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32.不自然な星


32.不自然な星



 高度を下げると、ある違和感をミズは覚えた。確かに建物は立派で硬質なつくりになっているが、地面のところどころに土や雑草が見える。もともと、ここは自然であふれていた場所だったんだ。それも、とても豊かな自然だ。無理やり人工的な都市をつくりあげたのか。人間の力と欲で。

 この自然の力……。ネスの植物も不思議な力を持つが、負けていないくらいの生命力を感じる。この自然の力を封じるとは……、やっぱりコウテンは嫌いだ。ネスの麗しきこの世界に愛された自然たちも、こんなふうに無理やりに整備された美の建造物で埋め尽くされるのか? そう思うと、ミズはゾッとした。彼ら植物たちも……、生きているんだから。

「ミズ、左に旋回しましょう」

 ミズの後ろにつくハルカナが言った。

「左?」

「うん、バートンが映したリンゴの木が見えるわ」

「……」

 リンゴの木? ミズは目を細めたが見えなかった。

「ミズって目ぇ悪いんだっけ? 勉強のしすぎね」

 ハルカナは軽くそう言って笑ったが、ミズは特別に目が悪いと自分で思ったことがなかった。だけどハルカナが見えているというリンゴの木の存在を確認することはできなかった。

「どこまで、見えてるんだ?」

「リンゴの木だよ。森。本当に森がある。繋がってる」

「……。もしかして、ネスのみんなは視力がいいの?」

「普通でしょ? 見えないミズがおかしいよ」

 そうなのか? まぁいいか。とにかくハルカナには確実にバートンが通った道筋がわかるらしい。ミズは深く考える暇もない、と自分の疑問はおいておいて、ハルカナの後ろについてバートンの道を辿った。

「なんとなく……、ここはネスの未来なんじゃないかって思うわね」

 ハルカナは飛びながら言った。

「え?」

「無理やりに潰された自然。これは、私たちがこの戦いに敗れた後のネスの姿そのものだわ」

 ハルカナのその言葉にミズは暫く黙りこんで考えた。

「……、ここもまた、侵略した星なのか?」

 そしてそう呟いた。




「ミズ! 密林だわ! うってつけの場所」

「よし。着陸しよう」




―白のルークとアスレイ―



『ケイト団長! 城壁突破されました。前線を下げるようにとの指示が出ています』

 その通信を聞いても驚くことは何もなかった。

「……、ふん。知ってるわよ」

 あいつが着いた。いちばん、近づけたくなかった奴よ。


「……」

 アスレイは眉ひとつ動かさずに佇んでいた。

「お遊びもここまでね。さすがに疲れたでしょう。多勢に無勢。時間もないし、あんたの羽根も落ちそうだし? おいとまさせて頂くわ」

 ケイトはアスレイのボロボロになった機体を見てそう言った。さすがに1対1部隊じゃアスレイにも限界がある。特殊仕様のスピードのシールドも装甲板も、力を出しつくした。それでも、アスレイはただ、凛として佇んでいた。

「全機撤退! 城の防衛を第一優先事項とする!」


 ガシャン……!


