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女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第3章 新たなる出会いたち
30/57

24話 入学試験 2

 目が覚めると、視界が真っ暗に変わっていた。


 ……ん?おっかしいな…妙に頭部が柔らかいものに触れている……それに、心無しかいい匂いがするぞ…俺は座ったままで仮眠をとっていた筈だが…?


 ーーふと頭部に温もりを感じる。


 それに…あったかいな。妙にポカポカして、気持ちがいい。


 ーー俺は何故視界が真っ暗なのかが気になり、周囲の状況を探るため、手を動かした。


 まずは頭上で俺の視界を遮っている物の正体を知ろう。


 黒い物体にーー触れた。


 オッホウ!これはこれは…とんでもない柔らかさだ。俺はふにゅふにゅとその物体を揉んでみる。実に素晴らしいな。俺はもうこの物体の正体に気付いたぞ!


 と、同時に、キャーー!!と、可愛らしい悲鳴が上がった。実に保護欲をそそる声だ。普段の俺なら一も二もなく悲鳴をあげる女の子の元に急いだろう。


 だが、今回、俺はそんな事をするのは不可能だった。


 何故かって?悲鳴をあげてるのが俺が乳を揉んだやつだからだよ!!


 そして犯人はーー俺はすぐさま回転しながら立ち上がって膝から逃げ、クソ女の顔を見た。やっぱりか!こいつ以外にそんな事をする奴を俺は知らん!!


 そう、そこには声では悲鳴をあげながらも周囲に見られないように顔を隠し、「引っかかりましたね〜?」と言わんばかりのニヤニヤ笑いを顔いっぱいに浮かべる糞アリスだった。


 どうやら、眠ってるのをいい事に勝手に膝枕をされたらしい。まあ、悪い気分じゃないが、寝ている間に無防備になるとは…訛ってるな。これでは師匠に殴られても文句が言えない。次からは気を付けよう。と、心に誓った。


 ーー当然、アリスは追撃してきた。


「いきなり胸を揉まれたした〜!」

「ダメだよアラス!女の子のおっぱいを触る時はちゃんと宿に連れ込んだ後じゃ無いと!!」


 ……そんなフォローはいらない。ってか嘘泣きをとっととやめろよアリス!滅茶苦茶睨まれてるよ!!廊下にいた殆ど全員に殺気を向けられてるよ!!


 辺りを見渡すと其処彼処にいる誰も彼もから睨まれている。そこに貴族や平民の壁はない。


 ーー慕われてるんだな。


 まあ、少しだけの安堵感を抱いた俺だったが、現状を思い出し、一瞬で和やかな気持ちは消え去った。


 くそッ!ここで怒鳴っても奴は更に鳴き声を大きくして俺の立場を悪化させるだけだ…うん。下手に出るしか無いな。


 クソっ!


「ああ!ごめんよアリス!悪気は無かったんだ!!不慮の事故なんだ!許してくれ!!」

「あははははは。滑稽ですねアラスさん。実に愉快です」

「ぶっ殺すぞ糞女!!」

「ああ!駄目だよアラス!!こんな人目の多い所で『現人神』にそんな事を言ったら!指名手配犯にされちゃうよ!!」


 アリスクソ野郎め…!滑稽ですね。って幾ら何でも酷すぎだろ!一瞬で泣き止んだし!!


 チッ!


 ちゃんとアリスに聞こえるように舌打ちした俺は、リュークが言った事について考え始めた。


 うーん、確かにそうなるのかもしれない。俺が殺すと発言した瞬間に殺気があからさまに増幅した。これ以上アリスに暴言を吐いたら本当に指名手配されるかもしれない。


 ふと壁にかけられている時計が目に入った。


 ーーここは廊下であることは間違いないのだが、何故か横も縦も広く、椅子や机が大量に置いてある。勿論、時計もあるのだ。休憩場なのかもしれない。


 ……って、気づけばこんな時間じゃないか。次の総魔力量の試験は水晶玉に手を当て、それがどんな光を放つかで総魔力量を判定するという試験だ。何でも魔力量ごとに光の色が変わるらしい。


