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女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第4章 動き出す物語
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48話 精神世界

超〜お久しぶです!


夏休みも終わりに近付き受験勉強のため投稿をしばらくやめていましたが、前から貯めてあったストックの内の一つを解放しようと思います(^O^)/

 目を覚ますと、そこは真っ暗な世界だった。

 地面は氷の様に冷たく、冷え切った体から最後の熱を奪っていく。

 まるで、ラファエールに会う時の真逆をそのまま体現しているような世界だ。


 確か、俺はさっきあの糞女に嵌められて心臓をナイフで突き刺された筈なんだが……



「いや、ここどこだよ」



 何でこんな所にいるんだよ。

 いつも通り『完成された吸血鬼(スクレ・ヴァンピール)』の≪緊急発動≫で回復しろよ。

 とっととあの女取っ捕まえて情報を吐かせねぇといけねぇんだよ。



「…血ダ…寄越セ……何モカモ…肉ヲ…体ヲ……寄越セ……ッ!」



 唐突に、声が聞こえた。 何も無いように見えるこの空間で、荒々しい、声が。


 その声は悪魔の囁きのように生理的嫌悪を呼び起こさせる声だった。言うなれば、餓狼の唸り。極限状態にある者特有の、危うさが内包されていた。


 思わず、背筋がゾッとする。


 なんだ?この声……どっかで聞いた事があるような……



「って、ああーードラゴン倒した時とかランドと戦った時とかに聞こえた声か。何時もより鮮明に聞こえるから、一瞬分からなかったや。で、あんた誰?此処はどこ?ってか、ラファエールの奴、どうゆうつもりだよ。やっぱりこのユニークスキル不良品じゃねぇか」



 役に立つから、別にいいけど。てか、あれな?見えない相手と会話をするっていうのは、中々精神的に来るものがあるな。なんて言えばいいんだろう、不気味…とかも当然あるけど、痛々しい?まぁ、そんな感じ。何より、真っ暗なのが気持ち悪い。


 

「不良……無イ……ガキ…女神……契約…」


「所々分かるんだけどさぁ…何言ってるか分かんねぇよ。不良品じゃ無く?俺の事をガキだと呼んで、後…女神?ラファエールと何らかの契約をしたって事か?」


「流石……イイ脳……使ッ……」



  『流石、いい脳みそを使っているだけの事はある』って感じか…?



「誰だって分かるよこんな事っ!褒められたって嬉しくなんて無いんだからねっ!」



 いや、頭良いって言われたの超久し振りだったから、ぶっちゃけ嬉しかった訳だけど。

何?割と会話とか出来る奴なの?仲良くとかなれちゃって、心の中で俺の事をサポートとかしてくれんの?



  ーーと、一通りのボケをかましながらも、俺は周囲の状況を確認する。段々と暗闇に慣れてきているせいだろう、地面に散らばっている(まば)らな物が、何なのか見えてきた。


  ーーそれは、骨だった。腕や足、指に原型を止めていない数多(あまた)の破片が、俺の半径数メール先を延々と埋め尽くしている。更に遠くを見渡すと、幾つも幾つも積み上げられた、頭蓋の塔が、点々とーー




  はいッ!僕はなぁぁあああーーんにもッ!見てませ〜〜んっっ!!いや〜疲れてんのかな?今、これ何万人分だよ。とか、訳の分からない思考がだだ漏れになってたけど、うんっ!


  今は情報収集が優先だからっ!この辺な声に集中してなきゃダメだよねっ!?ねっ!?


  よ、よしっ!忘れた、全部忘れた。ハイッ!take2行きますよーー!!!



「キモ……コレ……ガキ…」


「誰がキモいって!?五月蝿えんだよ!隠れてコソコソ人の事を馬鹿にしやがって!姿を見せろ!!」



 どうせよくわかんねぇだろうから馬鹿にしても大丈夫だろってニュアンスが思いっきり伝わってきたぞ!!こんなすぐに人の事をキモいとか言う奴とは仲良くなれんな。追い出してやろう。今すぐに。



  強がんなよって?ほっとけ!ほっといてくれよ!お願いだから!



