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女神より奪いし者 〜最強チートの異世界ライフ〜  作者: シンクレール
第2章 王都への旅路
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16話 旅の途中

第二章最終話です

 あんな事があった次の日。俺は何の問題もなく目を覚ました。正直、また落ちたりするんじゃ無いのかと思っていたのだが、杞憂だったらしい。


 結局、分かったのはラファエールが俺にして欲しいこと。パートナーが出来ること。俺が『現人神』とやらになること。俺の師匠の本名がアビスだと言うこと。(やっぱり偽名だったか)師匠の弟がこの世界を滅ぼそうとしていること。かぁ、あ、後は世界を滅ぼす方法も分かったな。いらんけど。


 それにしても…俺としてはどうしてこの世界に呼ばれたのが俺だったのか。とか、あの訳の分からない声の正体だとか、そういった事を知りたかったんだけどなぁ。まあ、そう上手くはいかないものか。


 ーーそう納得した俺は寝返りを打つ。なんせまだ眠いのだ。正直後3時間は寝ていたい。俺の目の前には大木があーー


「って、なんで一緒にニーナが寝てるんだよ!?しかも全裸じゃねーか!!」


 ……あ、声に出てしまった。最悪だ…誤魔化す時間が無くなった……こうなったら≪神魔の衣(ディオブロ・クライナ)≫にこいつを包んで逃げるか。うん。そうしよう。


「アハスさん〜朝からうるはいへすよ〜」


 …どうやらラフィスが起きてしまったようだ。ちなみに俺の名前はアハスでは無い。と言うかラフィスがメッチャ可愛い。どうしよう。抱き締めたい。ギュてしたい。もうラフィスが天使にしか見えない。


「ん〜なんじゃあ?騒々しいぞ小童。妾はまだ眠いのじゃ、静かにしておれ」


 ハハハ…お前は起きなくていいんだよ…って、おい!やめろ!寝袋から出てくるな!!お前は今全裸なんだよ!!


「わっ!な、なんで妾は裸なのじゃ!?おい小童!!まさかお主妾を襲ったのか!?」


襲ってねぇよ。


「だ、誰ですかその女の子!なんで裸!?アラスさん、もしかしてーー」


もしかして何だよ。


「ふぁ〜。朝から随分と騒がしいですねご主人様。少しは静かに…って、誰なんですかその子!!全裸じゃないですか!私というものがありながら…○りたいんなら私に言って下さいよ!」


勘違いしてとんでもない事言い出してんじゃねえ!!※この作品は18禁では無いので過剰な表現にはピーや、○がつきます。OK?


「あ、あれ?そこにおるのはもしかしてラファエールかの?妾は寝ぼけておるのか…?」


いや、寝ぼけてねぇよ。


 駄目だ…続々と起き出して来たぞ…とりあえずニーナに≪アイテム創造≫を使って…って、あれ?≪物質創造≫になってる。……まあ、どっちでもいいか。ニーナに布を被せた俺は、脇にニーナを挟んで逃げた。


 ーー戦略的撤退だ。このまま会話してもややこしくなるだけと判断した俺のナイスな行動。褒めたまえ。ん?更に状況をややこしくするだけだって?仕方ないだろ!勝手に体が動いたんだよ!!


 当然あいつらは追って来たが、俺に追いつける筈もない。俺は≪雷纏(ライテン)≫を使い完全に2人を撒いた。これ、レベル1の状態でも十分速いな。


 暫くすると、木がなく、土が見えている場所についた。抱えていたニーナを放り投げる。それにしてもこいつの胸…マジでデカイな。最高の触り心地だったぜ。


「痛っ!お主!いきなり妾を投げ捨てるとは、流石に酷どいとは思わんのか!?それにちゃっかり胸を揉みしだいておったし…なんじゃ?妾の胸にそんなに魅力的なのか?土下座するならまた触らせてやっても良いぞ?」


