体育祭-本番-(1)
閑静な住宅街でかなり目立っているベランダが突然現れ、昨日までは何もなかったはずの物がそこにあった。
そう、大量の『"逆さ"てるてる坊主』である。
確実に雨が降るように神様にお願いしたのだろう。
しかし、その願いは叶わず日頃の行いが悪いせいか雲一つない晴天に恵まれた。
体育祭を行うにはもってこいの日である。 そして、その住宅では親子喧嘩が勃発していた。
「孝之!毎年毎年あれを飾るのは止めなさいって言っているでしょ!」
「嫌だ。バイト代から出しているから家計には影響ない」
「そういうことじゃなくて、ただ母さんが嫌なの。近所の人とすれ違うたびに『この時期は大変ですね』って言われるのが恥ずかしいのよ!」
「俺は気にしないけど」
「孝之はそうかもしれないけど母さんは気にするの!お父さんからも何か言ってあげて!」
新聞を見ていた父親が新聞を片付け、俺の目を見ながら言う。
「孝、母さんの言うことが間違っているか?間違ってないだろう?孝が平気でも他の人は嫌だっていうものは沢山ある。 父さんも最初は気にしていたが孝がこういう行事を嫌っているのを知ってからは何も感じなくなった」
「その反面、孝が学校で虐めを受けているのではないかと心配したがそれとは逆にいろいろと迷惑をかけていること知った。 それからいつか説教をしないといけないなと思いつつもこれが孝之なんだと毎回感じるようになったよ」
「母さんも昔から孝之がこういう子どもってことは知っているだろう? これが孝之の個性なんだよ。 確かに悪いことをしたら怒るのは当たり前だが個性を壊してでも止めるのは間違っていると思うよ父さんは」
「その隙に逃げようとしている孝之、今回は大目にみるが次したら今までの分を含めた説教をするからな。そんなにてるてる坊主を飾りたいならベランダじゃなくて自分の部屋に飾りなさい。母さんもそれでいいだろう?」
「父さんがそういうならいいわよ。そして、今すぐ片付けなさい」
「わかった。…今までごめん。これからも迷惑をかける」
「!!」「…ほどほどに、な」
「わかってる」
「兄ちゃん、遅刻するよ。母さんも弁当の用意しなくてもいいの?」
「あ!」「別にいいや」
「……」
「母さん、時間無いから行ってるよ。弁当も昼休みに受け取るから」
「わかったわ。それに別にいいやって孝も早く準備をしなさい」
「はいはい」
「はいは一回でしょ」
「いってきます」 ガチャ
弟が玄関で元気よく言う。
そして両親も「「いってらっしゃい」」と返す。
いい光景だ。
「俺もいってきます」
俺もリビングから抜け出し自分の部屋に向かおうとするが母親が俺の行動に気付き言う。
「そっちは階段よ。玄関は左側よ」
「…」
「はい、回れ右」
俺は無言でクルと玄関の方を向く。
アレー、オカシイナー?カラダガカッテニウゴイタゾー。
「いってらっしゃい」ニコ
母親が先ほどとは違い何かしらの威圧感を出してくる。
「いってきます」
「逝ってらっしゃい」
「母さん、俺はまだ逝かないぞ」
頭良いんだから変換ミスしないで。
「それより本当に遅刻するわよ」
「はぁー。俺も弁当は後で貰うよ」
「今貰えないのは孝之のせいでしょ?」
「…」
俺がその当事者なので何も言い返せない。
「あら?可愛いお迎えも来た所だし行きなさい」
母親のその言葉で後ろを見るとそこには榛里朱鳥、とおまけのリムジン。
朝からこんなもの見たくなかった。
「おはようございます。今日は体育祭日和ですね。フフッ」
うん、空気が読めないってこの事を言うのか。
勉強になります。
「良い天気ですね」ニコニコ
「ハイ、ソウデスネ」
良い天気なら歩けば良いのに、と思う俺。
「緊張しなくても良いんですよ。私と霧山君との仲ですから」
榛里が頬を紅く染めながら俺を見る。
「……」
このお嬢様は何デタラメな事を言うんでしょう?
あと、運転手の人も録音なんかしないで前を向いて、間違った答えは絶対言いませんから。
「あっ、あそこに小倉さんがいますよ」
フリフリ
電車よりも楽だなと思った矢先に榛里がとち狂ったことをする。
それは "小倉に近づく" こと。
あの時のことを忘れたかのような行動である。
俺はもうあれを再現(空間)したくない。
って俺がいたらもっと大変なことになりますよね!?
このお嬢様の頭は飾り物なのか?いやいや、こんなことをしている場合じゃない。
逃げないと。
「気付きましたね」
俺、ご臨終です。
本当に神様っているんでしょうか?
いるならサイコロの目確認していますか?進むマスの数間違っていますよ?
「ニコニコ」
「……」「……」
ここで一言、カオス。
本当に何これ?地獄?逆に天国?
いいえ、現実ですね。
あと、これ学校に着くの?
運転手の人が尋常なくらい汗をかいているんだけど。
「小倉さんはどの競技に出るのですか?」
「借り物競争」
「私たちと同じですね」
ん?私たちと同じ?
確か女子はDとGだったはず。
俺は榛里の方を見る。
「無理をいってDさんと変わってもらいました」
テヘっと悪い子をしたかのように舌を出す。
「ブチッ」
うん、勝手なことをしないで。
空気が読めないお嬢様はこの空間を壊す気ですか?もう一人のお嬢様は既に空間を消す勢いですよ。
神様、地球を壊してごめ「朱鳥お嬢様、着きました」
ガチャ
運転手の人がドアを開ける。
た、助かった、のか?
「霧山君、行きましょう」
榛里は俺の手を引っ張りながらムジンの外に出る。
中を見ると小倉はまだ座っていた。
どこかにセーブできるところなかった?スタート地点に戻るでも良いんだけど?
「孝之、災難だったな」
二三矢が笑っている。
「笑い事じゃないぞ」
あれは神の領域を越えたぞ。しかし、あそこで予鈴が鳴るとは思ってもいなかった。
「まったく空気を読めない予鈴です」
榛里がプンプンしながら言った。
「「……」」
可愛いのは認めますが空気を読めないのはあなたですよ。
あ、数人倒れた。
なんとなく更新してみました。
作者名は違うけど、pixivに投稿しようかな、、、。
⇒white-underに統一しました。
2020年4月5日