「姿ヲ……無理……体…寄越セ……!」



体を寄越せ……か。こいつの狙いは俺の体な訳だな。益々何者か気になってきた。まぁ、怖くて聞けないけどねっ!


そこで一旦深呼吸をして冷静になる。体を奪い取ろうとするなぞの存在に対する返答なわけだし、しっかりと否定の意を示さないといけないだろう。


「ーーやだよ。体はやらない。姿を(あらわ)せないなら。とっとと俺を元の世界に返せ。どうせあれだろ?ここ、精神世界とかそんなんだろ?いざとなったら俺、力付くで帰るから、そうなったらお前も結構やばいんじゃないの?」


 精神世界の崩壊は精神構造に深刻な異常をきたす。そもそも、こんな所に他人を連れてくる事自体がイかれてる。ってか、マジでこいつ誰だよ。



『ラファエールぅぅうう!君の可愛い使徒がこんな所でわけわからん奴に囚われてるよぉお!助けてぇえ!!』



 って言っても、どうせ助けになんて来てくれないんだろうなぁ……ってか、この様子じゃここが精神世界にせよ何にせよ、こいつ自体は危険じゃねぇんだな。体を寄越せとか言うだけで実力行使に出てないのがいい証拠だ。


  まぁ、現時点ではーーだけどな。



「ガキ……戦争…負ケ……体…頂……ッ!」



  俺が戦争に負けた時、体を頂くってか。



「あっそ、勝手に言ってろよ。俺は戦争に負けねぇし、体もお前の物になんてならねぇ。もしなったとしても、絶対取り返してやるよ」


「……無理…ガキ……オツム……」


「お前俺の頭脳の事褒めてんの?(けな)してんの?人様のオツムを馬鹿にする奴が1番馬鹿なんだよ!バーカ!バーカ!!」


「取リ…敢エ……返ス…必ズ……手ニ…」


「はぁ?えぇっと…取り敢えず元の世界に返してやるって事か?後半部分は…必ず体を手に入れてやるって感じか。まぁ何でもいいや。テメェみたいなのを放置するのは気が気じゃねぇけど、対処法が分かんねぇから取り敢えず放置しといてやる。とっとと、俺を元の場所に(かえ)せ!」


「……イイ…ヤル……」



 そんな事を言った後、謎の声は聞き取れない音のようなものを呟きだした。詠唱しているのだろうか?ノイズのようなものが混じっていて、どういうタイプの詠唱なのかもよく分からない。

 

  ま、こんな薄気味悪いじゃ済まないような場所からおさらば出来るなら、なんでもいいや。



「……還ス……ケ…」



 そんな言葉が聞こえた瞬間だった。(くろ)い床が突如として隆起したかと思うと、(きっさき)から精緻な彫刻を施された美しい槍に変わり初め、目にも留まらぬ速度で俺の胸を貫いた。



「ガッ…ゴボッ……ッ…!?」


「サラ……愚カ…ガキ……!!」



 わざわざ心臓を突き刺すとか、当て付けかよこの野郎!!!俺は脳みそが(めく)れるような痛みを受け入れながら、そう怒鳴りつけようとしたが、体が自分の物では無いかのようにいう事を聞かない。




 ーー世界が、暗転した。




 ▲▽▲




 ーー気付けば、またまた黒い地面に倒れていた。先程と違う所といえば、その地面はビッチョリと濡れており、何より身体の下を赤赫(あかあか)とした川が流れている事だけだ。


 俺の体内から流れ出し、小さな川を形成していた血は、渦巻くように霧状の気体に変わると、すうっと俺の身体に吸収され、虚空へと姿を隠した。


 俺は地に伏したまま掌を握っては開き、身体に異常が無いかを確かめる。うん。大丈夫だな。特に問題無い。後は服が濡れてるのが不快だけど、まだ雨降ってるし、乾かしても意味無いよな……


