表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第3章 新たなる出会いたち
23/57

17話 王都

新章が始まります!

一羽の鳥が、空を飛んでいた。誰よりも高い空をーーー高く、もっと高くーーー


やがて、一羽の鳥は旋回を始めた。徐々に、黄金の太陽に近づいて行く。


ふと、鳥は思った。空は、何処まで続くのだろうと。


鳥は、昇る。誰よりも空を知るためにーーー




▲▽▲




 ーーさて、皆さん!こちらに見えますのがあの有名なエルテール王国の王都レクルムです!今まで見てきた中で最も文明の香りが漂うこの町は、中央から順に『王城』、『貴族街』、『平民街』が建ち並び、貿易国として発展して来ました!


 レクルムは『学園都市レクルム』とも呼ばれており、離れ島との間に橋をかけ、学園都市として機能させることで、王侯貴族と平民の隔たり無く学業に専念することが許されています!


(本当に隔たりがないのかって?あるに決まってんだろ!)


 ん?なぜ私がそんな説明を始めたのかって?


 ーーやっとの事でレクルムについたからだよ!!巫山戯んなよ!たかだか10日間の旅でこんなにストレスが溜まるか?普通。


 毎日毎日冤罪(殆どが)で俺をボコボコにしやがって!だいたいなぁ、ニーナに褒美をあげないと後が怖いんだよ!!


 そりゃ毎晩近くで嬌声をあげられたらうるさいかもしれないけど、殴ることねぇじゃん!!ラフィスもさあ、別に尻を叩くくらいの事で混沌魔法(ラフィスが自分で名付けた光、闇魔法の混合魔法の名前。何故混沌なのかは分からない)を使わなくてもいいじゃん!!


 と、心の中で悪態をついていると、既に俺たちは門の前までついていた。中々に大勢の人が並んでいたが、この馬車を見て貴族が乗っていると気付いたのだろう。一人の門番がこちらに向かって走って来た。


 ーー乾いた地面は簡単に土埃を作り出す。


「ステータスカードをお見せ下さい」


 彼は俺を見て、一瞬だけ驚愕に目を見開いたが、開口一番にそう言った。まあ、普通ならここでステータスカードを見せるのだろうが、門番さん4号には先にやって貰いたい事がある。


 ーーそれに、ニーナはステータスカードを持っていない。どうにか誤魔化して中で調達しないと、前の俺みたいな事になって面倒だ。


 要件を伝えておこう。


「先に後ろの≪結界結(ボックス)≫に入ってるヤツを引き取ってくれ。帝国と取引をしていた男で、プタ・テプールと言う貴族だ」


 と俺は言ったが、門番さん4号は困惑している。まあ、そりゃそうだよな。


「はぁ、お手数ですがお名前を伺っても…?」


 少し不信感を露わにしている、門番さん4号の声。そんなに疑わなくてもいいじゃないか。


「アラス・アザトースだ。早くしてくれ」


 俺は証拠にステータスカードを見せながら単調な声でそう言った。


「ア、アラス・アザトース!?凄い、本物だ!ファンなんです!サインして下さい!!」


 俺のステータスカードを見て驚愕した後、門番さんがそんな事を言って来た。正直、ウザい。周りの人達の視線が俺に集まる。


 居心地悪いな…それにしても、ファン?サイン?頭が混乱するような事言い出すなよ……


「うわぁ〜ご主人様凄いですね!いきなりサインを求められるなんて!舞台役者さんみたいです!!」


ーーエルフィは思った。アラスなら本当に舞台役者になれるのではないかと。


 エルフィが純粋に尊敬したような声でそんな事を言ってくれる。俺はこういうエルフィの純粋な所が大好きだ。


 それにしても……舞台もあるんだなこの世界。今度見に行こう。


「悪いな、俺はまだサインしてくれとか言われても何をどうすればいいか分からないんだ。握手とかじゃ駄目か?」


(サインを書けばいいんだよって?書き方がわかんねぇんだよ!)