 実に楽な試験だが、水晶玉が俺の魔力に耐えられるのかが心配だな。


「おい。もう次の試験の時間だ。とっとと移動するぞ」

「あっれ〜?アラスさん話をはぐらかしましたね〜?私の胸を触った代償に何かしてもらわないといけないのに…」

「いやだよ。お前確信犯だろうが。だいたいお前のチッパイにそれほどの価値なんてねぇよ」

「え?アリス様がチッパイ!?幾ら何でもそれは無いんじゃ無いかな…?」


 ーー俺はアリスの胸をチラッと見る。


 まあ、それは無いんだろうな、間違いなく。こいつの胸は結構デカイ。少なくともチッパイと馬鹿にされるような大きさではない。


 なんだかんだで移動していた俺たちはパリーン!というガラスが割れるような音を目の前の部屋の中から聞いた。総魔力量を測るための試験の部屋だ。何かトラブルがあったのだろう。叫び声が聞こえた。


(水晶が割れた時にパリーンなんて音はしません。御都合主義です)


「女の子の叫び声だ!僕ちゃんの獲物!!」


 そう言ったリュークはトップスピードで部屋に飛び込んで行った。


 ……何てやつだ。女なら誰でも自分の獲物だと思ってやがる……


 ただ、中の状況が分からないのに悲鳴が上がった部屋に入るのは危険だ。止めなければ!


「おい!ちょっと待て!そんな考え無しに飛び込んだら危険だろうが!!」

「ねぇアラスさん、はぐらかさないで下さいよ。私の胸を触ったんだから私と結婚して下さい」

「…………」


 チッ!止まりやがらねぇ!危険…ではあるかもしれないが、どうせ水晶が割れただけだろう。


「俺たちも行くぞ!」

「うっわ〜。ガン無視ですか。そうですね〜あの場にいた大勢から証言が取れますし、犯罪者にでもしたてあげますかね〜」

「いや、駄目だよ!?何言ってんのお前!!」


 と、そんな事を言いあいながらも俺とアリスは部屋に突撃した。


 部屋の中は混沌と化している。だいぶデカイ水晶が割れたようだ。地面には水晶のかけらが飛び散っている。怪我人は…いないらしい。よかった……


 近くにいた白服の研究者みたいな格好をした人は


「そんな…50万ケルトまでには耐えられる最高級品だったのに……これ以上の数値を知りたいんなら『エルバス聖教会』にある巨大水晶を使うしかないぞ…」


 とか言っている。怪我人とかの心配をしろよ!そう思ったが、口には出さない。


『エルバス聖教会』と言うのは教国にあるラファエール教最大の教会だった筈だ……って、試験どうなるの?ってか誰だよその50万ケルトまで耐えられるって水晶を破壊したのは?


「ああ!『天使』だ!『天使』がいる!!お久しぶり!ほら!覚えてない?リュークだよリューク!何度か一緒に遊んだじゃん!!」

「は、はあ…?」


 ーー遠目に困惑したラフィスの顔が見えた。


 ああ、ラフィスか。そりゃそうだよな。どう考えても50万ケルトなんて馬鹿みたいな数値を叩き出す奴は俺とアリスとラフィスしかいないしな。


「おいリューク!ラフィスを困らせるな!」

「あれ?『天使』とアラスは知り合いなの?まあそんな事はどうでもいいんだよ!ねぇ?覚えてない?僕だよ!リュークだよ!『爆発魔リューク』って聞いたことあるでしょ?」

「あ、ああ!リュークさんでしたか!お久しぶりです!」


 ふーん、この二人は知り合いだったのか。いや、そんな事より、試験がどうなるのかが気になるのだが…もしかして無し?試験なしになっちゃう?やったね!


「え〜と、Pチームの皆様は今の方が最後だったので総魔力量の試験は終了となります。今から筆記試験に移って下さい。Dチームの皆様は5万ケルトまで計測出来る水晶での計測となります。ああ、アリス様は200万ケルトである事を確認しておりますので今回の試験はスルーして貰います」


 チッ!無しになれよ!それにしても今から筆記かよ…可哀想なラフィス。ってかアリスはずるくね?そんなの無しじゃね?まあ、『現人神』の個人情報だし裏どりはされてるんだろうけど、それでもズルくね?


