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蒼月夜  作者: くまおやG
11/19

空中大決戦

 シャルロットは真っ逆さまに急降下するとにわかに翼を開いた。

 一旦海の方へ滑空し、大きく旋回して岸壁の棚に降り立った。

 そして、おもむろに薬草を摘もうとするのだが、鉤爪では上手く摘むことが出来ず四苦八苦していた。

『ドン!!』

 不意に何者かが、体当たりしてきた。

 シャルロットは、ヨロけて崖から落ちた。

 寸での所で急上昇し棚を振り返った。

 そこに居たのは、巨大な猛禽だった。

 巨大化したシャルロットより更に大きい。

『ギャーーーーーーー!!!!!』

 ルフは、シャルロットを威嚇した。

『ブワッ!!!』

 ルフは羽を広げた。

『バサッ!バサッ!』

 2・3回羽ばたくと飛び立った。

 そして、海から崖に当たり吹き上げる風に乗り、高く舞い上がった。

 ルフはクルリと旋回すると、凄まじい勢いで急降下した。

 充分加速すると、翼を広げシャルロットに突進して来た。

 シャルロットが避けると、すれ違い様に鋭い爪を繰り出した。

 爪は、シャルロットの肩口食い込んだ。

 ルフは凄まじい力でシャルロットをぶら下げたまま飛び、シャルロットを岸壁叩きつけた。

『ドスン!』

 シャルロットは、ルフの巣の在る棚に落ちた。

「シャルロットーー!!」

 テリュースは、ロープを槍に括り付けると、地面に突き刺して岸壁を下り始めた。

「アズハル!槍が抜け無い様に押さえてくれ!」

 その瞬間だった。

 ルフは、一転してテリュースを襲った。

 テリュースは、ルフの長い爪に捕まってしまった。

 ルフは、そのまま急降下した。

 ロープを引っ張られて、アズハルは手を離した。

 槍は、一緒に落ちて行った。

 テリュースは、必死で槍を手繰り寄せた。

 ルフは、巣の目の前にテリュースを下ろした。

 そして、鼻先で洞窟の中へ押した。

 一応抵抗してみるが、叶わず洞窟に足を踏み入れた。

『ぴよぴよ!ぴよぴよ!』

 洞窟の奥から、雛の鳴き声が聞こえた。

『ギャー!』

 ルフが、一声鳴いた。

『ドスドスドスドス・・・・・』

 洞窟の奥から、何かが迫ってきた。

「ぴよーーー!!!」

 可愛い鳴き声とは裏腹の、ダチョウよりの大きな雛がテリュースに突進してきた。

「くそ!俺はエサかよ!!」

 人の頭など一呑みできそうな、巨大な黄色いクチバシが襲ってきた。

 テリュースは間一髪で槍の柄を横にしてそれを受けると、回し蹴りを脇腹に入れた。

「ぴー!!!!」

 雛は涙目で、『こいつ、やっつけちゃって』とルフに訴えた。

 テリュースが振り返ると、まさにルフがテリュースを踏みつけようと足を上げていた。

「やべぇ!」

 横に回転してルフの足を避けると、そのまま股の間を駆け抜けた。

『ドスドスドス!』背後から、雛が追いかけてくる。

 テリュースはロープをぐるぐると手に巻きつけると、地面に槍を突き立てそのまま崖から飛び出した。

 後頭部の辺りで、『パシっ!』っとクチバシが空振りした。

 雛は空中で2・3度足掻くと、哀れ海に落ちて行った。

 テリュースは、ロープにぶら下がったまま一息ついた。

『ギャー!!!!』

 ルフは、狂ったように鳴いた。

 2・3度羽ばたくと空に舞い上がった。

『くえーーーーーー!!!!!』

 ルフは、ロープにぶら下がったテリュースを襲った。

 さっきは、餌にするため捕まえる事が目的だったが、今度は明らかに殺意を持って襲ってきた。

 テリュースは、必死にロープをよじ登った。

 そして、転がるように棚に上がった。

『ドシーン!』

 背後で凄まじい音がした。

 テリュースがぶら下がって居た場所が、ルフの爪で崩れ落ちた。

『なんてパワーだよ!』

『うん?』

 目の前でシャルロットの身体が、眩い金色に輝きだした。

 そして、シャルロットはむくりと身体を起こした。

「よかった!無事だったんだな!……」

 返事がない……

 不意にシャルロットが、飛び立った。

『ドーン!』

 再び襲いかかってきたルフに、体当たりを喰らわした。

 ルフは身を翻し、沖に向かって飛び体制を整えた。

 シャルロットは、ルフを追った。

 そして、海上でお互い睨み合った。

 シャルロットが、大きく息を吸った。

 そして、青黒い息を吐いた。

 村人を襲った毒霧だった。

 ルフは、大きく羽ばたき毒霧を霧散させた。

「くそう……ルフには効かないか……」

 シャルロットは、再び大きく息を吸った。

 霧散した、毒霧がシャルロットの周りにに再び集まり始めた。

 毒霧は、シャルロットの目の前で青黒い渦を巻き始めた。

 渦巻きは、どんどん凝縮し始めた。

 どんどん丸くなり、青黒い玉に成った。

 シャルロットはその玉を握り、上空高く舞い上がった。

 一転して急降下し、急降下爆弾宜しくその玉をルフに叩き付けた。

 ルフに当たった玉は再び霧散し始め、ルフの周りを覆い尽くした。

 それを吸ったルフは、海に墜落した。


 棚にシャルロットが帰った来た。

 シャルロットを覆う金色の輝きは徐々に弱り始めた。

 シャルロットの目から怒りの感情が薄れ、涼しげな眼でテリュースを見つめた。

 テリュースが薬草を沢山摘むと、シャルロットが頭を下げた。

「乗れって事?」

 シャルロットは、一旦頭を上げるとうなずいた。

 テリュースは、シャルロットにまたがった。

 シャルロットは一気に上に飛び上がり、皆の待つ岬に降り立ち、テリュースがアズハルに薬草を渡すのを見届けると倒れ込んだ。

 金色の巨体は、半透明に薄れ徐々に人間シャルロットの姿に戻り始めた。

「いかん、肩に大怪我してるぞ!」


 一行は、砂漠の城に急ぎ帰還した。

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