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女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第3章 新たなる出会いたち
33/57

27話 顔合わせ

 本日はお日柄も良く…というヘレンさんに似合わない言葉から始まった大暴露大会から数十分。頭から噴火を起こしている貴族どもが校舎を破壊しようとしてきたのでボコボコにしたり、色々と忙しかった訳だが、やっとの事で俺は校舎まで辿り着いた。


 とは言っても、別に校舎と第一ドームが離れている訳ではない。寧ろ近い。ベリーベリー近いのだ。


 ーー大凡の距離は5ユルくらいですね。はい。


 さて、校舎をジックリと見てみましょう。


 まず、第一印象は…デカイ!超でかい!5階だてのこの校舎は内部にも訓練場などを詰め込んであり、無駄な大きさを誇っています。


 中に入って見ますと外に運動場(訓練用)デカくて真っ黒な穴(迷宮)がよく見えますね。


 壁は白で統一され、地面も白。天井も白。何もかもが白。ここは正に不思議空間です。誰の趣味なのかは知りませんが、例えるなら病院のようですね。


 既に保護者たちは家路につき、一年生は担当の教師に連れられて自分のクラスへ。二年生以上は新しいクラスへと向かって行きました。


 Sクラスの教室は最上階の東側にある学校の最果てに位置しています。何故そんな所にあるのかって?実に簡単な事だ。


 ぶっ壊れた時に他の教室まで巻き込まない為さ!!


 というわけで私はまたまたたった一人でSクラスの教室まで足を運んでいる訳です。はい。涙が出るね。


 ああ、ラフィスとアリスは家族の皆と楽しそうにお喋りしてたから置いてきちゃったんですよ。あんな所には近付きたく無かったですしね。


 ーーアラスは一人で歩いていてもいろんな奴に見られてしまう。というか寧ろアラスを見た瞬間に皆目を背ける。


何ででしょうか?あ、あの子が私の事を頬を真っ赤にしながら見ていますね。ああ、私が見ていることに気付いて俯いてしまいました。何ででしょうか?悪い事はしていないと思うんですがね?


 ま、それはいいでしょう。この学校の教室は見て見てビックリ。何と黒板があるのです。これは……今まで見て見ぬ振りをしてきましたが、やっぱりどう考えても日本人の技術ですね。誰が黒板などを伝えたのでしょうか?


 あ、もう四階につきましたね。え?何で丁寧語で話しているのかって?気分ですよ。気分。私は荒くれ者では無いのです。断じて荒くれ者ではありません。よって、これから先私は一人称を『私』もしくは『自分』に改めようと思うのです。


 え?何で急にそんな事を言い出したのかって?ハッ。入学式兼始業式で寝ている所を見たアリスが


「野蛮人みたいですね〜アラスさん。私、蛮族はとっとと死ねって思ってるんですよ。確かに敬語は気持ち悪いですが、それでも心持ちまで荒くれ者みたいになって欲しくないですね〜」


 と言っていたからだ。しかもラフィスとエリス、ユミルちゃんまで同調しやがっ……していましたので、私、心機一転しようと思い立った訳です。はい。



 ーーアラスは既に四階に到着している。ここまで来るとすれ違う人々の数も減り、既に廊下にはアラスの姿しか見えない。四階は基本的に誰も近寄らない、現代日本の屋上のような位置づけになっている。


 なんせここは危ない。いつ特別教室の人間が暴れ出すのか分かったもんじゃないのだ。ふとアラスが遠目で掲示板を見ると、ここを左に曲がってすぐの位置に特別教室があることが分かった。


 早速左に曲がったアラスは、以外に綺麗なままの扉を見つけ、頭の上に『特別教室』と書かれた紙を貼り付けてある板を見つけた。



 ーーはい。どうやらここが特別教室のようですね。私、以外に綺麗なままの扉を見てビックリしてしまいました。ボロッボロの扉をイメージしていたのです。


 よくよく考えれば、天才さんたちの集まるクラスですし、そんなに危険な事ばかり起きる筈がありません。先入観で物事を考えてはいけませんね。以後、気をつけましょう。



 ーーアラスはヘレンさんに特別教室の在籍人数をしっかりと聞いていた。一年生はアラス、ラフィス、アリスともう1人。二年生は2人。三年生は2人。四年生は1人で、合計9人だった筈だ。今年の一年生は優秀だな。