「あはははは。いや〜私も試験を受けたかったですね〜。残念です」

「じゃあ受けろよ」

「いやいや、アリス様が200万ケルトの魔力量を誇ってるのは誰でも知ってる事だから仕方ないよ。逆に『天使』様の情報は有名じゃないからね!」

「……ん?なんで有名じゃ無いんだ?」

「ラフィスは魔法がからっきしでしたからね〜。魔力量がアレだけあって魔法が使えないってゆうのはあまりよく思われませんし、公爵家としては隠して当然ですね〜」

「ふ〜ん、そんなもんか」

「そんなもんです」


 そんなもんらしい。まあ、それは置いておこう。俺に言わせれば5万ケルトなんてゴミみたいな数値だ。俺の純粋な総魔力量はだいたい100万。≪万能の指輪(ワンノン・ジファン)≫の<魔力量2倍>のお陰で常に200万。更に≪完成された吸血鬼(スクレ・ヴァンピール)≫の<全ステータス3倍化>で600万。何処の魔王ですか?と尋ねられるような数値だ。


 って、アレ?ラフィス達がもういない。俺に少しくらい話しかけて来ると思ったんだが…マジで嫌われてんの?俺。


 ………い、いや、それは無いな。ちょっと様子がおかしかったし、何かあったのだろうか…?まあ、大した事じゃないだろう。


 よし、話を戻すぞ。


 魔法特化の魔王じゃないと600万ケルトという俺の魔力総量には張り合えないらしい。ちなみにリリーの魔力総量は普段から200万。≪神魔の指輪(ディオブロ・バース)≫の<総魔力量4倍>で800万。200万の差は滅茶苦茶にデカイ。しかも魔法量の差だけではなく、他にもリリーに魔法戦で勝てない理由が出てくる。


 一見万能に思える<全ステータス3倍化>は経験やセンスを上げてはくれない。俺は魔法理解に関しては天才だが、魔法使用に関してはそうではない。逆にリリーは魔法理解に関してはちょっとアレだが、魔法使用に関しては超天才的。どう頑張ろうと、魔法戦でリリーに対抗するのは不可能なのだ。


 しかも接近戦ではリリーのユニークスキルが炸裂して攻撃が中々当たらない。俺にとって、リリーは師匠並みにやりにくい相手だ。ちなみに師匠の魔力総量は知らない。全く分からないのだ。底無し沼のように底が無い。


「それでは、早速始めましょう。一列になってください」


 Pチームのメンバーが去った後、白衣の男がそう言い出した。大抵の試験では試験官さんは10人以上いたのだが、この部屋にはこの男と記録係なのであろう女しかいない。


 ーー白い壁が目に痛い。なぜ何処も彼処も白い壁なのだろうか?ま、そんなのどうでもいいが。


 つまり、列は一列しか出来ないわけで、その上俺は「あ、あんたからやってくれよ……」という視線を一身に受けている。……これはまた面倒な事になったぞ…俺が触れたら絶対にあの水晶も割れるし、既に水晶のかえは何処にも無い。


 レベル1でも俺の魔力量は30万ケルトを越える。≪変幻自在(ファンタズマ・ゴリック)≫は基本的に姿を変える事と結果の隠蔽にしか使えない。……万事休すだな。


 俺がやるのはどうにかして最後にしなければならない。


「おいリューク。先にやってくれ」

「ん?もっちろんだとも!その変わりナンパ手伝う回数が2回になっちゃうよ?」

「別にいいよ」

「おお〜!心強いね!!じゃ、行ってくる!」


 ーーそういったリュークは水晶の前に立った。


 それにしても…あいつも顔がいいんだから単独でナンパくらい出来るだろうに…ま、構わないけどね。


 と、そんな事を考えていると、パリーン!という音と、誰かが膝から崩れ落ちる音が部屋いっぱいに響いた。



 ……………は?


