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女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第3章 新たなる出会いたち
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18話 グランデール家

屋敷(?)につきました

 気持ちのいい春風が俺たちの頬を撫でた。季節は春。新しい命が産まれ、消えていく。そんな珍妙な時の狭間で、俺たちは口を大きく開いていた。さぞ、アホ面だったろう。


 目の前に見えるのは立派なお屋敷……ではない。


「いや、城じゃね?」


 俺は思わずそう呟いた。殆どの奴らは首を縦に降る。それを見たラフィスは不思議そうに


「いや、お屋敷ですよ?」


 と言葉を返した。エリスはさも愉快げに眉を曲げている。何だお前。驚く俺たちの顔が見れてそんなに嬉しいのか?だったらお前を愉快な気分にさせたご褒美に拳骨を一つプレゼントさせてくれよ。


「何をそんなに驚いておるのじゃお前様?この程度普通であろう?」


 ニーナがそんな巫山戯た事を抜かして来る。……こいつらの感性は腐っているようだ。可哀想…なんだよな?


「これが普通?そんな訳ねぇだろ!なぁエルフィ!!これって城だよな!?俺がおかしいとか、そう言うんじゃ無いよな!?」


 ちょっと、ほんのちょっとだけ不安になった俺は一応エルフィに確認をとった。


  ーー本当にちょっと何だからね!!


「ええ、これは間違いなく城でございますご主人様!それにしても大きいですね…私、ビックリしちゃいました!!」


 ……なんと言うか、エルフィは俺の癒しだ。大切にしよう。ちょっとエロいけど。旅の途中で6回程襲われたけど。マジで危ないのが2回ほどあったけど。それでも大切にしよう。うん。


「俺たちもこんなにデカイものは屋敷とは呼ばん。これは城だ」


 おお〜ナイスアシストだよランド。でもさ、それよりも隣で顔を輝かせているブランを大人しくさせておいてくれよ?お前ら魔貴族なんだから人界で何か問題を起こしたらヤバイんだからな?


「ほら見ろ。これは城だ。間違いない」


 俺はそう断言する。いや、だって疑う余地すらないし。絶対にこれは城だし。


 ーー俺たちの前には白を基調とした立派な城があった。(ダジャレじゃ無いよ)形は誰もが想像する西洋の城そのものだ。何故こんなものがあって近づくまで分からなかったのかは知らないが、どうせ魔法か何かだろう。


 四大公爵家はどこもこんな城を所持しているのだろうか…?内乱とか起こったらかなり大規模なものになるぞ……


 と、俺が核心に迫っていると目の前の橋が降り、門が開いた。メイドさんたちがズラリと並んでいる。壮観だな。何人かとても美しいメイドさんもいる。お持ち帰りしたいぜ…!!


 俺がくだらない冗談(?)を考えていると2列になったメイドの真ん中を小走りで一人の男が駆けて来た。年は30といった所だ。普段は顰めっ面なのであろう。笑顔がぎこちないが、それでも本心から喜んでいるのが分かる。気持ちのいい笑顔だ。


「ああ!ラフィスお嬢様!それにエリスも!何年ぶりでしょうか!私エルザック・アルラルドはこの時を長い間待ち続けていました!本当に、長かった……!!」


 感極まったのだろう。駆け寄って来た男は涙を零し始めた。ラフィスとエリスが慌てて介抱している。


 ーーなんか…いいなぁ。ああいうの。本当に羨ましいよ。


  って、アルラルド?この人エリスの父ちゃんなのか?


「……して、そちらの方々は?」


 泣き止んだエルザックさんがそんな質問を投げかけて来た。エルザックさんはいかにも騎士という格好で、緑がかった金髪のゴツい人だ。身長は180はあるだろう。16歳になった俺の身長は174。自然と見下ろされる事になる。


 ああ、質問に答えないとな。エルザックさんがしてきたのは……まあ、当然の質問だな。


 俺が代表して答えようと思ったのだが…


「私達を盗賊からお救い下さったアラス・アザトースさんと、他です」


一瞬ーーほんの一瞬だが、確実に心臓が止まった。


「ほ、他!?」


反射的にその言葉が口から出ていた。


「冗談ですよ。アラスさんは騙されやすいですね」


  ーーラフィスがニコニコと笑いかけてくる。


 お、おお、冗談…だよな……?流石に酷くね?まあ、こいつらも笑ってるから別に言及しないけど。


(ちなみに魔貴族の3人は角を隠している。人族の前に出る時には怖がらせない為に角を隠すのが習わしなんだとか。俺たちに襲い掛かって来た時は、逆に怖がらせて降参させようとしたらしい。そんな習わしがあるとは…いい奴らだな。魔貴族って。)


