素顔(5)
生物という名の交流会
「榛里には悪いが前に出てきてくれ」
「はい」
榛里が歩き出す。すると、周りから「いい匂いがする」や「天使」などと聞こえてくるが、いい匂いは香水とか洗剤の匂いで、天使に見えるなら眼科でも行った方がいいと思うんだが。
「先程もしましたが、私の名前は榛里朱鳥です。父親の仕事関係でこちらに戻ってきました。向こうの学校では美術部に入っていました」
「よし、質問時間を取る。当てるのがめんどくさいので出席番号順にする。また、質問は一人一つのみ。質問の中に何個も聞きたいことを入れない。分かったな」
「「「「はーい」」」」
「(はい、息ぴったり)」
「赤坂優です。彼氏はいますか?」
「いません」
「「よし(やった)」」
「(今、女子いただろ!)」
「上川明です。好きな食べ物は何ですか?」
「ドーナツです」
「(次は大和田の番だ)」
「大和田二三矢です。今好きな人いる?」
「(まあ、彼氏いなくても好きな人くらいいるか。イケメン滅びろ)」
「初恋の人がまだ好きです」
「「「おおー!」」」
「(マジか。止めといた方がいいぞ。
初恋は気まずい。…って俺だけか)」
俺は頭の中でノリ突っ込みをする。
「初恋はいつですか?」
「幼稚園のときです」
「お前らそこから離れろ。まだ基本的なところ質問できてないだろ。」
七下先生が止めさせる。
「「「えー」」」
「それが嫌なら授業に入る」
「「「すみませんでした」」」
「…次の奴から」
はい、俺の番。そして、七下先生…頑張ってください。
ガタッ、俺は椅子から立つ。
「!?」
榛里が少し驚いた顔をする。
それもそのはずだ。榛里にとって俺の名前は田中(=霧山)状態になっているから。
誰でもいきなり『お』から『た』になったらビックリするだろう。だって、40人いるクラスで『か行』と『さ行』が全くいないのだから。
「おい、どうした?霧山」
「えっ・・・」
榛里がキョトンした顔をする。
「榛里さん、先に謝っておきます。
ごめんなさい。俺の名前は霧山孝之です。質問は特にないです」
俺の言葉を聞き、七下先生が「あっ、そうだった」という表情をする。
「大丈夫です。嘘を付くのは良くないですが、本当の名前が聞けて良かったです。霧山君」ニコッ
榛里は自己紹介以上の本当の笑顔を俺に向けた。
「「「「「ブシャー」」」」」
クラス全員が豪快な鼻血を出す。それは先生も。
タラー
「おっ」
しかし、俺は鼻血なんて出さない。
タラー
「・・・マジかよ」
こうして生物という名の交流会は終わった。
(孝之君) ニコッ




