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女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第1章 異世界に落とされた少年
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間話1 師匠なる者

割り込み投稿です。第一章でのアルフレッドの視点です

 〜アルフレッドside〜



 アラスがついに去ってしまった。心配だ。今まで弟子を送り出した後でこんなに不安になった事はない。


 あの子は物覚えが異常にいい。そう、異常なんだ。完全記憶能力を持っているんじゃないかと本気で疑う程に。だが、頭脳明晰な癖に余り物事をちゃんと考えようとしない。しかも、彼自身は頭が悪いと考えているらしい。


確かに否定は出来ないが、こと、ものを覚えるのに関して言えば、彼の右に出るものはいないだろう。ちゃんと色々考えればいいのに……いや、時々無駄に難しい事を考えている時もあるようだったが………


 その為、アラスの次の行動は実に簡単に予測出来る。いつも、戦闘の時のようにあの頭を働かせていればいいのだが……まあ、それが出来ていたら僕も大した苦労もせずに彼を卒業させられただろう。それが出来なかったということは……そういう事だ。残念ながら。


 アラスはアリス・フランチューレと会う為に、アルテール王国に行くだろう。彼は隠そうとしていたようだが、僕には直ぐに分かった。あの子は≪異界人≫だ。間違いない。


 この世界に全く行くアテが無い彼は、僕の漏らした情報の中で、1番興味深いものがある場所に行くだろう。


 だいたい、あの頃の僕らと何もかもが同じ過ぎる。あの顔も美し過ぎるし、何よりユニークスキルが4つという事がそれを確定付けている。


 ……いや、≪異界人≫で無くてもユニークスキルを2つ持つ少女がいた。リリィだ。あの子は一体何者なんだろうか………




 〜4年程前〜




 弟子たちを送り出した僕は、異常に強大な魔力を辿って、ここ、ナベリウス帝国に来ていた。最近、ナベリウス帝国が不穏な動きをしている。という情報は手に入れていたが、僕に手を出して来る者はいないだろうと思い、対した警戒もしていない。


ナベリウス帝国は治安が悪い。今人界でここ程治安が悪い国は無い。と、断言出来る。何故いきなりこんな話をしだしたか。だって?それは先程から僕を狙っている視線がチラホラあるからだ。


しかし、誰も襲おうとはしない。僕が目立つからだ。目立つ奴を襲うと襲ったほうも目立ってしまう。無法者は頭が悪いと考える人が多くいるが、そんな考えでは足元を掬われてしまう。


  あれから幾年経ったのか、僕には殆ど分からないが、もう数百年にはなっただろう。≪真王≫と名乗っていた僕達は、幾つかのうざったかった国を滅ぼした。


とは言っても、皆殺しにした訳では無い。上層部の腐った連中を消して行ったら自然と国が消えたのだ。まあ、あんな連中が消えたくらいで無くなる国なら滅んでも何の問題も無いだろう。


 何故そんな事をしたのだったろうか?

 う〜ん、何か途方もなくくだらない理由だった気がする。まあ、あの頃の僕らはやりたい放題だったし。理由なんてどうでもよかったのだが。


≪真王≫はまさに恐怖の象徴だった。魔王よりも恐れられたんじゃ無いだろうか?………いや、間違いなく魔王より恐れられていたな。本当に、懐かしい話だ。


 僕は今、孤児院の前に立っていた。

 周りは正にスラムという風貌だ。足元はゴミでまみれ、心なしか、見渡せる風景が灰色じみて見える。辺りはもう暗い。


 強力な魔力は、ここから発生している。これは……総魔力量に限って言えば、何人かの魔王を凌駕しているんじゃないだろうか。孤児院に入ると、一瞬誰もが固まった後で惚け、更にその後親の仇でも見るような視線で迎えられた。


この反応はもうどうしようもない。一度、認識を阻害する道具を作ったことがあるが、それが壊れた瞬間、近くにいた人の何人かが気絶してしまった。アレ以来、僕はもう顔に関しては放置している。


この世界では、女性の美形は多いのに、男性の美形は少ないのだ。この世界を管理しているのが女神だからだろうか?そればかりは僕にも分からない。子供たちが敵視の視線を向けて来たのは、貴族のような格好をしていたのが気に入らなかったのだろう。


 貴族では無い。と伝えておやつをあげると直ぐに警戒心が薄れたのが分かった。

 チョロい。ああ、こんな事を考えてはいけないな。純粋だ。その表現が正しい。うん。


 いや、たった一人だけ警戒を解いていない子がいる。綺麗だ。実に。………いや、正確に言うと恐怖を感じる程美しい。ああいうのは、アルビノと言うんだったっけ?真っ赤な瞳に真っ白な髪。実に特徴的だ。