 まあ、キザったらしい事を言ってるのは自分でも分かっているが、こうでもしないと話が進まない。馬車に乗っている7人が早くしろよという視線をこっちに向けてくるのだ。急がなければいけない。


「握手!勿論大丈夫です!うわぁ〜感激だなぁ。それに、アラスさんが超絶美少年だって話は本当だったんですね!正直、嘘だと思ってました!!」


 そういいながら握手を交わす門番さん4号と俺。握手をした後、門番さん4号は上司に意見を聞きに行くと言って去ってしまった。


 中々俺に対する好奇の視線は消えない。まるで、始めて動物園でパンダを見た子供のようだ。慣れたといえ、あまりいい気はしないな。


 ーーうん。ここは権力で切り抜けようか。正直権力とか好きじゃないんだけど、俺は目的の為には手段を選ばない男だからな。


(この台詞、かっこ良くね?)


「ラフィス。ニーナはステータスカードを持っていない。出来ればお前の家とかで調達したいんだが、この門を検査無しで通る事は出来ないのか?」


 出来なければ面倒な事になる…頼むぞ、ラフィス。


「私の家は公爵家ですから、その程度の事は簡単に出来ますよ!あの豚をここに置いて行くんですね?」


 よし、察しがいいな。珍しい。


「ああ、俺はあの中の匂いを嗅ぎたくないんだ。お前はあの中の匂いを嗅ぎたいのか?」


 ラフィスが首をブンブン横に振る。余程嫌なのだろう。凄い勢いだ。


 ーー哀れだな、あの豚。


「絶対にいやです!そうですね。家の力を借りましょう!!」


 うん。話が早くて助かる。あ、門番さん4号が5号を引き連れて帰って来た。早いな。5号さんは俺たちに軽く会釈して、話し出す。


「貴方がアラス・アザトース様ですね?早速で悪いのですが、捕らえて来たというプタ・テプール様のお顔を拝見したいのですが…」


 そら来た。ここでお顔を拝見させたりしたら俺たちまでトバッチリを喰らっちまう。(ん?トバッチリを喰うのは彼らだって?へ〜)俺は、ラフィスにアイコンタクトを送った。


「すいません。私はグランデール家の者なのですが、急ぎで用があるのです。もう通してくれませんか?」


 と、ステータスカードを見せながらラフィスがそう言うと、門番さん5号は慌てて許可を出した。俺は、深く感心する。


 チョロいな。流石は公爵家。


「ああ、≪結界結≫は魔力の供給が終わったら自然に消えるから、今ここでは開けないよ。面倒だしな。それと……匂いを防ぐ物を用意しておいた方がいい」


ーーいきなり何を言い出すんだこの人は?と2人はおもったが、口にはしない。


 俺はせめてもの情けでそう言って町に入った。門番さん4号と5号は不思議そうな顔をしていたが、なんとなしに頭を縦に動かした。


 アデュオス!哀れなる者たちよ!僕は君たちの事を忘れないよ!!………13秒くらい。


 ーーん?最低だって?そんなの知ってるよ。


 さて、やっと王都レクルムについたな。これから俺は魔法学園に入学し、当初の目的であったアリス・フランチューレと、劇的な恋に落ちるんだ……!!(嘘)



 ーーこうして俺たち8人は、馬車に乗ったまま門をくぐった。




 ▲▽▲




 遠目で見て知っていたが、この都市はかなり綺麗に整備されている。道も石畳になっているし、道幅も広い。ここまで色々と計算されて家が建てられている都市は初めてだ。(都市自体が始めてです)


 と、そんな事を考えていると、


「今からお嬢様の屋敷。つまりグランデール家の屋敷に行くが、屋敷は貴族街にある。他家との争いごとにならないよう、くれぐれも注意してくれ」


ーーエリスは真剣だった。屋敷に面倒ごとの手土産を持って帰る訳にはいかない!エリスの瞳はそう語っていた。


「妾たちがそのような馬鹿に見えるのかのう?赤髪は信頼と言う言葉を知らんのか?嘆かわしい…」


 1番問題を起こしそうなお前がそれを言うのか…誰もがそう思った。


ちなみにニーナは最初、誰に対してもガキと呼んで怒らせていたが、今では一応あだ名を使っている。安易過ぎる気もするが、別にいいだろう。


「ねぇ、人族の貴族のお屋敷に行くの?パパ。僕、ちょっと不安だなぁ」


 というブランの声。まあ、嫌な思い出のある場所ではあるだろうが、我慢してもらいたい。ランドが、大丈夫だ。2人は俺が命にかえても守る。と言っている。


 ーー言っちゃ悪いが、説得力の欠片もねぇよその言葉。


 だが、2人は顔を輝かせて喜んでいる。この10日間で分かったのだが、魔貴族とは基本的に純情馬鹿らしい。何でも簡単に信じる。人界の人達が魔界に負けなかった理由が分かった気がした。