「あっちゃ〜。やっちゃったよアラス!僕ちんの総魔力量、実は10万ケルトなんだよね〜。てへっ!」

「てへっ!じゃねえよ!試験どうすんだよ!いや、確かに無くなって嬉しいけど!それでも困るよ!!」

「あ、ああ、大丈夫ですよ…この試験はある程度入学前から個人情報を入手するための物で、試験の点数には何の影響も無いんです。幸いDクラスの皆さん以外のクラスは調べ終わっているので、合格発表の後でDクラスの皆さんだけまた測りに来てください」


 白服の男は顔面蒼白でそう言った。大人には色々あるのだろう。可哀想に……


 にしても面倒な事になったぞ…他の奴らも不満げにリュークを見ている。なんせ試験で終わるはずだったことが持ち越されたのだ。当然、リュークも反省して………………無い!?あの野郎!女子からの視線が自分に向いている事に興奮してやがる!!


「おい!ちゃんと反省しろよ!」

「でへへ。あ、ごめんアラス。何か言った?」


 ………とりあえず顔面をグーで殴った俺は部屋を出た。他の奴らもそれに続く。全く、傍迷惑な奴だ。ただ、10万ケルト…かなり魔力量が多いな。そこらの宮殿魔法師の10倍程多い。そりゃあ天才とも言われるだろうよ。


「次は魔法威力の試験だったな?どんな事をするんだ?」

「結界魔法の共鳴魔法、≪女神の堅盾(イージス)≫にどれだけのダメージを与えられるかの試験ですね〜。ちなみに破壊出来れば特別クラス、つまりSクラス入りが確定します。ま、無理でしょうけど」


 共鳴魔法…つまりは合同で作る魔法の事だ。これはかなり難しい。何と言っても呼吸も魔力量も何もかもを合わせないと発動出来ないのだ。それを成功させるとは…この学園の教師は強者揃いなのだろう。


 にしても特別クラスか…いや、実は俺、合格さえすればSクラス入りは確定してるんだよな…ヘレンさんにそう言われたし。ま、クラスなんて何処でもいいのだが。


 それよりも…


「なんで破壊するのが無理なんだ?」


 そう、そんな事を言われたら破壊してみたくなってしまう。というか破壊しよう。


「簡単な事だよアラス。10人の先生で作る共鳴魔法だよ?共鳴魔法は二人掛かりで2倍、三人がかりで3倍…となっていく事は知ってるでしょ?」

「ああ。それくらい知ってる」


 そう、それが共鳴魔法の強みだ。難易度も高いが見返りはデカイ。なんせ2倍なのだ。破格だと言える。


「それでは分かるでしょう?つまり10人がかりなら10倍なんです」

「そりゃあ凄いな……」


 とんでもないぞ…10倍だなんてどんな魔法でも化け物じみた威力と効果になっちまう。戦争時でも敵国を一撃で葬れるんじゃ無いか…?


 ……いや、それはないか。


 だが、10倍は凄い。俺とリリーがそれを協力者を集って発動させれば国どころか大陸ごと消せるんじゃないだろうか…?


 危険じゃね?


 と、俺のその疑問にはリュークが答えてくれた。


「でもね、それは戦争時には使えないんだよ。アレが戦争時に使えれば最強の国なんだけどね…」

「何故使えないんだ?」

「学園長無しでは10人がかりでの共鳴魔法なんて使えないんですよ。そして学園長は戦争には関与しないと公言してるんです。結果、あの魔法は戦争時には使えないんです」


 へ〜ヘレンさんって凄いんだな…あの人がいれば10人がかりでの共鳴魔法が使えるのか…うん。凄い。


 ……え?でも力尽くで従わせればいいんじゃないか?


「おい、そんな事言っても国は承認しないだろ。力ずくで従わせる筈だ」

「え?知らないのアラス?学園長は『真王の子供達』の1人なんだよ?力尽くでどうこうしようとしたら国が消されちゃうよ」


 国が消されちゃう……?師匠…一体なにやってたんだよ…超危険人物じゃないか………


 ま、師匠が何やってるかなんてどうでもいいさ。10倍…燃えてきた!絶対に破壊してやる!!