 そんな事を考えていると


「アラス・アザトース!今話題のたった4時間でSランク冒険者になったというアラス・アザトースか!!凄いな!君にはゴルドー様も関心を抱いておられた!!」


 エルザックさんが興奮した様子でそう話しかけて来た。ゴルドーとはラフィスの父親の名前だろう。つまり『家族』。自然と俺は不機嫌になる。


 それにしても名前を出すだけでこの反応……偽名でも名乗ろうかな?俺は割と本気でそう思った。暫くすると流石に落ち着いたらしい。姿勢をただし、右手を左胸にあて、


「始めましてだな。私の名前はエルザック・アルラルド。エリスの父で、グランデール家の直属騎士隊隊長を勤めさせてもらっている。後ろの方々も、この2人を守って頂き、本当に助かった。礼を言う。この2人は非力ゆえ、心配して夜も眠れなかったのだ」


 と、エルザックさんが挨拶と感謝の意を表してして来た。やっぱりエリスの父親か…ちょと高圧的に感じる喋り方だったが、エリスの父なのなら妥協しよう。それにしても本当に眠っていないのだろう。目の下に酷いくまが出来ている。


「始めましてお父さん。エリスを嫁に貰いに来ました」


俺はどんな反応が返って来るのか気になって、そんなふざけた事を口にした。こんな時だけは『家族』どうこうは気にしない。おふざけに真剣さは必要無いからな。


「君にお父さんと呼ばれる筋合いは無い」


空気が凍った。あ、あれ?今は春の筈なんだけどな…?それにしてもゾッとする程低い声だ。俺の隣で顔を真っ赤にしているエリスをジックリと観察出来ない事が実に悔やまれた。


……それにしても何故顔を赤くしているんだろうか…?


冗談ですよ。俺がそう口に出すとエルザックさんの視線はスッと和らいだ。同時にエリスに頭を殴られる。まあ、今回は俺が悪かったとも。


ーーそれにしても…リアル『君にお父さんと呼ばれる筋合いは無い』を聞くことが出来た!!なんて貴重な体験なんだ!!俺がこのセリフを聞ける日が来るだなんて!!!


俺は心の中で歓喜の叫びをあげた。だって一度は聞いてみたいセリフだったんだもん。


皆も分かってくれるだろ?


ーー俺はひとつ、ゴホンと音をたてた。


「改めまして………こちらこそ彼女等と共に旅が出来て光栄でした。2人は見目麗しいので、何もしなくても目の保養になりましたしね。挨拶が遅れましたが、私がアラス・アザトースです。今後ともよろしくお願いします」


 俺はそう言ったが、何故か2人は不機嫌そうだ。何でだろう?褒めたのに。


「お前…それは『私とお嬢様が何もしていない』と言いたいのか?」


 エリスがそんな事を言ってくる。ああ成る程、それで不機嫌なのか。別にそうは言っていない。俺はそう答えようとした。


 が、……あれ?こいつらマジで何もやって無くね?そう思い至った俺は


「何かしたのか?」


 と答えた。2人を除いた全員(メイドも除く)の笑い声が、雲一つない青空の下に響き渡る。一通り笑いあった後、不機嫌な2人を放置してエルザックさんが


「それでは、案内する。ついてきたまえ」


 と、そう言った。



 ーー俺たちはエルザックさんの後に続いた。




 ▲▽▲




 美しい内装に目を輝かせる者もいたが、俺に言わせれば内装は大した事は無い。あの屋敷の方が手がこんでいる。先導するエルザックさんの背中を追って、俺たちは屋敷の中を歩いていた。もう10分は経っただろう。一向に目的地に到着しない。堪り兼ねた俺は


「おいラフィス。後どれくらいかかるんだ?」


 と、疑問の声を漏らした。心なしか空気が重いこの廊下で喋れる者は、そういない。エルザックさんが少々驚いた表情を見せた。


「後10分くらいですかね」


 ラフィスも大して気負った風でもなくそう返した。あと10分…どんだけ広いんだよこの城……


 ーー俺はてっきり謁見の間にでも送られるのかと思っていたのだが、流石に謁見の間は無い。と苦笑混じりのエルザックさんに教えられた。何でもただの執務室にゴルドーとかいう人はいるらしい。


