素顔(1)
保健室で燐との関係はほぼ元通りになり俺は早速滞っていた個人情報の整理をしていた。
「そう言えば、転校生のことを調べるのを忘れていたな。名前は」
カタカタ
パソコンでいつものように調べようとするが…。
「おい、何でないんだよ」
転校してくる生徒の名前が名簿に更新されてなかった。夏休みのときには転校生が2学期から来ることだけわかっていた。
しかし、それ以外の情報を調べても出てこない。精々わかって性別のみ(女子)。噂では美人らしいが、そのせいで燐と…。
「困ったな」
俺はあの手を使うか迷っていた。
「仕方がない」
俺は余計な体力を使うのは勿体無いと判断し、あの手を使うことにした。
ポチッ
プルプル
「出るか?時間的に大丈夫だと思うんだが」
20時23分
ガチャ
『現在電話に出ることができ「ますよね?」…』
「切ったら例の情報を渡しませんよ」
すかさず俺は例の情報を人質にして切られないようにする。
『はぁ~。わかったよ。それで、用件は何?』
電話の向こうでは女性の声が聞こえる。
「転校生のことなんですけど、データが全く更新されてないんです」
『なるほどね。大俣くんには聞いたの?』
「"聞いたけど性別しか分からなかったて"言ってました」
『やっぱりね~』
「何がやっぱり何ですか?」
『一応、OBだから今でも在学生のことは調べているんだけど。その日は暇だったからアクセスしてみたら転校生のことがわかったの。それで、時期からして珍しいから詳しく調べようとして学校は勿論県の教育委員会の方も入ったんだけどデータが無くて…』
「珍しく諦めたんですか?」
『ううん。諦めたら負けだと思って文科省にも入ったり、友達にも聞いたんだけど成果はなかったんだよね。でも、その中に厳重なセキュリティが掛かったファイルが見つかって私が無理やり開いても企業名しか分からなかったの』
「で、そこからその企業を調べてわかったと」
『残念ながら分からなかったよ』
「…」
俺は彼女の返答が信じられなかった。それもそのはずだ。俺の師匠でもあり憧れの人でもあるのだから。
『ちょっと聞いてる?』
「あっ、はい」
俺は咄嗟に嘘をついた。
『聞いてなかったね。例の情報で今回は見逃すけど。え~と、企業名は"榛里カンパニー"ね』
彼女から聞いた僅かな情報を整理して床についた。
「榛里カンパニーか…。どこかで」
昔どこかで聞いたことがあったのを思い出したからだ。誰に言われたのは分からないが、可愛い女の子?が俺に自己紹介している。そこからの映像と名前は思い出すことができなかった。
そこで俺の意識が落ちた。光も届かない深い闇の世界へ。




