刺客
4人は、一旦北に向かった。
「おにいさん……チョット」
「はいナンでしょう」
「どうやら、さっきから尾行されてる様じゃの」
「えっ!」
「しっ」
「……追手は2人か……!こりゃいかん!待ち伏せじゃ」
追手は待ち伏せを含めて、合計3人だった。
黒装束に身を纏い、ターバンで顔を隠していた。
1人は、グルカナイフ。
1人は、鉄のつめ。
1人は、金属の輪の様な物をクルクルと指で回していた。
「厄介じゃのう、インドラ―の暗殺集団か……」
「ライグランド国王女、シャルロット姫と御見受け致す。御命頂戴仕る」
『この爺さんが、蘇化子か……こいつが相手となると無傷と言う訳にはいかんな……だが、後は女2人と御坊ちゃま1人……貰った!』
刺客の1人が、金属の輪【チャクラム】を投げた。
チャクラムは、左右から大きく弧を描き、シャルロットのクビに届こうとしていた。
「シャルロット!ゴメン!」
テリュースはシャルロットを突き飛ばした。
シャキーン!!
次の瞬間、なんとテリュースの槍の石突を中心にチャクラムがクルクルと回っていた。
「輪投げのオッサンよう!お坊ちゃまと見くびっていただろう!ほら!返すぜ!」
テリュースはチャクラムを槍で投げ返した。
チャクラムは、左右から孤を描き、刺客の首を襲った。
刺客は、チャクラムを捕る体勢を取った。
その瞬間、テリュースは一気に間合いを詰め、槍で突いた。
テリュースの槍が、刺客の喉を貫いた。
そのまま槍をぐるっと捻りながら抜くと、刺客の首は有らぬ方向に曲がった。
刺客の指には、チャクラムがクルクルと回っていた。
『ほう……やりおるわ……どれ、今度はワシの番かの……』
蘇化子は瓢箪の酒を煽った。
『チッ……キラーンの奴め焦りよって……しかし、正直あのヤリ捌きは驚いた……アディと俺のどちらも武器として間合いが短い……分が悪いぞ』
「おーい、どうした?面倒だから2人掛かりで来たらどうじゃ?」
ソが、挑発しながらフラフラと前に出た。
2人の刺客は目配せをしてお互い頷くと、同時にソに襲い掛かった。
ソがその攻撃をよけると、グルカナイフの男が向きを急に変えてユンユンとシャルロットが居る方向へ襲い掛かった。
「シャルロットーーーー!!!!」テリュースが慌てて戻ったが、間に合いそうも無い。
ガシッ!!!!
それは、ユンユンが荷物運び用の樫の天秤棒でグルカナイフを持つ小手を叩いた音だった。
『!』
ソ以外の全員が、棒を持つユンユンの動きに驚き動きを止めた。
「なに……」グルカナイフの男は、ナイフを落とし右手と抱えうずくまった。
男の右手首は折れていた。
その瞬間、ソの肘が鉄の爪の男の鳩尾に入った。
「うっ」鉄の爪の男が腹を抱えうずくまると、ソの腕がまるで蛇のように男の喉を掴んだ。
ソは、親指と人差し指に『グッ』と力を入れると、男の喉は潰れ男は絶命した。
ついに刺客は、グルカナイフの男1人に成った。
男は、武器を失い万事休すの状態だった。
男は、左手でナイフを拾い玉砕覚悟で飛び掛った。
「くっそーーーーー」
バシッ!
ユンユンは、棒を右に旋回させてナイフを巻き落とすと、返す刀で男の右頬を棒で殴った。
男がもんどり打って倒れると、ユンユンはトドメの一撃を脳天に落とした。
かくして、暗殺は未遂に終わった。
一行は、何事も無かったように歩を進め、死霊の森にたどり着いた。
「さぁ此処で、見張りが居なくなる夜を待とうかの」
一行は、森の広場で焚き火を囲い、夜を待つ一時の休息を取った。