 この中でS’aなのは一年生のアラスと三年生の2人 だ。その中でも女の子の方の三年生のS’aは学校に一切来ずに研究所に入り浸り、S’bの二年生の内の一人、つまりオルドじゃない方は忙しくて中々学園に来れないと言う話だ。


 つまり、教室の中にいるのはラフィスとアリスを抜かして5人、オルド以外に4人。同級生1人に先輩が3人だ。


 緊張するな。


 さて、扉を開けようか……



 ーー扉を開けてビックリですね。なんと、誰一人として此方を向きません。しかも2人しかいないのです。まず、オルドがいません。これが驚きです。あの野郎…ゴホン。オルドさん。どこに行かれたのでしょうか?


 しかもこの2人、一切の挨拶が無いのです。男1人に女1人。恐らく一度も言葉を交わして無いのでしょう。教室の端と端にいます。


 これはアレでしょうか?お前から挨拶しに来いよ。とアピールされているのでしょうか?私は昔っから目上の人に対して敬意を払うということができない人間だったので、挨拶回りなんてした事が無いんですが……


 ま、いっか……じゃなくて、まあ、大丈夫でしょう。私はいちいち細かいことを気にする人間ではありません。第一印象が最悪でも、後々取り返せるでしょう。


 …………と、思っていたのですが、


「おい。お前挨拶も無しかよ。全く。凡人はこれだから嫌いなんだ」


 と、男の方が話しかけて来ました。私としては、女の子に話しかけて来て欲しかったのですが、どうやら彼女、お眠のようです。寝顔がとても愛らしく、水色の外ハネした髪がキュートです。身長は分かりませんが、胸はありますね。今まで見てきた中で一番の巨乳です。


 そして目の前の野蛮人…じゃなくて男の子は金髪の髪に青色の瞳。172くらいの私より低い身長で偉そうなのが特徴的です。ああ、ちゃんと挨拶を返さないといけませんね。


「うっさい消えろ」


 ……あはは。僕、偉そうな奴との会話なんてしたくないんですよね。全く、初対面でこんなに罵詈雑言を浴びせかけられるとは……驚きです。


「な、なんだと!?僕は天才なんだぞ!おい!名を名乗れ!!」

「名前が知りたいんだったら自分から名乗るよう、小さい頃から教えられませんでしたか?」

「う、うるさい!名を名乗れと言ってるんだ!!」

「はぁ…これは駄目ですね。育ての親が相当な能無しだったのでしょう。可哀想に……」

「なっ!か、母さんを馬鹿にするな!!」


 母さんを馬鹿にするな…?こいつ、父親がいないのか…?


「お父上はいらっしゃらないのですか?」

「い、いない!なんか問題でもあるのか!?」

「いや、別に問題はありませんが…」


 ふ〜ん。色々あったのかもしれないな…じゃなくて、しれませんね。優しくしてあげましょう。


「私の名前はアラス・アザトース。しがない凡人ですよ」

「えっ!ア、アラス・アザトース!?ほ、本当に!?」

「嘘なんてつく筈がないでしょう?ほら、私は名乗ったのですから貴方も名前を教えて下さいよ」

「あ、ああ。僕はカール・ヘルガート。これでも帝国の三大公爵家の次男だ。」


 へぇ…帝国か…じゃなくて帝国ですか…うむ……いい加減に飽きたな。やめだやめ。丁寧語はつらい。別に野蛮人でもいいや。よくよく考えたらアリスに嫌われるのはいい事じゃないか。


「ふーん。公爵家の次男。ね?なんで帝国重要人物がこんな所にいるんだ?」

「お、お前は喋り方がコロコロ変わるんだな……まあいい。知らないのか?この魔法学園は様々な国から留学生を募ってるのさ。それにしても…アラスって、本当なのか?」


 訝しげな目を俺に向けながら、カールは言った。


 異様にしつこい奴だな…


「何度も言わせるなよ。なんならステータスカードでも見せようか?だいたい、そんな偽名を名乗ってもすぐに嘘だとばれてしまうだろう?」

「ま、まあ、それはそうなんだが…本当にお前がアラス・アザトースなんだったら一つ頼みを聞いて欲しい」


 頼み?一体なんだろうか…?まあ、何でもいいか。聞いた後で決めよう。


「取り敢えず言ってみろよ。頼みが分からないと判断出来ない」

「ああ、アラス・アザトース。俺をおーー」

「へーい!アラスさん!野蛮な所は直しましたか〜?」


 カールの話を途中で遮り、アリスがそんな事を言いながら扉を蹴破ってきた。後ろにはオロオロしたラフィスの姿が見える。……色々ぶっ壊しだな。おい。これじゃあカールが可哀想じゃないか。俺はカールに同情した。サイズで表すと、ミジンコくらいだが。


