47話 暗い世界
久し振りの投稿です!
曇天の空が月を覆い隠し、濃厚な闇の世界を作り出していた。
降り続く雨は弱く、しかし、確実に人々の心から熱を奪い去っている。
黒い世界の中心で、地に伏し、致死量の血を惜し気も無く大地に捧げている者の影があった。
アラス・アザトース。
『紫水晶の魔王』の名で知られる、怪物である。
かの化物は熱き血潮をかくも冷たき物へと変え、瞳孔の開いた光の無い瞳で石畳の地面を虚ろに見つめている。
既に聴力というものを、その必要性を失った両の耳は、雨音で極小音となりながらも響き渡る、1人の女の足音を捉えていた。
周囲を一分の隙も無く囲っていた魔力の結界が薄れていく。
その光景は、蒸気が空へと登り、スッと消えていく現象に似ていた。
結界の主が魔力の供給をやめたため、消える。
至極当然な現象であるそれは、一つの重要な意味を内包していた。
ーー『紫水晶の魔王』の暗殺完了。
案外あっけなく終わった仕事に嘆息した女は、ある事実に気付くことが無かった。
その怪物が、『魔王』などという物騒極まりない二つ名で呼ばれる所以を。
その、真価をーー
『ピチャリ……』
雨音の中で、小さな音がーー
大きな意味を内包する、小さな音が、人知れず響き渡った。
〜数時間前 アリスside〜
訓練場の草木は、何時もよりずっと大人しく微風に靡かれていた。
太陽はまだ世界の真ん中で輝き、強い光を放っている。
目の前では、極めて雑多に修行が行われていた。
ラフィスは例の魔法の制御の修行を。
エリス、リューク、オルド、ユミルは入り乱れながら真剣を振り回し、修練を重ねている。
ルークはカールに短縮詠唱魔法を教え込みながら、自らは無詠唱魔法の練習をしていた。
それらを遠巻きにみつめながら、他の様々な生徒達が剣と魔法を必死に操っている。
そんな中で、たった一人、アリスだけは木々のトンネルの下にあるベンチで休息を取って、先程までの闘いを振り返っていた。
アラス・アザトース…彼と戦うのは、『アレ』が初めてだった。
初めて会った時は容易に倒せる程度の男だと思ったのに、入学試験では自分が決して破る事の出来無い≪女神の堅盾≫を、紙でも破るように突き破ってみせた。
この世に生を受け、初めて出会った圧倒的な存在。
そんな彼を、先程余りにも呆気なく下してしまい、アリスは今迄に無いほど意気消沈していた。
「産まれて初めて、本気を出せると思っていたんですけど、ね…」
常人からすれば、完全に別次元の戦いではあっただろう。
今はもう無いが、先程までは訓練場の真ん中に直径30ユル、深さ10ユルもの大穴が開いていたのだ。
目にも止まらぬ高速戦闘。
見た事も無いオリジナルの魔法。
神器であるという、極めて強力な防具と武器。
アラスは、充分に強い存在だった。でも……
(完っ全に手加減、されてましたしね〜)
全然、嬉しくなど無い。
最後の魔法の撃ち合いの後、アラス・アザトースが泥まみれになって地面に伏していた時、いままで感じた事の無い、強大な怒りを感じたものだ。
何故力を出さ無いのか。
観衆の目がある前では、手札は切れないとでもいうのか。
ただ、悔しかった。
手加減しても、構わない程度の存在だと彼に認識されていた事が。
『隣に、立ちたいのにーー』
彼の、隣に。
彼の、近くに。
彼の、腕の中に。
彼の、全てと共に。
許されない。
許されていない。
そんな気がした。
親しくはなった。
でも、彼は何時も他人との関係に一線を引く。
これ以上近付くな。と
僕の心に踏み入る者には容赦しない。と
そう、望んでいるのがありありと分かる。
一昔前の、自分がそうであったから。
近付いて来る人間は皆、権力に惹かれていた。
私を手に入れる事で、大きな力が手に入るから。
近付いて来る人間は皆、美貌に惹かれていた。
私を手に入れる事で、何よりの自慢になるから。
ーー誰も、『私』になんて目も向けていなかった。
でも、彼は違った。
彼も怖いほど容姿が整っているせいかも知れない。
ただ美しいだけの人間なんて、見慣れているのかも知れない。
理由なんて、どうでも良かった。
彼の、『アラス・アザトース』の近くにいると、私は『アリス・フランチューレ』では無く、『私』であり続ける事が出来る。
だから、一緒にいたい。
何時迄も、一緒にいたい。
拒絶されると、知っているけど。
そもそも、そんな事が自分に許されていないと分かっているけど、それでも、一緒にいたい。
隣に、いつまでも立っていて欲しい……
「まぁ……『叶わぬ願い』って、奴なんですけどね〜」
気づくと、修練中の皆がタオルで汗を拭きながら、近付いて来ていた。
太陽の位置からしても、今から昼食をとるという事ははっきりしている。
苔のついたベンチから立ち上がり、スカートの後ろをパッパと払ったアリスは、皆の元へと歩き出したーー
ものすんごく遅い投稿になってしまい、申し訳ありませんm(_ _)m
今回の話はとても短いですが、物語のキーとなる大事な話でもあります。
放置してたくせに、短けえよとお思いの皆さん、どうか許してください。
私ももう受験生となりましたので、今回のこの投稿を期に、受験が終わるまでは再度の投稿は無いと思います。
気が向けばまた投稿したいんですが、前回の模試が…模試の野郎がとんでもない成績を叩き出してくれちゃったので、出来無いと思います(怒)
まぁ、今まで勉強していなかった自分が悪いんですけどね(笑)
そういう訳で!
これを見ている受験生の皆さん!共に頑張って行きましょう!!
またまた欲求の限界が来て投稿しちゃうかも知れませんが、その時はちゃんと勉強しろよ(笑)
と、温かい目で見守って貰えると嬉しいです。
長くなりましたが、これからもよろしくお願いします!




