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28.交代

28.交代



 ライラは常に機体を動かし続けた。止まったら、大勢の敵機の標的になるだけだ。前後左右上下。空間を飛び回り、ケイトの機体を狙い撃つ。

 ガツン……。

「特殊コーティングか?」

 ライラは眉間に皺を寄せた。その時、右方からの機を察知する。すかさずその敵機を撃つ。 望むままにその機は大破した。……だよな、普通。

 そして……、


 ダン! ダン! ダン!

「ちっ!」

 ケイトからの光線銃を一発だけ避けきれず食らった。しかし、シールドが守ってくれる。だが、その一発の攻撃でシールドがノイズをだし、損害を受けたことがわかった。

 戦争好きが……。

 ライラはそう心の中で思ったが、人のことが言える人間ではなかった。ライラの口元もなぜか緩む。

「誰かをぶっ殺すってのは、久しぶりすぎて……」

 操縦桿を握り直す。

「勘を取り戻すか……」




「ケイト団長!」

「バカ! 近づくな……!」

 バン! ケイトの視界に映る範囲内で白い翼は折れていく。

「くっ……」

 隊長格の機体装備でないと、この虫ケラマシンには勝てないってことね。乗ってる人間も、私たちの隊より上……。指揮官級……。人数は関係ない戦いになってくる。

あの青いシールド……。邪魔だ。

 バァン!

 味方にすら愛情はもたないタイプのケイトだったが、コーネルも墜とされた今、自分の騎士団の機体が打ち砕かれていくのを見ることは不快でしかたなかった。

 ちょこまかと動いて、こっちが標準を合わせる暇もない。なのに……。ケイトはライラのスピードを見る。

 あいつはその中で標準を合わせてくる。

「全員、向こうに行け」

「は?」

 ケイトの部下たちの動きが止まる。ライラは一応空気を読み取って止まった間は敵を撃つことをやめた。

「残りのやつらを後方から攻めろ」

「しっしかし……」

「邪魔だ」

 ケイトは一言そう言った。見苦しいし。


『1対1で、文句はなかろう? 異星人が』

『……。配慮は結構だ』

『あら、セクシーな声。もしかして男前?』

『もしかして女なのか?』

『だったら何? 女に手を上げるなんてできないジェントルマンなのかしら?』

『いや、男も女も関係ないさ。ただ、男だと思ってた』

『……なんで』

『……なんとなく』


 ケイトはその言葉になぜかカチンと来た。誰が男っぽいですって? 意外とケイトにとってはデリケートな部分だったらしい。

『私がお相手してあげるわよ、この不細工男!』

 ケイトが勢いをつけてライラに突っ込んだ。

「!?」

 ライラは間一髪でそれをかわす。体当たり? 頭悪いのか?

「銃でちびちびやってちゃあキリがないじゃないの」

 男女……。ライラは眉間に皺をよせた。

「私の機体って頑丈だしぃ? きっとそっちよりも」

 体当たりしたところで、シールドは……、もつのか? ライラは自分に問いかける。まぁ体当たりなんてバカげた戦法も、銃撃戦も、俺の戦い方の基本は同じだ。

 動く。的とならぬように。

「ほんっと、うるさい虫!」

 ケイトは顔を歪めて戦う。楽しくない。この上なく楽しくない。こんなに楽しくない戦闘なんて初めてだわ。なぜかしら……。

 なぜ……。

「きゃっ!」

 ケイトのコックピットのウィンドウにライラの光線銃があたった。ピシッ、微かな音が聞こえた。

 あぁ、そうか……。「勝てる」って確信がないからか……。

 ギリッ…… ケイトは歯を鳴らす。

「……っ! 負ける確信もないんだけどな! 逝っとけ!」

 ケイトは戦術無視の特攻とも呼べる行動に出た。ジャスティーと同じだ。

 動けないように……、くっついてやる……! 操縦の腕は負けると認めてやるが、戦は勝てばいいんだよ、勝てば……。

 グイッ……。

 ケイトは自分の機体をライラの機体に向かって突進させた。迷いのない速度で。

「くっ……」

 先の読めなかったケイトの行動に、ライラのスピードは一瞬躊躇した。


 バチン!


「……?」

 ケイトは全く手ごたえを感じなかった。しかし、確かに当たった。



「お前……っ」

 ライラは珍しく驚きの表情でそう呟いた。


「交代しましょう」


「アスレイ!?」






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