 しかも、魔界には奴隷という制度が無いらしい。正確には、例の魔界大帝が禁止したのだとか。意外と話があうかもしれないな。魔界大帝エルザベート。


 そんな事を考えているうちに、貴族街まで到着していた。先程、


「東門で事件が発生したらしい!なんでも、詰所にいた門番たち7人が軒並み倒れて、その近くにいた旅人たちも全員やられたらしいぞ!!」

「ああ、俺もその話聞いたぜ!何でも魔法師の特殊部隊が事態の鎮圧を図る為に出動されたとか何だとか。凄えよな。魔法師の特殊部隊なんて戦争の際でも滅多に出動しないのに」

「それだけ大変な事が起きたんだろ。怖いよな…一体何があったのやら。もしかして、テロか?」


 という声が聞こえて来て、7人にジトッと顔を見られたが、俺はそんな事は気にし無い。俺は、リリーに常に慌てない立派な男になるって約束したんだ!!(そんな事実は存在しません)


 ーーそれにしても大事件になったな……まあ、どうにかなるだろ。…………多分。いや……俺捕まったりしないよね?ねぇ?大丈夫だよね?そこまで酷いとは思って無かったんだよ……まさかそこまでの劇薬状態になるとは……あれっ?あの豚、死んで無いよね?………ははっ…



 ……よし。もうそれは置いておこう。大体、俺の言う事を聞かなかったあいつらが悪いんだ。そうに違いない。うん。豚の生死は……大丈夫だろう。多分。



ーーここでは検問が行われている。平民街と貴族街の境には鉄製だと思われる柵が張ってあった。


 こんなのすぐに破れそうだけどなぁ。こう、ドカンと。


「申し訳ありません。貴方方は何処の家の者ですか?」


 という検問官さん1号の声に対し、


「私はアルラルド家の者だが、こちらにいらっしゃるお方はグランデール家の所縁の者だ」


 とエリスが手早く答える。こちらにおらっしゃる方は…って、ラフィスはどこの御隠居様だよ。まあ、別に構わないけど。検問官さん1号はすぐに通してくれた。


 ふと周りを見渡すと、とにかく多くの屋敷が見える。どれも大きいが…アルフレッドの屋敷に住んでた俺からしたらどれもただのカスだな。何て言っても大きさが違う。アレは本当に大きかった。


 ……それにしても懐かしいなぁ。(ここ重要)アルフレッドにはもう会わなくてもいいけど、リリーには今すぐにでも会いたいなぁ。


 …あれ?最終試験が終わったら真っ先にリリーに会いに行くって約束をしてたような………うん。気の所為だね。気の所為……であって欲しいね。キレたリリーは師匠より怖いんだ。うん…


「そろそろ着くぞ。降りる準備をしておけ」


 って、あれ?ここどこ?森の中にいる…?しかももうすぐつく…?って事はこの森も領地のうちなのか。


 この国では貴族街と平民街とで明確な線引きをされているが、別に貴族が平民街に住めない訳でも無いし、平民が貴族街に住めない訳でも無い。実の所かなりその辺は緩々なのだ。


 貴族が平民街で住むのは変人呼ばわりされる事が玉に瑕だが、別に難しい事ではない。が、平民はそうはいかない…と言う訳でも無い。この国では(王都に住んでいる)貴族の中でも四大公爵家だけには広大な領地が与えられている。


 平民はただ単に、そこに移住すれば貴族街に住むことが出来る。とは言っても、領地のある場所が貴族街ってだけで、貴族と同じような暮らしが出来る訳では無いのだが。


結局イザコザは起きなかった。貴族街で問題を起こそうとする馬鹿は貴族連中の中にはいないらしい。……つまらん。暇だ。


 ーー20分が経った。屋敷は全然見えない。さっき降りる準備しとけみたいな事言ってたじゃん!全然すぐじゃ無いじゃん!!