また触らせてやってもいい?いや、触りたい時に勝手に触るし。(犯罪です)ってか触ったら触ったでまた手を斬りとばされそうなんだよな…今回は成功したけど。


「いや、もう十分触ったし、また今度ね」


寧ろ触るためにこんなに時間をかけて逃げたと言ってもいい。


「な、なんじゃと!?もう今度なんて無いわ!2度と触らせん!!」


 ハハハ…何か言ってる。…にしてもこいつ本当に綺麗だな……黙っていれば単純な美しさにおいて、ラフィスより上かもしれない。それに今、こいつは布を纏っているだけにすぎないのだ。ちょっとだけ見惚れてしまう。


「ん?お主今妾に見惚れたな?布を纏ってるだけの妾を見て興奮しておる。行動とは違って随分とウブなやつよのう。ーーなんじゃ?妾は見惚れる程美しいのか?どれ、答えて見よ」


 ……ムカつく奴だな。あの格好がいけないのだ。早く服を着させなければいけない。俺が気の迷いとかでこいつに惚れたりしたら大変だ。一生尻に敷かれ続ける事になりそうだし。


「ほら、とっととこれを着ろ!!」


 俺はそう言って簡易的な服を投げつける。当然ニーナはそれを受け取っーー踏み付けて、一瞬で見るからに高そうな服を創った。


 いや、自分で創れるならそう言っとけよ!!

 それに人が親切心で創った物を踏みつけるな!!


「なんじゃ?妾が服を創れるのが以外じゃったのか?まあよい。親切にも服を用意した褒美じゃ。存分に見るがよい」


 そう言ったニーナは布を足元に捨てた。胸がたゆんたゆんしている。ヤバイ。鼻血が出る。いや、洒落にならない!


 やめろ!それ以上俺を誘惑するな!!


「ほれほれ、もっとジックリと見てもいいんじゃぞ?何じゃったら肌でも合わせてみるか?パートナーになったんじゃ。それくらいは問題ないじゃろう。ほれ。どうじゃ?妾の事がだんだん好きになって来たじゃろ?」


 そう言ってニーナは肢体をくねらせる。マジでヤバイ!襲いかかってしまう…ッ!


って、あれ?好きになってきたじゃろ?って、まさかこいつ…


「お、おい、まさかお前魅了の魔法を使ってるんじゃ無いだろうな?」


 魅了の魔法。言葉通りの効果を持つ、強力な魔法だ。惚れさせる。ただそれだけの為に創られた魔法。もしかしたらこいつはソレを使っているのかも知れない。


「ほう、妾が美し過ぎて本当に惚れかかっているようじゃな。魅了の魔法なんぞ使わんでも妾にかかれば男を惚れさせることなど容易いわ」


 くそッ!マジかよ!こいつくらい美しい奴は見慣れてるが、そいつらは皆色気なんか出していなかったしな…ここまでの破壊力があるとは…だが、今ここでこいつに惚れるのはマズイ。何がって、色々マズイんだよ!


「もういいから服を着ろ!!マジで今すぐ着てくれないなら襲っちまうぞ!!」


俺がそう言うと


「いやいや、それは妾も望むところじゃよ。もう随分と久しいしのう」


とか巫山戯た言葉で返答して来た。


 そんな事言って油断させ、襲いかかって来た所で手首を切る。お前がしようとしてる事なんて見え見えなんだよ!!実際、ラファエールを襲った時に切り飛ばされたしな!!


………いや、だが手首を代償にこいつとそう言うことが出来るのなら…待て待て、駄目だ。俺は好きな奴に始めてを捧げると決めている。こいつに捧げる訳にはいかんのだ!!


「俺はなぁニーナ!始めては好きな奴に捧げるって決めてるんだよ!!諦めてくれ!!」


俺は必死に懇願した。俺の顔は既に真っ赤に染まっているだろう。これ以上はおふざけで済まなくなる…!