 ーーチッ。つまらん。


 まあ、談笑…と言うより相談をしよう。この場で会話が出来るのはラフィス以外にニーナとエリスだけだ。ランドも一応貴族な筈なのだが、完全に緊張してしまっている。


 ーーそんなんで2人を守れるのかよ……俺は深く、深く心配に思った。


 まあ、ニーナとエリスは面倒臭がって会話に応じてくれなさそうだし、ラフィスに相談するか。困った時はラフィス頼みだ。


「なぁラフィス。俺、いちいち名乗る度にさっきみたいな反応をされると面倒だからさ、偽名を名乗るか、また仮面をつけるかのどっちかの策で対処したいんだけど、どっちがいいと思う?」


 俺は出来るだけ、『困ってますよ〜』と言う声色でラフィスに質問した。ラフィスの答えはやっぱり仮面かな?と、俺はそんな予想を立てていたのだが、そんな期待も希望も、あっさりとへし折られた。


「どっちも無駄に決まっているじゃないですかアラスさん!」


 ラフィスが何を言ってるんだコイツはと言った具合に言葉を乱暴に投げつけててきた。


 ……よし、もう一回聞いてみよう。


「どっちが……いいと思う?」


 その時の声は非常に情けなかったと思う。だが、どうしても解決策が欲しいのだ。毎回アレは普通に嫌だ。


 ーーだが、俺の最後の、正真正銘最後の希望は、またしてもへし折られた。


「ですから、どっちも無駄だと言ってるじゃ無いですか!!」


 あ、また怒らせてしまった。だが、そんな殺生な話があるものなのか……?


 あ、そうか、違う解決方法があるんだな。そうに違いない。


「じゃあ、どういった対策を取ればいいんだ?」


 少しだけ希望に満ちた俺の声。当然ラフィスは俺の思いもよらない解決方法を考えついているのだろう。


 ーー偉いぞラフィス!凄いぞラフィス!!


「いえ、だから、解決策なんて無いんです。アラス・アザトース=仮面をつけた男。もしくはアラス・アザトース=超絶美少年。って言うのは恐らく既に誰でも知っている事になってる筈です。仮面をつければその事からアラス・アザトースだとバレ、偽名を名乗ってもその素顔からアラス・アザトースだとバレてしまうでしょう」


 ラフィスは少しだけ呆れたようにそう言った。俺が絶望に打ち拉がれていると


  (ニーナが笑いを堪えられないといった様子で俺を見て来た。後で痛い目にあわす。あ、それじゃ喜ぶだけなのか……クソっ!俺はどうすればこいつに痛手を負わせられるんだ……!!)


 俺に少しだけ申し訳なさそうな顔をしたエルザックさんは


「ついたぞ。身なりをただせ」


 と話しかけて来た。結構小声で話したつもりだったが、どうやら聞かれてしまっていたらしい。悪い事をしたな。俺はエルザックさんに軽く会釈して、言われた通り身なりをただした。



