表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/33

43.忘れもの


43.忘れもの



 袋小路を無言で歩く。

 嫌な雰囲気が流れているせいで、一分が一時間のように感じる、と言っても多少の過言にしかならない。ルイとハルカナは嫌な汗をかきながら自分たちの靴音だけを聞き、ただ歩いていた。

「……これは……」

 耐えきれずにルイが言葉を発した。

「敵の術中にまんまとハマったのかな?」

 そして苦笑いでそう言った。

「……なんか、ムカついてきたわ。私たちだけこんなところで足止め?」

 ハルカナも口を開く。

「ねぇ、でもミズがいたのは確かなんだよね?」

「……」

 ハルカナは考える。

「ねぇ?」

 ルイは答えを急ぐ。

「……」

 無言のハルカナに疑問を抱き、ルイは後ろを振り返りハルカナの顔をライトで照らした。眩しい表情を一瞬みせたが、ハルカナは何かを考え込んでいるようだった。ライトで自分の顔を照らされても怒鳴らなかった。

「……」

 ハルカナの意外と素直じゃないところ、ルイは知っている。何かヘマをしたな? とルイは推測した。

「言ってごらんよ」

 ルイは冷たくそう言った。

「私だって、気を失ってたのよ!」

 言い訳から入るハルカナ。

「わかってるよ。だから、何か思い出したんだろ!? 別に何も責めやしないよ。無駄な時間を使ってたとしてもね」

 一言多いと思うがついついルイは言ってしまう。

「……いや……、ミズはさぁ、出口があるって言ったんだよねぇ」

「それは聞いたけど?」

「ミズはさぁ、地下にいる」

「は?」

「確か、隠し扉があって、そこから別の場所に繋がってるの。私、ミズの後ろ姿を今思い出したわ」

 ハルカナは半笑いでそう言った。頭を打ったせいだろう、そしてこの場所のせいだろう、思ったよりもハルカナの頭は混乱していたんだ、と、ルイはハルカナのことを許すことにした。実際何分を無駄にしたのかはわからないが、精神的には何十時間分だぞ、と、大袈裟にルイは不満を心の中で言った。

「はは。忘れちゃってたのよねー、作者と一緒よ」

 ハルカナは変なことを言った。が、ルイは無視した。

「……まぁ、いいや、思い出してくれただけでよかったよ」

 ルイはため息をつく。

「でしょ? 打ち所が悪かったら、私たち一生彷徨ってたかもよ? 感謝してよ。そして怒るべき相手は私じゃないくて、私を気絶させたやつなんだから!」

 ハルカナの言うことにも一理あった。

「そうだね、で、どこ? その出口」

「……」

 また沈黙。ハルカナの沈黙は悪い予感しか感じさせない。

「どこそこにあるのよ。でも……」

「でも……?」

 言葉を溜めるハルカナの顔を、ルイはじっと覗き込んだ。

「地下だって言ったでしょ? すっごい重い鉄の扉を開くことは、私たちにはできないと思う」

「……なんで?」

 ハルカナのその説明だけではいまいち納得がいかなかった。ミズに開けられたのなら、僕にだって……。

「取っ手が、ない」

「……」

 ルイはすぐに理解することはできなかったが、少し歩いた先に見つけた微かな段差を発見すると、ハルカナの言っている意味がわかった。

「なるほど……ね」

 でも、なんでミズはこの扉を開ける取っ手を持っていたんだ? ただの磁石といっても、それを常備しているなんて。ネスにもあるのか? ルイは深読みする。

「……さて、わたしたちはどうすりゃいいのかしらね~」

「……出口が下にしかないって、その仮説を捨てよう」

 ルイは言った。

「自信ないなぁ……」

 ハルカナは弱気に言った。

『誰か……応答願います』

 ルイはダメ元でカフスをいじる。


『……ルイ?』


 すぐに返事はきた。予想外のことにルイは驚いて暫く口をぱくぱくとさせてしまった。

『あ……、あ? スペースシフター?』

『はい、ハートです。みんなもいますけど』

『ルイ!?』

『レイスター!』

 思わずルイは懐かしくレイスターの名を呼んだ。昔はルイもハルカナもレイスターと気軽に呼んでいた。いつからか、『総長』、『キング』その名で呼ぶようになってしまったが。