「なんと、始めてと来たか。まあ、その年ならおかしくもないのう。じゃがその容姿で始めて…レアじゃな。燃えてきたわ」


 逆効果だったーっ!?最悪だ!!何か燃えてきたとか言い始めたし!!


ーーよし、逃げるか。何か逃げてばっかりだな。今日。


 俺は逃げ出そうとしてーー背中を抱き締められた。おい、素っ裸で抱き付いて来るってどういう神経してるんだよ。あ、柔らかい。胸が当たって…まずい、理性が………いや、まだだ、俺はまだやれる!!


そう叫んだ俺は自分の舌を噛みちぎった。途端熱せられて暑くなった鉄を当てられたような痛みが脳を襲う。痛い。冗談みたいに痛い。だが、即座に≪完成された吸血鬼(スクレ・ヴァンピール)≫の<緊急発動>で舌は戻った。


俺は精神的な混乱状態に陥ったら自らの身体を傷つけて正常な状態に戻りなさいと師匠に言われているのだ。珍しく師匠の教えが役にたったな。うん。


 それにしても危ない所だった…だが、完全に雑念は振り払ったぞ。正直、ここまではする必要は無かったように思えるが、まあ別にいいだろう。


 ーー後ろを振り向くとニーナが悔しそうな顔をしていた。


「お主…そこまで妾と致したく無いのか…?流石にここまで拒絶されるのは始めてで妾もかなり傷ついたんじゃが…」


本当に傷ついたらしい。ざまあみろ。まあ、そりゃあこいつに襲われて拒絶したやつなんていなかっただろうしな。だが、俺はそいつらとは違う。なんせこいつくらい綺麗な奴を見慣れてたからな。初見だったら間違いなく襲っていた。


「ああ、絶対に嫌だね。というかサッサと服を着ろよ!!」


 俺はそう言いながら蹴りを放つ。さっきから馬鹿にしやかって!俺の理性の壁は今も尚崩壊寸前だよ!!ん?女性に対する暴力反対?そんなの知るか。俺は男女差別はしない。それにどうせこいつはよけるだろう。


 先程こいつがあの高そうな服を創った時に気づいたのだが、こいつは本当に強いらしい。あんなに早くあれ程細かい造りの服を創り出すのは普通無理だからな。


 俺の蹴りは当然空を裂きーーって、おい、避けろよ!!あっ!


 なんと言う事だろうか。本当に当たってしまった。驚きだ。まあ、さっきまでのお返しだ。ドンマイと言わせて貰おう。


「い、痛っ!な、なんじゃお主!?そういうプレイがしたいのか?じゃ、じゃが妾もそっち系ではなくてのう…流石に無理があると言うか…いや、でも確かにちょっとだけ気持ちよかったような気がせんでも無いがのう…」


 あ、ヤバイ。これはマジでヤバイ。今の俺の精神状態でドSの俺が女の子の「痛っ!」なんていう可愛いらしい声を聞いてしまったら………完全に理性の壁が崩壊してしまうじゃないか。


 俺は≪雷纏≫を使ってニーナに飛びかかり、倒れているニーナを瞬く間に四つん這いにさせ、尻を叩き始めた。ニーナが、い、いきなり何をするのじゃ!とか騒いでいたが、俺は気にしなかった。暴れ出したニーナに対して俺は


<世界よ。俺はニーナが何かしらの力を持つことを許さない>


 という≪理を断つ者≫の力まで行使してしてしまった。俺はペシペシとニーナの尻を叩く。ニーナは必死に暴れるが既に唯の女の子と化したニーナには俺から逃れる術はない。


 所謂、○くという状態になるまでの時間は10分程度だった。そこにいたのは新しい扉を開いたニーナと、くだらないこと(?)に≪理を断つ者≫を行使した上に、力づくで女の子にお尻ペンペンをしたことに猛烈な罪悪感を覚え、涙を流す俺の姿だった。