 僕を…僕を騙したのかいエリス?…僕は、君のことを信用していたのに……もう、僕は一人で生きていくよ…


 と、まあ、冗談はここまでにしよう。ここはさっきまでの森とは違い、平民街のようなつくりになっている。何処を見ても、私は平民です!ってな格好をした奴らばっかりだ。


「おい…本当につくのか?迷ったとかじゃなくて?」


 かなり不安になってきたぞ…ほら、迷ってても怒らないから(嘘)、早く言いなさい。


 ーーってか早くゲロっちまえよ!迷ったんだろ!?


「いや、そんな事は無いですよアラスさん。後20分程したらつきます」


ラフィスがふざけた返事をしてきた。もうちょっとと言ってから40分後につくのが当たり前なのらしい。それにしても…


 後20分…?俺、気が短いから何もしないでいるのが途轍もなく苦痛なんだけど…この10日間どれ程苦しんだ事か…もう、終わったと思ったのに……


「お前様はせっかちじゃのう。大人しく待っておれぬのか?」


 と、ニーナが馬鹿にするように言ってくる。3000年以上生きてるお前とは時間の感覚が違うんだよ!!黙ってろ!!!


 あ〜イライラして来た…


「ご主人様。そんな時にはエッチな事です。私の胸を揉んでもいいですよ?」


 エルフィが甘ったるい声でそう言って来た。が…


「お前…それ、自虐ネタなのか?」


「えっ?何を言っているのですか?ご主人様」


 本当に不思議そうな声でそんな事を言ってくる。どうしてそんな事を言われたのか分からないらしい。いい加減現実を知りたまえよ。まあいい。特別に俺が教えてやろう。


「いや、だって揉む胸無いし」


 俺がそう言った瞬間、エルフィは膝からバタリと崩れ落ちた。大袈裟な仕草だな。ちょっと演技っぽい。


「じゃあ、特別に妾の胸を触らせてやっても良いぞ?」


 落ち込んでいるエルフィを無視してニーナがラフィスの事をニヤニヤ見ながらそんな事を言って来る。


 何故ラフィスを見るんだろう?何故ラフィスの殺気が俺に送られて来るんだろう?俺が一言も喋らないうちに内輪揉めが過激化していく。(ニーナとラフィスのみです)


「なんじゃ?ニセ女神。嫉妬しておるのか?まあ、確かに妾はこの男に毎晩あんな事やこんな事をされておるからのう。ああ、お前様は妾の胸なんか触り慣れておるかのう?」


 なんでラフィスの方を向いてそんな事言うんだ?ってかあの日以来俺はお前のケツは叩いたりしているが、胸に触ったりしないように極力注意してたんだぞ?


(俺は確かにエロガキかもしれないが、理性さえ保っていれば許可なく女性の胸を触ったりしない。………筈)


「アラスさん?そんな事無いですよね?」


ーーラフィスは上辺だけ取り繕ってそう言った。


「はい。無いです。全てはニーナが嘘をついているだけなのです。と言うか、ここにはブランがいるんです。こんな話はやめましょう。ね?」


 俺が思わず敬語になるほど今のラフィスは怖かった。俺の可愛いラフィスは何処へ行ってしまったんだ…


 とは言っても、普段のラフィスは俺の可愛いラフィスだけどね!怖いのはこんな時だけさ!!


