよ!お姉ちゃん一緒に捜してくれるって言ったもん!言ったでしょ!ウソつくの!」

 亡霊は、しつこくまとわりついてきた。

「うそつき!うそつき!うそつき!」

 そう言って、シャルロットの袖口を引っ張った。

「離れろ」

 テリュースがその手を払うと、手首がボロリと落ちた。

 傷口にウジがわいていた。

 つまづき転んだ少女を哀れに思い、シャルロットが抱き上げると両の目はダラリと飛び出し、 目の穴からミミズやムカデが這って出てきた。

「ひい……」

 シャルロットは、思わず手を離した。

 再び亡霊は、うつ伏せに倒れた。

 そのまま、クビが180度後ろに回り「お姉ちゃんのうそつき!」と言った。

 シャルロットが後ずさりしながら視線を上に送ると、森の中に無数の亡霊が浮かび上がった。

 遂にシャルロットは気を失い、その場に倒れてこんでしまった。

 亡霊の少女はケタケタと笑いながら、シャルロットに這い寄って来た。

「シャルロットを連れ去る気じゃ、気を付けろ!」

 亡霊の少女が、シャルロットの足に手を掛けようとしたその時だった。

 不意にシャルロットは目を開き、少女を睨み付けた。

 その目は、赤く爛々と光っていた。

「ひぃ……」亡霊の少女は、その目を見て怯えた。

「ひぃぃぃぃぃ……化け物だーーーー」

 亡霊は、消え去った。

 再び、シャルロットは気を失った。


 ソが、シャルロットに気合入れを起こすと、シャルロットは何事も無かったように目覚めた。

「お化けは?……」

「シャルロットのこと『化け物だーーーー』って言って逃げてったよ」

「えーひどーい!」

「そうだな……ぷっ……はははは……」

「なに!テリュースったら!」

 その場に笑いがこぼれた。


 一行は、歩を進め山の麓に着く頃には白々と夜が明けてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