 冷たくなった膝に、精一杯力を入れる。立ち上がる際に、ポキボキと関節から音がなった。しかしまぁ、気にするほどの問題でも無い。右手を軸にして颯爽と立ち上がった俺は、ビシャバシャと、水が跳ね回る音を聞いた。


  『万能の指輪(ワンノン・ジファン)』の≪完全索敵≫であの女ーーソフィーナ・ゼルチュナーを検索にかける。 忌々しいあの女は、意外な事に、まだ近場(ちかば)彷徨(うろつ)いていた。



「さっきの訳分から無い場所にいた時間は、この世界に還元されていないって事か…?」



 まぁ、ただ仕事終わりに何かを買い食いしたりしているだけって事も、あり得る訳だが。


 彼女は、4つ程角を行った裏通りを歩いている。走れば5分も掛からないだろう。まだ冷たい足を火魔法を使って急激に温め、重たい足を無理矢理に動かして、走り出した。


 足を前に進めるたびに水が跳ね回り、五月蝿(うるさ)い音を立てる。


 疾風のように走った俺は、腰のポーチに手を伸ばし、投げナイフと、千本(針のような武器)を指の間に挟み込んだ。雨のせいで滑り落ちそうになるそれらを(つか)む手を、『神魔の衣(ディオブロ・クロイツ)』の長い袖の中に押し隠す。


 背中がーー見えた。酷く無防備だ。暗殺が終了して、まだ時間が立っていない為だろうか?少なくとも、先ほど殺した男が再び自分に襲いかかる為に背後に迫っているなど、夢にも思っていないだろう。



 馬鹿め!俺は不死身なんだよ!



 そんな言葉を押し殺して、少しずつ走る速度と跳ねる水音を減らしていく。


 後少しーーもう少しで……よし、射程距離内に入った。音も立てずに投げナイフを左手から放つ。腕を払うような動作で放たれたそれは、ソフィーナの髪を数本(ちゅう)に浮かせ、顔のすぐ右隣の壁に激しく火花を散らした。



 ーーソフィーナは突如現れた敵に先手を打たれた事を悟った。そして、次の瞬間には豹のように動物的な身のこなしをもって、疾風怒濤の勢いで走り出していた。その際、間違ってもナイフの飛んできた方向に振り返って、時間を無駄にするようなヘマはしない。


 しかし、当然この動作は俺も予想していた。仮にも『殺人姫(チュエ・ラ・プリンセス)』と呼ばれる程の実力者なのだ。先程のような隙を見せてくれる事は、もう無いだろう。では、ナイフをわざと外したのは何故か。簡単な事だ。もう少しで表通りに出るこの道で襲撃に合えば、ソフィーナは当然、人通りの多い大通りに出ようと走り出すだろう。


 このような暗殺じみた方法をとる者からの襲撃の場合、それが表沙汰になると相手にとっても面倒な事になる場合が、多々ある。その為、人気のある場所に逃げられた時は、取り敢えずひく事が暗黙の了解となっているのだ。


殺人姫(チュエ・ラ・プリンセス)』ともなれば、当然この事を知っているだろう。

 そして、この道から表通りに出る為の道の数はーーたった、一つだ。



  先程まで彼女の身長よりも長いローブによって隠されていた脚が、見えたーー



 右手に持った殺傷能力の低い千本を、投げナイフの時と同様、払うように放った。空気を裂く音と共に、一本の千本がソフィーナの美しい太腿(ふともも)に紅いマダラ模様を作り出す。


 と、同時に俺は駆け出し、左脚を貫かれ、運動エネルギーをそのまま地面へと向けたソフィーナの目前に、姿を(あら)わした。




「ーーよう。お前を取っ捕まえる為に、地獄から舞い戻ってきたぜ。ソフィーナ・ゼルチュナー……ッッ!!!」




  雨はまだまだ降り続けている。

  血の川が、再び流れた。





次の投稿はいつになるか分かりませんが、勉強優先でいきたいと考えていますm(_ _)m


それではまた!

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