俺…一体なにやってるんだよ……


ーーどうやら、自分で思っているより理性の壁が脆いらしい。ぐったりとしているニーナを見て、一雫の涙が地面に消えた。




▲▽▲




「おい、もう十分だろ?これで終わりだ」


俺は懇願するようにそう言った。


「いやじゃ!妾はこんな中途半端な所で終わりとうない!!きちんと最後まで致せ!!」


まだそんな事を言っているのか…


「だから始めては好きな人に捧げるって言ってるだろうが!諦めろ!!」


俺たちは今、最後まで○るかどうかを話し合って…叫び合っていた。俺は断固拒否しているのだが、ニーナも700年ぶりに○ってこれはあんまりじゃと喚いている。700年ぶりって…こいつまさか本当に3000歳なのか?


「好きな人に…?そうじゃ、何故妾はこんな簡単な事に気づかなかったのかのう?お主を妾に惚れさせればそれで万事解決ではないか」


惚れさせる?俺はそんなに軽く堕ちる男じゃねーよ!


「はっ!やれるもんならやってみろ!!」


俺はそう叫んだ。


「ふっ!粋がるでないわっ!お主の理性の壁は先程早急に建て直したハリボテにすぎん!今のお主を籠絡するのがどれだけ簡単な事か!お主自身がよう分かっておるじゃろう?」


……うっ。そこを突かれると弱いな…確かにニーナの言う通りだ。だが……それでも俺は抗って見せる!!


「黙れ!尻を叩かれて大喜びし出した挙句に○った奴なんぞに惚れてたまるか!!」


いや、別にそういう奴が嫌いだと言う訳では無いが、こいつは嫌だ。何故かって?俺も知らん。


「なっ!た、確かに喜んではおったが…お主だって妾の小さくて可愛いお尻を叩いて大喜びしておったじゃろうが!!」


少し騒ぐだけでニーナの胸は揺れる揺れる。これをわざとやっているならこいつは間違いなく悪女だ。ちなみに俺の頬は赤い。


「お、大喜びはしてない筈だ…多分…」


本当は喜んでました。だって俺ドSなんだもん。ーー俺の少しだけ慌てた顔を見てすぐに嘘だと気づいたのだろう。


「それ見たことか!今から妾に惚れさせていつでも何処でも妾の言う事を聞くペットに変えてやるわっ!」


ニーナはそう宣言してきた。


なっ!ちょっ!肢体を絡み付けてくるな!おい!どこ触ってるんだ!?まてっ!そこはもっと優しく扱え!って、やめろ!キスはよくても舌を入れるのは駄目だ!大人のキスは好きな子に捧げるんだ!!


「ほうじゃ?きほひいじゃろ?」


俺にキスをしながら胸を押し付け、上目遣いで俺にそう言って来るニーナ。ハハハ…これはもう無理じゃね?俺、滅茶苦茶頑張ったくね?ほら、俺の息子も、父さん!僕、もう限界だよ!!と、言わんばかりに暴れ回っている。


大丈夫だ我が息子よ。もう、一緒に楽になろう……と、そんな事を考えているとリリーの顔が目に浮かんだ。あれ?走馬灯…?いや、これはーー


「やめっ!やめろって言ってんだろうが!!」


俺はニーナを突き飛ばした。俺は何故かリリーの激怒した時の顔をあの一瞬思い出したのだ。アレは怖い。ああ、また意識が朦朧として…


「痛っ!あ!また引っ叩くつもりか?待て!これ以上はマズイ!!完全に戻る余地が無くなってしまう!あっ!」



ーー俺はそんな声を確かに聞いた。




〜更に10分後〜




「なぁお前様〜もっと、もっと強く叩いてくれ〜!」


ニーナの蕩けるような甘い声。ドキドキしてしまう。俺は結局またニーナを襲ってしまったらしい。だが、俺の貞操はまだ奪われていない。俺は、ちゃんと守り切ったぞ…!今、俺は大きな達成感に包まれていた。