 俺は正面からカールの様子を伺う。当然、カールは不機嫌そうな顔を…していない…?ああ、見惚れているのだろう。2人はとても美しいのだ。


 ……?いや、これは見惚れてるんじゃない。道端で神様に出会ったかのような表情……ああ、こいつ、ラファエール教の敬虔なる信徒って奴か。この国の人達はアリスを見てもここまでの反応はしないが、違う国ならば中々お目にかかれるものじゃないのだろう。なんせ『現人神』だからな。大層な名前だ。まぁ、俺もその『現人神』になった訳だが。


「ああ!アリス様じゃないですか!!お目にかかれて感激です!僕、カール・ヘルガートっていいます!!」


 案の定、カールはご主人様を見つけた犬のようにアリスの元へ駆け寄って行った。心無しか千切れんばかりに振られている尻尾が見えた気がした。


 当然のようにアリスはガン無視して俺に近づいてくる。嬉しいような悲しいような……って、別に悲しくはないな。哀れなだけだ。


「アラスさん!野蛮な所は直したか?と聞いてるんですよ?聞こえなかったんですか〜?」

「……努力はした」

「それはつまり、私の夫になると言うことですね?」

「何がどう繋がってそうなった!?」


 俺は驚愕した。アリスの話は滅茶苦茶過ぎて疲れてしまう。一体何を勘違いしたら『努力した』が『お前の夫になる』に変わるのだろうか…?謎だ。


「ねぇアラスさん?やっぱり私は野蛮人の方が好きですよ!何だかワイルドですよね〜」


 俺の疑問も梅雨知らず、アリスは更に追撃を仕掛けて来た。アリスの足元に這いつくばっているカールは我を失っている。可哀想に……


 それにしても、どう頑張ってもこいつに嫌われる事は出来無いのか…?ーーそうだ、意図的に無視してラフィスとだけ会話しよう!さっすが女神が認める脳みそだぜ!次々と策が浮かんできやがる!!


「なあラフィス?オルドが何処に行ったか知らないか?あいつ入学式の時からいなかっただろ?」

「ああ、オルドだったら風紀委員の仕事をしてたんですよ。ほら、今度ウエディングドレスを一緒に見に行きましょうよアラスさん」


 わざわざ会話に割って入ったアリスが、質問に答えた。


 風紀委員…?あいつが1番風紀を乱しそうだがな……


 俺は俯いて笑いを堪えた。笑ってしまったら失礼だ。勿論、そんな事オルドは欠片も気にしないだろうが……まだアリスが何か言っている。無視だ。俺は計画を続行した。


ーーさて、ラフィスとの会話のタネを見つけないとな。えっと…ああ、アレがあったか。


「なあラフィス。いつか言ってた何でも一ついうことを聞くってやつだけどさ。何かやって欲しいことがあったら言ってくれよな?」

「え、えぇっと…デ、デートがいいです…」


 ラフィスは恥ずかしそうにそう答えた。


 はぁ…またかよ。デート。ねぇ?そんなにしたいなら構わないけど、何が狙いなんだろうか…?俺は諦めて妥協する事にした。別にラフィスとデートするのは吝かでは無い。寧ろバッチ来いだ。フッフッフ…デートの後は当然宿に連れ込んで……って、静まれ息子よ!俺は紳士だ!紳士道を貫くんだッ!!