「なぁ?≪女神の堅盾(イージス)≫を破るにはどれだけの魔力が必要だと言われてるんだ?」

「そうですね…普通の先生たちは1万に届くか届かないか程度なんですけど、学園長の魔力がズバ抜けて高くって…確か、30万ケルトはあったと聞ききました。つまり、390万ケルト以上じゃないと太刀打ち出来ません。私でも破壊は無理ですね」


 390万ケルト…よし、砂嵐を起こして≪完成した吸血鬼(スクレ・ヴァンピール)≫を使って…うーん、なんの魔法を使おうかな…?破壊なら…うん。やっぱり爆発魔法第三回級≪超新星爆発(スーパーノヴァ)≫を使うか。リリーが山を消し飛ばした魔法だ。威力は申し分無いないだろう。


 そうこうしているうちに魔法威力の試験会場に到着した。


 ふっ!史上初の≪女神の堅盾(イージス)≫破壊者になってやるぜ!!


 と、思っていた俺が見たのは半壊したでかい部屋だった。誰もが言葉を失っている。部屋は一部だけ円状にくり抜かれているような状態だった。


 これはーー間違いない。ラフィスだ。あのくり抜いたような跡は混沌魔法以外で作ろうと思えば至難の技だ。どうも様子がおかしいと思っていたのだが、あの魔法のイカれた威力に気付いたのが原因らしい。


 ラフィスはこの魔法が俺に当たっていた時の想像をしたのだろう。ま、当たってても傷はすぐに治ってしまうのだが。


「ああ、Dチームの皆さんね?この部屋は…まあ、≪女神の堅盾(イージス)≫が消し飛ばされちゃってね。この有様なの。………あ、アラス君じゃない。結局試験を受けたのね?」


 皆が一斉に俺の事を見た。とは言ってもヘレンさんと俺に面識があるのをアリスは知っていたため、アリスだけは驚かなかったが。


「数日ぶりですねヘレンさん。これは…ラフィスがやったんですか?」


 ラフィス。その名を聞いて貴族っぽい奴らが馬鹿にしたような笑みを浮かべた。何故かは知らんが、『ラフィスがやった』というのは失笑の種になるような言葉らしい。アリスでさえ顔に驚愕の感情を貼り付けている。


 だが、


「ええ、よく分かったわね。そうなのよ…≪女神の堅盾(イージス)≫が破られるなんて…始めてのことだわ」


 という言葉で失笑は驚愕に変わり、驚愕はさらなる驚愕に変わった。


 ま、外野がどう思うかなんてどうでもいいさ。


「でしょうね。あの魔法の魔力は規格外な密度ですから」

「あら、あの謎の魔法の事も知っているのね?あれは一体なんなの?」

「正体だなんて予想がついてるでしょうに、

わざわざ私に確認を取るんですか?ま、信じられないでしょうけど」

「やっぱりそうなのね…?あり得ないわ……」


 ま、そう思うのも当然だろう。師匠は本当になんでも出来た。光魔法と闇魔法の混合魔法はその師匠ですら出来ないと明言した魔法なのだ。この目で見た俺ですら自らの正気を疑った。


「ま、そんなのどうでもいいじゃないですか。にしても今日は厄日ですねヘレンさん。≪女神の堅盾(イージス)≫が二度も破れるなんて」

「………へぇ?アラス君も≪女神の堅盾(イージス)≫を破るつもりなの?流石に無理だと思うわよ?」

「余裕ですね。高々400万ケルト以上の魔力を込めればいいんでしょう?そんなの寝てても出来ますよ」


 その発言にこれまで黙っていた偉そうで肥え太った中年オヤジが声をあげた。


「高々400万だと!?血迷った事を言いよって!名をなのれ!!」

「ん?俺の事を知らないんですか?俺はアラス・アザトースっていう名前を持つ冒険者ですよ」


 その言葉に、誰もが黙った。せめてあの教師には反応して欲しかったのだが、思ったよりこの名前は知れ渡っているらしい。


 すると別の男が


「だ、だがアラス・アザトースは化け物時見た強さを持つ剣士だと聞いたぞ。ま、魔法まで使えるのか…?」


と、震える声でそう言った。


「当たり前です。俺は剣も魔法も使える。で、早く試験を始めようじゃないですか。……正直、もう眠いし…」


 後半部分を小さな声で言った俺だったが、運良く誰にも聞かれなかったらしい。ここまで格好つけて今のを聞かれていたら恥ずかしすぎる。


「へぇ〜。学園長様を挑発するの?アラス君」

「出来ることを出来ると言っただけですよ。ま、やって見ればすぐに分かりますしね」

「そこまで言うなら受けて立つわ。ほら!さっさと準備しなさい!!」


 ーーこうして兄弟子対俺の戦いが始まった!