 扉がゆっくりと開くーー




 ▲▽▲




  中は…まあ、普通だな。俺がアルフレッドと最初に話した時の部屋と大して変わらない。中では目を輝かせた35歳くらいの男がソファーに座っていた。


 金髪碧眼のちょっとだけ細身なイケメンだ。しかし、見た目に惑わされてはいない。この人には無駄な筋肉が全くないのだ。実によく鍛えられている。


 ーーグランデール家は基本的に武官を輩出する家柄なんだろうな……


 俺がそんな事を考えていると。


「ああ、本当に久しぶりだラフィス!エリスお嬢ちゃんも久しぶりだな!2人とも大きくなって…」


 と、ゴルドーさんは2人に抱きついた。


 ……頼むからそういうのは俺のいない所でやってくれよ…だから俺はここに来たくなかったのに……


 まあ、来たくなかったのにわざわざ来たのだ。目的を果たしてとっとと俺だけでもこの場から去ろう。こんな風に『家族』っぽい場面は出来るだけ見たくない。


 俺はゴホンと咳払いをした。皆の視線が俺に集まる。


「不粋だと言うのは分かっていますが、私の願いを聞いて頂きたい。ああ、言い忘れましたが、私の名前はアラス・アザトース。以後、お見知り置きを」


 アラス・アザトースと名乗った瞬間にゴルトーさんの目が細まった。


「ああ、この2人をここまで連れて来てくれた礼だ。話を聞こう」


 彼は無粋な俺の行ないに怒るでもなく。そう言った。



 ーーこうして、俺は事情を語り始める。




 ▲▽▲




 ーーそもそも俺がここに来たのはランド達の保護を頼むと同時に、公爵家直々に今回の件を王様に伝えて貰うという目的あってのものだ。


 あの豚にどれほどのコネがあるのかは知らないが、揉み消されでもしたら大変だしな。


 この話を聞いたゴルドーさんは3人の保護を快く引き受け、今回の件も直々に王様へ話を通すと約束してくれた。一先ずこれで安心出来る。


 俺は別れの挨拶を済まし、部屋から出て行こうとした。なんせこの城に泊まるのはあまり気乗りしないのだ。最初は泊まらせて貰うつもりだったが、先程の光景を見てそんな気も失せた。どこか適当な宿にでも泊まろう。


 だが、そんな考えは次のゴルドーさんの言葉に引き裂かれた。


「アラス君。君、私の娘であるラフィスと婚約を結ばないか?気づいているとは思うがグランデール家は優秀な武官を輩出する事で有名だ。しかし、今の所私の直系の子供は女子ばかりでね。婿どのに期待するしか無いんだ。言いたいこと、分かるね?」


ーーさっきふざけてた罰が当たったのか?俺はそう思った。


 ……まあ、言わんとしている事は分からんでもない。要するに武に優れた婿が欲しいと考えていた矢先、ラフィスが今話題のSランク冒険者を連れて帰って来た。そこで目の前にぶら下がっているチャンスという餌に食いつこうとしている訳だ。


 俺自身にとっても悪い話では無い。一つ懸念があるとすればリリーに嫌われるかもしれないという事だけだ。まあ、その時は死ぬ気で説得しよう。リリーのお願いを100個くらい聞けば許して貰えるだろう。


 だが……ガキっぽいと思われるかもしれないが、俺はちゃんと恋をして愛した人と結婚したいのだ。そんな政略結婚じみたもので結婚するのは嫌だ。


「遠慮しておきます」


 俺は相手の気分を害さないように声色を落としてそう言った。


 横目で見たラフィスは酷く悲しそうに見えたが、それは勘違いだろう。俺もいきなりこんな事を言われて混乱しているらしい。


「君は娘が嫌いかね?身内贔屓と言われるかもしれないが、私の娘はとても美しい少女に育ったと思う。私は何故君がこの話を断るのか分からないよ」


 本当に不思議そうにゴルドーさんがそう返して来た。そりゃあそうだろう公爵家の次女と結婚すれば公爵家を継ぐ可能性も出てくるし、想像も出来ない程の多くのお金が入っている。


 何より、ラフィスの容姿は異常な程整っている。恐らく、これまでも婚約の話は幾ら何でも入って来たのだろう。それを断り続けて俺にこの話をするって事は…

 普通に説得しても納得してもらえなな。うん。


 ーーそう判断した俺は思いの丈を打ち明けた。


「私は普通に恋をして愛した人と一緒になりたいんです。それに、あまり政治事には関わり合いたく無いので」


 師匠にも政治的なものには出来るだけ関わるなと忠告されている。『大きな力はあるだけで国を滅ぼす』との事だ。もしかしたら、森に引きこもる前にそんな経験をしたのかもしれない。


 ーーゴルドーさんは尚も食い下がって来た。


「だが……私の娘は君との婚約の話を持ち出した時嫌な顔一つしなかった。ラフィス自身も満更ではないという顔をしているんだ。恋をするのはこれからでもいいじゃないか」


 見間違いじゃね?俺はそう思った。


「気の所為でしょう。私はラフィスに好いてもらえる程立派な人間ではありませんし。そもそも、私とようなクズと結婚しても不幸になるだけです。やめておいた方がいい」


 ーー俺が自分の事をクズだと言った瞬間、この場にいた殆どの人の顔が驚愕に見開かれたのがありありと分かった。余程俺がそんな事を言ったのがおかしかったらしい。


 だいたい俺はラフィスの事を妹のように思っているのだ。ラフィスが俺に好意を抱いていると言うなら話は別だが、そうでないなら結婚などする気にはならない。


「クズ…?私は君は立派な人間だと聞き及んでいるよ?最新の情報では先程の話で出ていたプタ・テプールという男の奴隷の全員に100万エル持たせて奴隷から解放したらしいじゃないか。そんな人間がクズだと言うなら、この世の殆どの人間はクズだと言うことになってしまうよ」