『コウテン城の地下にいるんですが、袋小路にはまってしまって、方向感覚を失ってしまいました。僕らがどこにいるのか、そちらのモニターで確認できませんか? 電波悪いし、無理ですかね』

『えーと……』

 レイスターが口ごもった瞬間ハートが割り込んでルイの通信に入った。

『ルイくんの電波キャッチしましたよ! バートンが近くにいることによって鮮明にわかります。バートンはアンテナの役割も果たすんですよ。スペースシフターから離れるとみんなの電波が悪くなったから、これはバートンの出番だなって思って、ミズさんももっと早くバートンを……』

『ハート! 一刻も早くここから出してくれ!』

 ルイはハートの言葉を遮った。無駄な時間とはこのことだ。僕らが迷っていた時間よりも無駄だ。

『はい……』

 ハートはぶすくれてルイに従った。私って、こんな子どもにまでこんな態度とられるわけね。いじけていた。

『……、戻りましょう。バートンを外に待機させておきます。バートンからカフスに電波を送るので、それを感じ取って入り口に戻って下さい』

『……この先に道はない?』

『なんとも……、モニターでは正確に確認できません……。その場所は入り組みすぎています。早くそこから出た方が賢明だと思います』

 そのハートの言葉にはどこか含みがあった。

『出るの? レイスター』

『ああ、出る』

『わかった』

 ルイは納得した。

『早く脱出しろ』

『了解』

 ルイとハルカナは顔を見合わせた。

「始まる……」

「うん……」

「ミズはどうなるの?」

 ハルカナは不安げな声で言った。

「わからない……。みんな……、わからない」






「伝令! 伝令!」

 黒のポーンの姿をアザナルは捕らえた。

「お前はルーク隊の……」

「アザナル隊長に伝令!」

 その伝令役の顔には何か深刻な状況を物語るものがあった。

「手短に」

 アザナルは努めて冷静にそう言った。

「キングの間でザルナーク隊長、他ルーク隊数名交戦中。応援要請!」

「なにぃ!?」

 冷静、という言葉はすぐに吹き飛んだ。

「なぜそこまで許した! 俺らが見落とすわけないだろうが!」

 またしてもアザナルは伝令につっかかる。

「敵は、3人です……。少数ゆえ……あと……、かなり腕の立つ奴がいます」

 3人?

「……バカにしてんのか……」

 呟くようにアザナルは言った。ポーンの胸ぐらをつかむことはしなかった。

「ビショップ隊! ここは任せる!」

 黒のビショップに向かってアザナルは叫んだ。

「……ああ! ……いや……」

 力強い返事のあとに黒のビショップの言葉が途切れる。

「?」

 アザナルは黒のビショップが見つめる先を自然と見やった。♦艦隊だけならビショップ隊で十分だろう。

「……なんだ? あれは……」

 ♦艦隊から後方に、大きな影が見えた。それは……。


「チッ……」

 アザナルは舌打ちせずにはいられない。

「いい! 行け!」

 黒のビショップ、アレンは言った。

「だが……」

 あの禍々しいオーラ。本命の母艦が出てきたに決まっている。ここじゃ守りきれない。アザナルは自分の最善の行動を見つけようと必死だった。

「ナイト! キングをとられたら負けなんだ」

 ビショップはそう言った。

「戦争は、そういうことだ」

 その言葉にナイトは動いた。

「キングの周りにいる敵の駒は三つだな?」

 伝令にアザナルは今一度問う。

「はい」

「そこにルーク、ナイトが揃えばキングはそう簡単にとれないだろ」

 アザナルから迷いが消えた。

「アレン! 俺の隊も任せる!」

「いいのか?」

「こっちは3人だぞ!?」

 すでに走り出しながらアザナルはそう言った。その言葉にふっとアレンも笑う。

「まぁ、そうだよね。こっちは大丈夫さ。俺の予想じゃそろそろ……」


 不穏な異物がコウテンの空を舞いこの城に近づいてきているが、その前にこの城へ辿りつくであろう白い天使がアレンには見えた。

「ほら、こっちにはルークとビショップと大量のポーンだ。ヘマするんじゃねぇぞ、ナイト」

 アレンは余裕の笑みでアザナルを送り出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