それにしても…


「お前様って何なんだよ…」


完全完璧に新たな扉を開ききったニーナは先程から俺に対して様づけして呼ぶようになった。逆に俺がこいつをペットにしてやった訳だ。勝利の鍵はS○プレイってね。ーー何か…嫌だな……


「ほれ、妾の事を早くぶってくれ〜。何なら先程の蹴りより強くしてくれても構わんぞ〜!」


そんな懇願をされても困る。先程の蹴りより強くって…アレ、結構マジで蹴ったんだけど?アレ以上とか普通の人間にやったら肉塊になるぞ…


って、あれ?≪万能の指輪(ワンノン・ジファン)≫の<完全索敵>で見張ってた馬車が動き始めた。これはーー間違いない!俺の捜索とかも一切やらずに俺を置いてけぼりにするつもりだ!!酷い!あいつらの俺に対する扱いが酷すぎる!!


「おい!馬車が動き始めた!追いかけるぞ!!」


切羽詰まった俺はそうニーナに叫びかける。ニーナは当然俺の言うことに従ってーー


「嫌じゃ!お前様が後百回妾のお尻を叩くまでは動かん!!」


くれなかった。ーーいや、そんな事言ってる場合じゃねえんだよ!ってか百回って多過ぎだろっ!ーーイラついた俺はニーナの真っ赤になった尻を思いっきり蹴り飛ばした。


嬌声をあげるニーナ。暫くビクビクしていたが、すぐに動かなくなった。ーーあれ?死んだ?いや、幸せそうなこの顔…気絶しただけか。


「おい!起きて服を着ろニーナ!今ので十分だろ!!」


気絶したばかりで流石に返事は無いかもしれないと予想しての呼びかけだったが、


「あ、後もう一回だけ…」


と、ちゃんとした返事が返って来た。人間離れした回復速度だと感心したいのだが……あと一回って…アレ、普通の人間だったら肉塊どころかミンチになるレベルだったんだぞ…


ーーここで中途半端な威力の蹴りを出してまたもう一回とか言われても面倒だからなぁ、本気で行くか。とは言っても、レベル3で全力の蹴りを放つだけだ。流石に≪完成された吸血鬼≫を使った上での≪雷纏≫を利用した超キックはやめておく。流石にこいつでも死ぬかもしれんし。


「これで最後だぞ?いいな?絶対に最後だからな?」


俺はしっかりと確認をとる。これはとても重要だ。


「…分かった。今日の所はそれで勘弁してやる!さあ、早く蹴ってくれ!!」


うん。ちゃんとした返事があった。これ以上時間を浪費すれば索敵範囲から馬車が出て行ってしまう。それはマズイ。


俺はオラァ!という掛け声とともにニーナを蹴り飛ばした。ーーニーナは、完全に気絶した。いい笑顔で逝ってやがる…(死んでません)



裸のニーナに服を着せた俺は、(寝ている全裸の美少女…俺が、ただ着せただけだと思うか?勿論、あんな事やこんな事をしたとも。女の子の身体は何処も彼処も柔らかいな!!)ニーナを背負ったまま、馬車の方向へ走り出した。



ーー馬車は、既に遠い……




▲▽▲




俺の姿を見つけた瞬間、馬車はあからさまに速度を上げた。馬を鞭が叩く音がここまで聞こえてくる。俺の足元には中々な大きさの石がゴロゴロしており、ニーナを背負ったまま走っている俺からはかなりの体力が失われていた。


ーーいや、精神的な疲れが半端ないせいで、間接的に体力が失われている訳だけど。


「おい!止まれ!!お前達は何か勘違いしている!!」


 俺はこれでもかと言うくらい大きな声を出した。それに対して相手がたの反応は…?