「あれ?もしかしてアラスさん私の事を無視するつもりなんですか?」


 アリスが何か言っている。無視だ。俺は作戦を続行した。


「うーん、そこまで言うんならデートしてもいいよ?」

「え、ええっ!?本当ですかアラスさん!?」

「アラス、嘘つかない」

「や、やったー!!!ありがとうございますアラスさん!いつにします?明日?明日ですか?」


 ラフィスは飛び跳ねて喜んだ。顔には満面の笑みが張り付いている。


 明日は休日じゃなくて授業日だった筈だが…?ま、放課後デートってやつかね?あとアリスうっさい。ギャーギャー喚くな。


「ねぇ、アラスさん?私の事を無視してただで済むと思ってるんですか?猿並みの知能ですね〜」


 アリスが何か言っている。無視だ。俺は作戦を続行した。


「うん。ラフィスが明日デートしたいって言うならそれでいいよ」

「うわ〜!明日が待ち遠しいです!」


 ラフィスは恋する乙女のような顔でそう言った。見間違えだろがな。何なのだろうか?最近阿保みたいな錯覚に陥る事が多いぞ。欲求不満なのだろうか…?ーーそれにしても、本当に嬉しそうな顔をするなぁ。ラフィスは。こんなに喜ばれると、俺も気分がいい。


「アハハハハハ。ムシスルンデスネ?ソウナンデスネ?アラスサン?」


 アリスは片言で喋り出し、拳を握り、射殺すような視線で俺を見て来た。アリスの顔は般若のようだ。怖い。


 …………。これは…ヤバイか?これ以上の放置は危険かもしれない…あ、丁度いい当て馬がいるじゃないか。俺はゲスい作戦に思い至った。


 俺は地に付して絶望の表情を浮かべているカールに近付き、首元を掴み、アリスへ投射したのだ!


「月まで飛んで来い!カール!!!」


 投げられたカールは綺麗な放物線を描き、アリス………に避けられ窓を割って外へとぶっ飛んで行った。


 駄目じゃないかカール。下に落ちるんじゃない。上に飛ぶんだ。……え?死んだんじゃないかって?自称天才君ならこの程度どうって事無いだろ。多分。


 俺とアリスの世紀の大決戦もかくやと思われる状況だったが、流石にガラスの割れる音で目が覚めたのだろう。あの眠り姫が目を覚ました。


「………うるさぃ…」


 声ちっちゃ!?


 俺は度肝を抜かれた。そう、彼女は滅茶苦茶声が小さかった。恐らくアリス達には聞こえていないだろう。


 まあ、顔を普通に整っているな。本当に『眠り姫』なんてアダ名をつけられているのかもしれない。


 せっかく眠り姫様が目を覚ましたのだ。挨拶をしておこう。と、俺は彼女の元へ歩いた。アリスとラフィスもそれに続く。貴族は挨拶を重視すると聞いたことがあるな…俺はふとその事を思い出した。


 カールは間違いなく同学年だろうし、彼女がただ1人の4年生なのだろう。3年生のSクラの1人は男だと聞いている。俺は歩きながら情報の整理をしていた。


 それにしても、とてもじゃないが俺より4つも年上だとは思えないな…彼女、童顔だし。俺は彼女の前で立ち止まり、そう思った。


「始めまして、アラス・アザトースと言います。よければお名前をお聞かせ下さい」


 俺は第一印象をよくする為に丁寧で優しい言葉を思い浮かべ、自己紹介をした。


「ナンパきらぃ…」


 彼女は眠そうな瞳を俺に向け、そう言った。


 ナンパだと思われてしまったらしい。なんか哀しい…というか、虚しいな。


「ナンパじゃありません。今年から特別クラスに入る事になったアラスです。聞いたことありません?アラス・アザトースって」

「……知らなぃ。自意識過剰はよくないょ…?」


 す、凄え!俺の名前を知らない人に始めてあった!!!俺は驚愕して目を見開き、それ以上の歓喜をガッツポーズで示した。


 俺はその喜びを伝えるために2人の方を見たが、余程驚いたのだろう。2人は口をパクパクして喋れる状態じゃなかった。


 過剰反応だって?そうじゃないのだ。それだけ俺の名前は何処でも知られている。『アラス・アザトース』の知名度はハンパじゃないのだ。


 その上俺を気遣って助言までしてくれている!凄い!天使だ!その垂れ目の中に眠る緑の眠そうな瞳が超魅力的だ!!


「そうですか。自分としては有名なつもりだったのですが…あの、よければお名前を教えて頂けませんか?」


 俺は懇願するようにそう言った。というか、言葉通り懇願していた。彼女は少し困ったような顔をしたが、暫くすると納得したような顔になり、


「んー。セイメル。セイメル・アレンシャンって言うんだぁ」


 と、答えてくれた。


「はい!その名を心に刻み込み!一生貴方にお使えします!!」

「勢いで言っていいことと悪いことがあるでしょうアラスさん?貴方は私と結婚する予定なんですからね〜?」


 流石にアリスがアラスを諌めた。


 チッ!黙ってろよアリス!あ、セイメルさんが迷惑そうにしているじゃないか!お前のせいだぞ!!