「そうじゃなぁ。ああそうじゃ、今晩もいいかのうお前様?」


 ハハッ…火に油を注ぐようなことしないでくれよ……頼むからさぁ…


「いや、あのさ、今晩はラフィスのお屋敷で泊めてもらう予定何だからさ、ちょっと遠慮して欲しいと言うか何と言うか……」


俺はどもりながらもそう答えた。だってニーナが上目遣いなのだ。ちょっとドキドキしてしまう。


「アラスさんにはちゃんと常識がありますね。偉いですよ、アラスさん」


ラフィスの声は字面だけ見れば俺を褒めているように思えるが、絶対零度の冷たさを秘めている。


 ーーああ、どんどん険悪になっていく…せめてもの救いは、ランドがブランの目と耳を塞いでくれていることだ…可愛い子供にこんなドロドロしたものを見せてはいけない……


「妾は!妾はお前様のせいでこんな体に変えられてしまったというのに…妾の疼きをお前様は鎮めてくれぬと言うのか…」


 こいつ!嘘泣きが異常に美味い!!あっ!チラッとこっちを見て笑いやがった!巫山戯んなよ!それは秘密にして置く約束だろ!!


「お前…最っ低だな…」

「ご主人様!私はそんなご主人様でも大好きです!私もそんな体にして下さい!」

「……アラスさん?今の、嘘ですよね?」


 皆が俺の事をゴミでも見るような視線で見てくる…エルフィは期待の視線を向けてくるが、そんな期待をされても困る。他にもケミルさんは絶えず笑顔のままだけど、いつも笑顔だから何を考えているのか分からないんだよな…


 なぁ…もう気は済んだだろ…?助けてくれよニーナ……と、俺は目で助けを求めたが、ニーナは更に大声で泣き始め、ちょくちょく俺をニヤリと見てくる。


 おい!流石にもういいだろ!そりゃお前の言ってる事も本当だけどっ!あれはお前が誘惑して来たのがそもそもの原因だろうが!!こ、こうなったら……


「ニーナ、本当の事を言えばお前への蹴りの威力を2倍にしてやる」


 どうだ…?引っかかるか…?


「それは本当かお前様!!妾はなんでも話すぞ!!それにしても2倍の威力……ジュルッ」


 ………怖い。誰もがドンっ引きしている。何人かは俺に哀れみの視線を送って来る始末だ。お前はそれでいいのかニーナ……俺はニーナの今後が心配になった。まあ、結果としては簡単に釣れたな。ここで疑いを晴らしておこう。


「ほら、真実を語るんだニーナ!俺への疑いを晴らす為に!!」


 俺は最大の期待を込めてそう叫んだ。


 それに対してニーナは…


「うむ。あの日妾の胸を揉みながら2人を撒いたこやつはすぐに妾に服を着せようとした。だが、妾が着替えるために立ち上がると唐突に襲い掛かってきたのじゃ、その後摩訶不思議な力で妾を非力にし、思う存分に蹂躙したのじゃ……」


ーーニーナの声は強姦された後の少女のような響きを持っており、全ての人を同情させるであろうその声は、この人数が増えすぎて狭苦しくなった馬車の中でよく通った。


 ハハハハ。面白い事言うねニーナ。僕はもう君のお尻を叩きも蹴りもしないよ。うん。


 空気が冷え切っている。おかしいな。今日は小春日和だったのに。


 底冷えするような視線たちが僕を貫いているのが今の現状だ。そこで僕は硬く閉ざされていた口を開いた。


「そこまで言うならニーナ、お前にどうこうするのを一切合切辞めるよ。つまりお前にご褒美が与えられる事はもう2度とない訳だ。良かったね、ニーナ」


 俺がかなりマジでキレてそう言うと、ニーナは大変慌てて真実を語った。余りに必死で説明するので馬車の中の雰囲気も穏やかになり、(話してる内容は穏やかではない)皆微笑みを浮かべた。(繰り返すが話してる内容は穏やかではない)


 俺は必死に説明するニーナが大事なオモチャを取られまいとする子供のように見えて、話終わったニーナの頭をかき抱き、よく頑張ったなニーナ…!偉いぞ!!と、褒めて頭を撫で回したのだが、ニーナは、な、何をするのじゃお前様ー!!!と言って俺を馬車から突き落とした。ニーナの顔はリンゴのように真っ赤だった。


 ……俺、褒めただけじゃね?幾ら何でも理不尽じゃね?と、そんな事を考えていると、あることに気づいた。馬車が、止まっているのだ。


 ーーその直後、


「屋敷が見えたぞ」



 というエリスの声が春空の下に響いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