 ーーエリスがちょっとだけ顔を見せて一瞥をくれただけだった。


 酷い!酷すぎるよ!俺はもうお役御免か!?ああ、そうだろうね!何てったって魔貴族が護衛についてるもんね!!俺なんかいらないよな〜…ああ、ちょっと目尻が熱くなって来たぞ……


「おいニーナ。お前一度も俺に竜族としての姿を見せて無いよな?出来ればお前が竜族だと言う証拠を見せて欲しい。でもって、俺を馬車まで送り届けろ」


こうなったら最後の手段を使ってやる。心臓に悪いからと思ってやめておこうかと思ったが、そっちがその気ならこっちにも考えがある。


「褒美をくれないなら妾はお前様の言う事を聞かんぞ」


褒美…?ああ、尻叩きのことか。


「好きなだけ尻を叩いてやる。それでどうだ?」


恐らくこの回答で正解な筈だ。


「好きなだけ…うむ。よかろう。妾の本当の姿を見せてやろう!!」


 生唾を飲み込む音を発したニーナはすぐさま黒く発光し始めた。うん。流石俺。正解だったな。酷い正解もあったものだとは思うが。ーー深淵の色…とは、この色の事なのかもしれない。底知れ無い禍々しさを放つ光に包まれながら、ニーナは姿を変えた。


「ーー神々しいな……」


 思わずそう呟いてしまう。なんと言うか、生物としての格の違いを思い知らされた。こいつがさっきまでケツを叩かれてハァハァ言ってたニーナなのか…信じられない。というか信じたくない。


 全長は30ユルと言った所だろう。俺が倒したドラゴンとは完全に別物だ。先ほどの≪理を断つ者≫も人型だったから通用したのだろう。今のこいつには絶対に効かない。何と無くそう確信した。


「どうだ?妾の姿は。美しいであろう?さあ、とっとと乗れ」


ニーナが格好つけてそう言った。だが…


「うん。でもさ、ニーナ。お前、その状態になったら声が滅茶苦茶低くなるのな。アレだわお前、竜になったら喋んの禁止な?」


俺は諭すようにそう言った。


「……………。」


 不満げな表情をしているが、ニーナはちゃんと黙った。ご褒美が貰えなくなったら大変だと考えたのだろう。にしてもこの姿でちょっと女の子っぽい声とか、普通にキショい。


 ニーナに乗った俺はすぐさま馬車に追いついた。当然だろう。こいつが一度羽ばたくだけで木々は薙ぎ倒され、地面が割れたのだから。


 馬車に乗ってる奴らは後ろを見て呆然としている。


「降ろせ」


 『きちんと返事をせずに』ニーナは馬車の前に降り立った。偉いなニーナ。後で満足するまでぶってやろう。何だかルートを間違った気がするが、気にしない気にしない。


 馬達は混乱して暴れ回っている。誤ってこけて骨折とかしなければいいが…まあ、骨折したらした所で、治せばいいのだが。


 ニーナが人間の姿に戻る。まあ、正確にはさっきの竜になった時の方が元の姿なのだろうが、細かい事は気にしない。それにしても……俺はニーナに勝てるだろうか…?こいつ予想より遥かに強そうだしな……


「ア、アラスさん!その子は一体何なんですか!?」


 馬車に乗ってた奴らは口々に疑問を吐き出している。こいつが何なのか…確かに気になる所だろうな。


「こいつは、新しく仲間になったニーナ・レ・アルヘルだ。今から旅の仲間になる。ほら、挨拶しろニーナ」


挨拶は大事な事だからな。


「ああ、妾はこいつとパートナーになった。以後、よろしく頼む」


ニーナはやや高圧的だがちゃんと挨拶をした。掴みはバッチリだな。俺は右手でニーナの頭を撫でる。最初は嫌そうな顔をしていたニーナだったが、徐々に気持ち良さげな表情に変わって行ったた。



 呆然としている彼女らを置き去りにして、物語は進んで行く。




 俺たちの旅は、まだ始まったばかりだ!!!(終わりません)





(ニーナが俺の寝袋に入っていたのはラファエールのせいなんだそうです。ニーナが言ってました。何でも、あやつのしそうな事。なんだとか)




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