33.真のもの
33.真のもの
「くっそ……。やりづれぇ! もうおおよそでいい! 城内に着地しよう!」
バインズが城門にズラッと並ぶ黒の騎士団の銃撃と、城を取り囲む迫撃砲を避けながら、そしてそれを破壊しながらそう言った。
「ライラ隊長ってどーやって入ったわけ?」
さすがのミレーも顔を歪めた。撃ち落とされないようにしなくては。少しでも隙を見せたら破壊される。
「さぁな……っと!」
バインズが乱暴に答えた。
「着陸って……どこ?」
ランドバーグは避けるのがうまい。破壊の任務は一切放棄して空を飛びまわっている。
「お前がいちばん余裕あるんじゃねぇのか?」
バインズは嫌味を言わずにはいられなかった。
「実戦は向いてないんだよ!」
言い訳だ。
「よく♠になれたな!」
「テストだけ点数取れちゃうタイプねー」
ミレーがバカにするように笑いながら言った。
「お前ら……」
言い返したいが言葉もない。自分がこんなに腰ぬけだとも思わなかったし、みんながこれほどまでに戦えるとも思っていなかった。バインズのことだってバカにしていた。なのに……、あいつは今や立派なリーダーだ。ジャスティーとやり合ったって日から、あいつ変わった……。ランドバーグは何か府がいない思いを感じていた。
「バインズ! さすがに軍事塔の滑走路に降りるつもりはないけど、中庭があるわ!」
アリスが叫んだ。
「んー……、中庭ねぇ」
「てかさ、降りるとこなんて選んでられないわよ。この城も広いし、キングがいるって場所はどの辺なの? もうそこに不時着でもなんでもしたほうがいいわよ」
ミレーが叫ぶ。
「それがわかってたらそうするよ! ライラ隊長の座標はちょっと中央から離れてる。きっとキングの塔じゃない」
「あんた言ってんじゃん自分で。やっぱりキングは中央の塔にいると思う?」
城は、大きく分けて五つの塔から成り立っていた。正面に堂々といちばん大きな塔が見える。中央の塔の左右にある塔は、白と黒の装飾がほどこしてあり、やたらと武装がされてあった。てっぺんには明らかに数機の戦闘機と離着陸場がある。中央を守るにはうってつけの構造だった。
「中央に……突入か?」
バインズは自分の判断が正しいのかいまいち自信が持てない。
「中央だよ。キングは」
それを後押しするようにアリスが言った。
「攻め込まれることを予想してないのなら、きっと王なんてものはその存在を象徴するために全面に威厳を出してくると思う。まぁ、今や奥にひっこんでいるのかもしれないけれど、それにしても、中央のあの金色の塔を潰すのは向こうの士気にも関わるいい標的だと思う」
「……だな」
しばらく考えたバインズはそう答えた。
「目指すは中央だ! 各自で着地次第動くぞ! あ、ちゃんと対空砲だけは撃っていけ! あとで母艦が来るからな」
「僕がひきつけとくよ」
そこで意外な声が聞こえた。
「は? 一緒に来い!」
「後から行く! 僕のエネルギーはありあまってる! こんなんで♠を名乗れるか!」
ランドバーグは言った。
「……。お前、城内のほうが怖いなんて言わないよな」
バインズは言った。
「ふざけるのも……!」
ランドバーグは多少の後ろめたさもあったが、精一杯の自分のプライドを守るために本気で言った言葉だった。
「悪かった……。だけど、危なかったらすぐに逃げろよ」
「……それだけは得意だから気にするな」
ランドバーグは笑ってそう言った。
― 黒の騎士団 ―
「アザナル隊長!」
黒の騎士団たちはバインズたちと交戦していた。あまり遠方狙撃は得意ではなさそうだった。
「あいつらかよ……。くそ、イリスのところに行く前に着いちまったか……。ケイト団長は何やってんだ! 遠距離戦法は白の専門だってほざいてただろ!」
「コーネル様がいないから……」
ポーンが呟く。
「言うな!」
アザナルはその名を聞きたくないようだ。
「……ん? リアは?」
そこでふとその存在を思い出した。
「え?」
「白のビショップ隊はどこに行った?」
「あ……」
混乱の中、味方内でも情報の通達がうまくできていなかった。
「あいつ……」
アザナルはぐっと唇を噛む。
「ザルナーク団長は?」
「後宮を守っておりましたがこの状況、きっと指示を仰ぐためキングの元に行かれたかもしれません」
「だな、あそこは、そう簡単に落ちないし……」
アザナルは少し考え込んだ。イリス……。大丈夫だよな。あそこは、この城のなかでいちばん安全な場所だ。部屋の扉を閉めてしまえばもう立派なシェルターだ。
「しばらく持ちこたえろよ。俺も、キングの元へ行く」
「はっ!」
「ふん、迷ってないでさっさよ行けよ。黒のクソガキ」
その後方でコウテンの銃を手に持ちライラは周囲に溶け込みながらアザナルの後を付けていた。ちらと外に目をやる。ここじゃないぞ、お前ら。
正面からは見えない六つの場所がある。この城は横に長いが、視覚的に見えないところにひっそりとキングは隠れている。アザナルは全ての兵をおいて地下の階段に潜って行く。ちっ、厄介なところにいるもんだ。コウテンのキングってのは臆病者なのか?
銃撃を行っている窓からライラはコウテンの銃をかまえるようにして胸元のペンライトを握った。
「バインズ!!」
アリスが光線に気付いて叫んだ。
「え?」
シュン……
赤い光線がバインズの機体をかすった。
「なっ……。危なかった……」
機体スレスレ。かすかに機体の側面に焦げがついた。
「今の……」
アリスが呟く。
「ライラ隊長!?」
その赤い光線はよく知っているものだった。バインズたちはその光線が飛んできた方向を見る。ちっちゃく確かに赤い光を確認することができた。
「ライラ隊長だ!」
バインズが叫んだ。
「すっごー。何余裕でコウテンの軍の中に混じってんの?」
ミレーが呆れたように言った。
「ん?」
その赤い光は何かを指示しているように見えた。
「奥だ」
ライラは口で呟く。
「奥……」
ネスの子どもらは目がいい。ライラの口もとを読んだ。
「ああ、あのデカブツの奥ってことか」
バインズは中央にそびえ立つ塔に突っ込もうとしたが、ライラの指示が運よく間に合った。
「はぁ、隊長は隊長だな、なんかわかんないけどホッとした」
アリスがため息混じりに言った。
「ああ、俺もだぜ」
リーダーの役割を担っていたバインズも心底それを思った。
「早く俺らの真の隊長と合流しようぜ」
「バインズ、お疲れ」
アリスが爽やかに言った。
「頼もしかったよ」
それにはバインズも照れてしまう。
「おい! まだ外だって忘れてないよな! さっさと行け!」
ランドバーグが人が変わったように叫んだ。もっともなことだ。何隊長の顔見て安心してるんだ。辿りついてないぞ。バインズは今一度気を引き締めた。
「目標が決まれば後は突っ込むだけ。閃光突破が得意な俺たちの力、見せてやろうぜ!」
バインズが声高らかに檄をとばした。