 まあ、この世界での医学的な呼び方は知らない。彼女のように真っ赤な瞳をしている者は、忌み子だと言われ、大抵が幼い頃に殺される。有名な魔貴族『吸血鬼』が真っ赤な瞳をしているせいだろう。


 うん?ああ、彼女が魔力の発生源か。確かに異質だ。異質であれば異質である程、魔力量が多くなる。これは僕の持論だが、恐らく間違ってないだろう。ラファエールは答えを教えてくれないが。


 うーん、説得が面倒臭そうだなぁ......確かに、ヴァレフィオルのやろうとしている事を事前に防ぐだけの力はありそうだが。

 ハァ〜、もう、何で素質のある子はこんなのばっかりなんだろう?


 僕は、一歩足を前に動かした。




 ▲▽▲




 アラスは唐突にやって来た。何でも、空からやって来たらしい。面白い冗談だねと笑い飛ばしたが、彼は真顔のままだった。一体、何をしたら彼女をそんなに怒らせる事が出来るんだろうか?


彼は、ラファエールのヴァレフィオルに対する最後の説得の為にこの世界に呼ばれたのだろう。僕はすぐにそう思い至った。


 彼女は余りにも優し過ぎる。既に、説得なんかを出来る段階では無い。そんな事はラファエールにも分かっているだろうに……彼も、随分と辛い運命を背負わされたものだ。可哀想に。


 私は直ぐに彼を弟子にすることを決めた。それがラファエールの願いなのだろう、彼女には大きな借りがある。返さなければいけない。それに、ヴァレフィオルを止めるのは僕の願いでもある。


 彼は、既に大きな力を持っていた。

 武力ではない。優しさだ。クサイ台詞に思えるかもしれないが、優しさは武力に勝る力だ。間違いない。彼自身はそう思っていないのだろう、時折、俺は最低なヤツだと言って泣きそうな表情を僕に見せていた。


 だが実際、リリィは彼にあってから随分と変わった。ドラゴンと戦って来たと聞いた時は流石に僕も驚かせられた。竜族はこの世界において、絶対の存在だと言える。時折、竜族の逆鱗に触れた魔王が滅ぼされた。という話を聞く。どれも実話だろう。ドラゴンとは、それだけの存在なのだ。


 恐らく、僕ですら30体以上の竜族に囲まれたら危険な状況に陥るだろう。負けはしないが。それを、アラスはたった一人で倒したというのだ。リリーの為に、命を張って。一体のドラゴンとはいえ、倒すのは今の彼には実に難しい事だったろう。


 アラスは、≪紫結晶の魔眼≫を使えば誰にだって勝てると思っている節がある。

 が、実際にはそうではない。アレは、雑魚を片付けるのにはうってつけのスキルだ。国を滅す事も容易に出来るだろう。


 だが、スキルには≪王格≫の高さによっては発動しても効果を示さないものがある。≪王格≫とはつまり存在の格の事だ。それが高ければ高いほど、他の影響を受けにくくなる。


≪王格≫は、種族によって違う事があるが、大抵はその存在の強さに比例する。誰もが、知らず知らずの内に使っている力だ。


 竜族は種として既に強力な力を誇っている。≪紫水晶の魔眼≫では効果は現れなかっただろう。どうやって倒したかを聞いた所、何も覚えていないらしい。怪しいな。まだ僕は信用されていないんだろうか?ちょっと、悲しい。


 それからの彼女は見違えるようだった。よく笑うようになり、何時もアラスと一緒にいた。いつだったか、彼女が顔を真っ赤にしながらアラスにアーンをしようとしていた事があった。あの普段無表情なリリィが顔を真っ赤にしていたのだ。眼福だった。


 それに対してアラスは、何で?とか巫山戯た事を抜かしていた。殺意を抱いたのはいつ以来だったろうか?泣いたリリィを前にして、アラスはオドオドするばかりだった。僕は本気でアラスを殴った。


机に頭をめり込ませたアラスをみて、リリィは一切の迷いなく僕に雷魔法第三階級≪神の裁き(ディバインスレイプ)≫を放ってきた。≪神の裁き≫は雷を雨霰のように降らせる魔法で、雷魔法の最高位に位置している。当然、屋敷の半分が消し飛んだ。