 って、初対面の男にそんな事言われたら誰でも迷惑そうな顔をするよな……ちょっとだけ傷ついたぜ。俺は、怒ったような顔をしているアリスとラフィスを無視して話を進めた。


「セイメルさんは4年生なんですよね?アレンシャンってこの国の貴族の家名なんですか?」

「うん。4年生でまちがいなぃ。アレンシャンは共和国の貴族のかめぃ」


やっぱり貴族だったか…それにしてもカールの様々な国から留学生を募っているという話は本当だったんだな。入学試験の時の異常な人数もそんな理由があるなら納得出来る。俺は一人、首をうんうんと縦に振った。


 そこで突然アリスに壊された扉の方から物音がした。急いで俺は≪万能の指輪(ワンノン・ジファン)≫の<完全索敵>を発動する。人数は…4人?あれ?どれだけ多くても3人の筈なんだが…?さっき突き落としたカール、オルド、S’aの三年生の男の方。後…誰だろうか?もしかして忙しくて来れないという二年生のオルドじゃない方?それとも研究所に篭ってる三年生の女の方?一体どっちだ?俺は疑問を抱き、音がした方向を凝視した。


 そこにいたのはボロボロになって俺を睨みつけるカール、行方不明だったオルド、見たことのない金髪の優男。と、ヘレンさんだった。ヘレンさんは悪戯が成功した子供のようにアラスに向かっててニヤニヤ笑いを浮かべている。


……って、わざわざ学園長が出て来んのかよ!?俺は心底驚いた。予想の斜め上を行く人だ。


 すぐさま俺に殴りかかろうとしたカールを金髪の男が諌め、俺に向かって歩きだした。


 この男は……見たことがあるな。そうだ、この学園の生徒会長だ。俺は今朝、壇上で挨拶をしていた彼の事を思い出した。


 身長は180程でオルドと変わらない。肩まで伸ばした金髪と、白い貴族が着ているような装飾が施された服をはためかせ(この学園には制服は無い。今度ヘレンさんに提案してみよう)、緑の瞳で俺の事を興味深そうに見ている。


 俺はアリスとラフィスの様子を伺った。知り合いかと思ったのだ。しかし、どうやらラフィスは彼の事を見たことも無いらしい。流石のラフィスもあの馬鹿みたいに長い『ご祝辞』を全ては聞いていなかったのだろう。アリスは見たことはあるが喋った事はないという感じだ。


 彼は俺の前で立ち止まった。


「始めまして。アラス・アザトース君。僕はルーク・エルブラム。この学園で生徒会長をやらせてもらっているんだ。よろしく頼むよ」

「挨拶すべきなのは私だけでは無いでしょう?まあ、迷惑をかけると思いますが、こちらこそよろしくお願いします」


 俺はちょっとだけイラっとしながらそう言った。何も俺だけが新入生な訳では無いのだ。一目置かれているというのは悪い気分でも無いが、生徒会長ならそこらへんもしっかりして欲しいな。


 俺の言葉に虚をつかれたような表情をしていたルークは一瞬で顔が真っ青に変わり、慌てて2人に挨拶をしだした。


 オルドとヘレンさんは声を出して笑っている。もしかしたらセイメルさんの笑った顔が見れるんじゃないかと期待して後ろを向いた俺は既に眠りについているセイメルさんの姿を見た。


くそッ!笑った顔が見たかったのに!!俺は激しく憤った。何にかって?知らん。


「ほら、皆席につきなさい」


 ヘレンさんがルークが2人に挨拶をし終わった事を確認した後でそう言った。カールとの挨拶は既に終わっているのだろう。ヘレンさんのその言葉に各々が適当な席へと急いだ。


 みんなが座った事を確認したヘレンさんはポンポンと手を打ち鳴らし、注目を集めると、


「今から特別クラスの意義、特権などを説明するわ。何か質問がある者は手を挙げなさい」


 と言った。こんな序盤から質問を飛ばす奴はいない。なんせまだ説明が始まっていないのだ。案の定誰も手を挙げなかった。


 ヘレンさんの言葉は続く。これから長い説明が始まりそうだ。


「さてーー」



 ーーこうして、アラスの学園生活が始まった。


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