 ーーゴルドーは本心からそう言っているのがよく分かる表情でそう言った。


 随分と早い情報だな。こんな事が伝わっているならわざわざこの城に立ち寄らなくても揉み消しなんて出来なかったのかもしれない。


 まあ、それはいい。やはり、俺はその話に乗る気にはならない。適当に切り上げて街に出よう。確か、この街のギルドマスターへの紹介状を貰っていた筈だ。


「その話は考えておくという事で。私はこれから街に用事がありますので。失礼」


 そう言って俺は何人かの制止を踏み切ってドアを開いたのだが、ここで声がかかった。


「この件が保留ということにはもう何も言わない。でも、君自身の願いをまだ聞いていないよ。今回の事件を直接王様に言う事、この3人を保護する事。どれも君自身に利益が出ない。この2人を無事送り届けてくれたんだ。このままでは公爵家の名に傷がつく。何か、君自身に利益が出る頼みは無いのかい?」


 成る程…確かに俺自身に利益が出ないな。うーん。じゃあ…


「エルフィをメイドとして一人前にして下さい。それが頼みです」


 エルフィのメイドとしての実力は実に無惨なものだった。これでメイドとして仕事をしていた事がある?嘘付け!!といった具合だ。このままでは≪神魔の衣(ディオブロ・クライナ)≫がシミだらけになってしまう。


 ちなみに今のエルフィは鉄製の首輪はつけていない。俺がやっとの事で外させたのだ。だが、変わりにチョーカーを着けさせている。それが首輪を外すための交換条件だった。


 俺のその行為にランドは大喜びしてくれた。何でも、人族の中にも奴隷を作るという事に嫌悪を示してくれる人がいるのが嬉しいのだそうだ。その日、俺は始めて酒を飲んだ。


 始めて飲んだ酒の味は……クッソまずかった。マジで。いや、何であんなもん飲むのか分かんねぇよ。俺がそう言うとランドはそんなものだと爆笑してやがった。


 子供だと思いやがって…直ぐに酒をドバドバ飲めるようになってやる!!そう思った俺だが、今現在、その想いは達成されていない。


 ああ、話を戻そう。先程からエルフィがぎゃあぎゃあ不満を漏らしている。


「何で私がご主人様と離れて修行しなくちゃいけないんですか!!……ああ、もしかして放置プレイですか?そうなんですね?」


 いや、目をキラッキラさせてそんな事言ってるとこ悪いんだけど、そんなのじゃねーよ。


「お前がメイドとして余りにもお粗末だからだ」

「そんな!何処がですか!?私のどこがいけなかったんですか!?胸?胸なんですね?……それは、どうしようも無いですよ〜」


 そう言ってエルフィは泣き出してしまった。


 いや、胸とかじゃ無いんだが…


「はぁ、仕方ないな。ちゃんと免許皆伝を貰ったら何でも一つ言うこと聞いてやる。それで勘弁してくれ」


(メイドに免許皆伝があるのかって?知るかそんなの)


 そんいえば俺、ラフィスにもこんな事言ってたな…まだ何にも言うこと聞いて無いし……悩みのタネが増えていく…


「本当ですか!?じゃあ、私寵愛を受けたいです!!」

「却下」

「即答!?酷過ぎません!?…ああ、だったらせめてキスして下さい!!」


 キス…まあ、キスくらいなら別に構わないか。もう俺ニーナとそんなの何回もやったし。


「まあ、それなら別にいいぞ」

「やった!じゃあ、ディープキスで!!」

「やだ」

「またですか!?じゃ、じゃあ、普通のキスでいいです…」


 あ、ちょっと悲しませてしまったか。だが、俺は大人のキスは好きな人とすると決めているのだ。こればっかりは譲れない。


「話は纏まったみたいだね。では、エルフィさんは私が責任を持って立派なメイドにして見せるよ」


 うん。安心出来るな。これが公爵家当主の威厳と言った所か。


「では、よろしく頼みます」

「今日はこの屋敷で泊まらないのかい?」


 屋敷じゃねえよ!城だよ!!俺は心の中でそう怒鳴りつけた。


「ええ、何処か適当な宿に泊まろうと思います。『家族』の団欒を邪魔したくありませんから」


 ラフィスが何か言いたそうな顔をしていたが、俺は気にせず扉を開けた。



 ーー蝋燭の灯りが眩しい。俺は足を踏み出した。




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