 ヘレンさんの指示を受けて教師の皆様が動き始める。

 すごい速さだ。全員が近くに固まって円を作った。


 ーー殆どの奴は蚊帳の外で呆然としているな。アリスの呆然とした顔は中々見れるもんじゃないだろう。発動の準備に時間がかかるようだし、からかってやるか。


「どうしたんだアリス?そんなアホヅラ、お前には似合わな…いや、お似合いだな」


 いかんいかん。褒めるんじゃなくて馬鹿にするんだった。


「い、いえ…凄いですねラフィスは…驚きましたよ……」

「ああ、この部屋をこうした魔法を俺は直接向けられた事があるんだぜ?おっかないだろ」

「へ、へぇ〜!『天使』様はこんな魔法が使えるんだね…!それにしてもアラス。こんなのを受けて良く無事だったね」

「よけたんだよ。直撃したら流石に痛い」

「い、痛い…?いや、普通は痛いじゃ済まないと思うんだけどな…ま、いっか!ますます好きになっちゃった!『天使』ちゃんを手に入れる計画を始動してやる!!」


「「殺すぞ(しますよ)」」


 おっと、アリスと声がかぶってしまった。ま、リュークが怯えてるからそれはそれでいいんだけど。


 こいつ、ラフィスの事が好きなのか…?ラフィスはチャラチャラした奴は好みじゃ無いだろうし、叶わぬ恋ってやつだな。


 と、そんな事を考えていると


「用意出来たわよ!ほら、さっさと打ち込んできなさい!!」


 という声が聞こえてきた。


 ん?何を打ち込むって?何が準備出来たんだい?……全く、そんなエロい事言われたらその気になっちゃうじゃんか。冗談だけど。


「分かりました!じゃ、早速ぶっ放します!!」


 そういった俺はすぐさま土魔法第四階級≪砂嵐(デザートストーム)≫を発動した。一瞬で砂嵐に襲われる試験会場。当然、威力は抑えてある。


 様々な所から悲鳴が上がった。教師陣の共鳴魔法の妨害になるかと思い、少し心配したのだが、教師陣は一瞬にして結界に包まれた。ーー優秀だな。


完成された吸血鬼(スクレ・ヴァンピール)≫を発動。<全ステータス4倍化>で魔力総量を底上げ。どうやら≪超新星爆発(スーパーノヴァ)≫はオーバーキルのようなので、水魔法第五階級≪超高圧水弾(フォーグレア)≫を発動した。


 この程度の魔法で破れるだろうと過信したのではない。一点集中型の魔法の方が効果的だったからだ。あのタイプの魔法は全体的に魔力を巡らせなければならない。故に一点突破の魔法は効果的だ。まぁ、砂嵐のせいで視界に難があるというのも大きな要素なわけだが。


超高圧水弾(フォーグレア)≫は簡単に言うと水を圧縮させて放つ高水圧ビーム。


 一瞬、たったの一瞬で、ズガァン!と音を立てた≪超高圧水弾(フォーグレア)≫は≪女神の堅盾(イージス)≫を貫通し、粉々にした。部屋の壁も貫通。どこまで穴を開け続けるのかは俺も知らない。ま、俺の意思で解除すればいいだけの話なのだが、ちょっとしたプレゼントだ。喜んでくれるだろうか?


 ーー勝負はついた。


 俺はすぐさま≪砂嵐(デザートストーム)≫を解除し、間抜けヅラを晒している教師陣とアリスの顔をじっくりと見た。


 うむ。実に気分がいい。余裕だったな。


 ーーこうして、呆気なく最終試験は終わった。


 ふっふっふ!絶対合格だぜ!!


 今日の晩御飯はあの焼きそばもどきを食べたいな〜!



 ーー誰もが空いた口を隠そうともしないその状況で、俺は1人、今日の晩御飯の事を考えていた。



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