 アスレイの機体から、ライラの機体に座標を打ち込んでふっ飛ばしてやったアームが今度はケイトの機体の細い尾を掴んだ。

「なっ!」

「俺、始めに言いましたよね。命を懸けてここで時間を稼ぐって。本気でやったところで俺一機1部隊で仕留められないようじゃ、どの道なんの助けにもなりませんよ」

 その言葉にケイトがキレた。

「死にぞこないが……。せめて見逃してやろうとしたのに……。包囲しろ! エネルギーの残量は気にするな! 終わるまで撃ち尽くせ!」

 ケイトは笑った。

「命拾いできたのにな」

 その言葉にアスレイは笑った。

「特段、今の状況に絶望も何も感じない」

「……なぜだ」

 思わずケイトは聞いた。何がそうさせる? その強い意志はどこからくるんだ。

「俺の行動に一切の間違いはないからだ」

「何をっ……」

「お前たちの行動は間違いだらけだ。人間を撃ち落としているという気にもならない。それぞれがただの機械も同然。何のために闘っている?」

 その間に包囲網は完全なものとなった。

「黙れ! もう、お前は死んでしまうんだよ」

「知ってる。しかし、ネスは死なない」

 アスレイは言った。

「ここに来て思った。ネスはすばらしい星だ。偽りの国、コウテン。滅ぶのは必ず悪だ。今、俺たちがここへ来たことによりこの星に審判が下ろうとしている」

 なるべくしてなっている。

「全機、目標を定めよ!」

 ケイトはもうアスレイの言葉を聞くことを止めた。聞けば聞くほど萎えるだけだった。今更、問われる筋合いはない。

「全機、う……」


 ババババババババババ……!!


「?」

 何か、変な感じだ。アスレイは思った。俺、生きてる? 最後、相手の声がおかしかったぞ。


「兄さん! 一旦戻って!」


 !? 知らぬ間に目を閉じていたアスレイは目をひんむいて機体の中で飛び起きた。

「シ……シスカ!?」


「ガドリングシステムON! 側機からのエネルギーを吸収、還元」


 その横でルイが機体をくるくると回転させながら流れるようにエネルギー散弾を撃って白の機体を撃ち墜としていた。

 アスレイにのみ集中してた白のルーク隊は、シスカとルイからしてみれば格好の的だった。個人個人の能力の高さが、特攻では光る。


「ルイも!? お前ら無事だったか」

「こっちのセリフだよ。ジャスティーを探すのに精いっぱいで、連絡もつかなかったし、そっちからもこなかったし? みんな自分の任務で手いっぱいなんだなって思った。まさかここまでの危機的状況に兄さんがいるとは思わなかったけど」

 シスカはそう言うと笑った。

「何笑ってる」

 少し不機嫌にアスレイは言った。シスカもまた、2本のスピードの銃創をアームに変えて、お姫様だっこみたいにアスレイの乗ったスピードを抱えていた。

「とにかく、兄さんの機体は限界だ。一度スペースシフターに戻って。救援信号で座標もわかるよね?」

「おい、お前らだけでどうにかする気か?」

「大丈夫だよ、僕らは2人だし、突破が目的だからね」

「そんな……、ここで食い止め……」

「兄さんって意外と頭硬いよね、兄さんがここで死んでもらっても困るんだよ。兄さんを助けることできた? 僕」

 シスカはそう言うとしばらくアスレイの言葉を待ったが、アスレイはそれについて上手く言葉を返せなかった。

 シスカは寂しそうにクス、と笑った。

「頑固だね」

 そしてアームでアスレイの機体の後ろをイジり出した。アスレイがさっきライラにしたことと同じだ。

「まっ、待て! シスカ!」

「何? 僕だって、兄さんに負けないぐらい、機械の整備得意なんだよ。自分の機体はもちろんイジってる。この機体の特徴も知ってる。好きなところへ強制的に飛ばせるように細工をしたのは兄さんだよね?」

 ニタッとシスカは笑った。

「遠慮なく使わせてもらうよ」

 ピ、ピピ、ピ

「ちょ……待て、かなりのやり手だっ……」

「だったら、早く助けにきてねっ!」


「シスカッ!」


 届くはずのない手をアスレイは伸ばした。その手は届くはずもなく、後方遥か彼方へアスレイの機体は飛んで行った。


「ま、いっか」

 シスカはなんとなくそう呟いた。幾分満足そうに。言葉では聞けなかったけど。きっと、兄さんを守れた。よかった。間に合って……。今更になって汗が出てきた。


「シスカっ! 奴ら、撤退する!」

 ルイが叫ぶ。

「えっ!? 追いかけなきゃ!」

「いや……」

 ルイは動きをとめシスカの横へ来た。

「あっちがそう来るなら……、僕らは少し間をおいてついていこう」

「……確かに」


 ルイとシスカもまた、全ての者たちがあつまる王の城へと標準を合わせた。





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