 楽しい毎日だった。アラスも一緒に卒業試験を受けさせろというリリィを宥めるのは、本当に骨が折れた。アラスには、まだ教えていないことが多過ぎた。


 リリィは結局、アラスに、いつか絶対に会いにきて。とか、ずっと離れない。とか、いつまでもアラスを見ていたい。

 という風な事を言って、アラスに泣きついた。


 別に聞き耳を立てていた訳じゃ無い。

 いつもご飯を食べる場所で、それも僕の目の前でそんな事を言っていたのだ。

 せめて自分たちの部屋でやってくれ。


 アラスは約束すると言っていたが、これがプロポーズのようなものだったということに気付いてはいないだろう。彼は本物の朴念仁だ。僕もよくそう言われていたが、実際の所、僕のは気づかない振りをして反応を楽しんでいただけ………


 おおっといけない。本当の…ゴホン。

 嘘を言ってしまった。謝罪しよう。


 それにしても……彼は、自分に好意を抱く人がいる訳が無いと認識しているように見える。どうせ今のだって、リリィが自分の何かを気遣ってそんな事を言っているのだろう。とか考えていたに違いない。


 背中をいつか刺されなけばいいが………

 最近のリリィは少しアラスに依存しているように思える。アレは危ない……


 僕もあの状態になった女性には苦労したものだ。もう、何人の女性に刺されたのかも覚えていない。3桁は超えて……ないよ?せいぜい2桁くらいだったかな。うん。


 選択を一歩間違えれば、それだけでアラスは……心配だ…頭が痛い。




▲▽▲




 リリィは結局僕を殺そうとした後、


(本気だった。何か怨まれるような事でもしただろうか)


 直ぐに出て行った。最後に、彼女には瞳を緑に見せる為の指輪をあげた。これから、絶対に必要になるだろう。


 何故か瞳の色を変えるのを嫌がったリリーに理由を聞いてみると、アラスが瞳が綺麗だと褒めてくれたのだという。

 彼は、本当に酷い男だ。

 僕ほどじゃ……いや、僕よりも酷い男だね。うん。間違い無いね。多分。


 ちなみにアラスにはこの指輪をあげはしない。≪完成された吸血鬼≫、あれは、あってはいけないスキルだ。全く完成されてなどいない。本来、人族が魔族の力を行使するのは禁忌にあたる行いだ。


 どんな副作用があるのかも分からない。

 が、ラファエールがあのスキルを与えた事には何か理由があるはずだ。僕は、それの邪魔をしようとは思わない。


 まあ、彼のスキルを利用すれば、瞳の色を変える道具なんて幾らでも作れるのだが。彼はそんな事にも気づかない。

 ……アラス…大丈夫かなぁ。過保護とかじゃなくて、本当に心配だ。


 僕の弟子はほっといてもヴァレフィオルに襲われる。彼は、僕の事が嫌いだ。

 何人もの力無き弟子達が殺されて来た。

 最低限の修行はさせていたのだが……

 まあ、あの2人なら大丈夫だろう。戦闘能力的には、だが。罠とかにはまったらどうだろうか…………いや、大丈夫だよね。多分。




▲▽▲




 そんなこんなでアラスも出て行ってしまった。今の所ヴァレフィオルに通用するスキルは、≪理を断つ者≫だけだろう。あれは、≪影響力≫がとても強い。僕の≪王格≫ですら破られてしまった。あの時は一応(・・)本当に死を覚悟したのだ。まぁ、本気の状態なら僕の≪王格≫が破られる事はなかっただろう。ヴァレフィオルがアラス相手に油断する事を期待するしかない。


 アラスは、僕がなんでも出来る完璧超人だと思っているようだが、僕だって一応人間なのだ。明言は避けるけど。


 だいたい、僕の不老不死は(大)と表示されるのだ。彼のには大も中も小も表示されない。一体、どうなっているんだ?


 まあ、間違いなくラファエールはアラスを4番目の現人神にするつもりだろう。

不老不死(大)は現人神の特権だ。何も表示されないということは、恐らく(大)より強力なのだろう。


 今の所現人神は僕と、ヴァレフィオルと、アリス・フランチューレだけだ。もしかしたらリリーも新しく入るかもしれない。現人神とは要するに神のごとき力を持ったものの事だからね。リリィならいづれなれるかもしれない。今現在、アリス・フランチューレだけが信仰を受けている。


 まあ、彼女の場合は仕方ないだろう。彼女だけが、信仰によって現人神にさせられたのだ。哀れな子だ。本当に。


 アラス。ヴァレフィオルの前に、彼女を救ってくれると嬉しいな。僕は宗教ってのが嫌いでね。あんなものに人生を狂わされているアリスが不便でならない。

 どうか、糞どもから彼女を守ってあげて欲しい。まあ、僕が頼まなくてもアラスは勝手に助けるだろうが。





「さて、行こうか」






 僕は、新たな弟子を探すために旅に出た。



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